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特集 病院の評価─課題とこれから
病院の評価─課題と展望
著者: 長谷川友紀1
所属機関: 1東邦大学医学部社会医学講座
ページ範囲:P.29 - P.34
文献購入ページに移動近年,医療における質と安全について世界的に関心が高まっている.2001年に米国Institute of Medicine (IOM)はレポート“Crossing the Quality Chasm”を公表し1),①米国民が受けることのできる医療サービスと実際に受けている医療サービスの内容に差異があり,これはchasm(断層)と表現されるほど深刻であること,②単一の医療機関で医療が完結する傾向のある急性疾患に対して,慢性疾患の治療では複数の医療機関の関与が必要であり,今後,疾病構造が慢性疾患中心となるにつれこのchasmは拡大することが危惧されること,③これを解消するためにはinformation communication technology(ICT)の導入と,医療提供体制の大幅な改編を必要とすることを指摘した.IOMのレポートは,各国の医療界に大きな衝撃を与え,1990年代後半以降の医療費抑制を主眼とした医療制度改革において,新たに質と安全を中核概念とする原動力となった.
医療サービスの質については,その構成要素と評価方法についていくつかの提唱がなされてきた.Codmanは主として外科手術の結果に着目して,1910年代にEnd Result System(現在の結果に相当する)の概念を提唱した.Donabedianは,医療の質は構造(structure),過程(process),結果(outcome)の3つの視点から評価されるべきであると1960年代に提唱し,この考え方は現在も広く用いられている2).
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