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雑誌目次

雑誌文献

病院72巻6号

2013年06月発行

雑誌目次

特集 女性医師のキャリアデザインと病院

巻頭言

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.425 - P.425

 厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると,2010年末におけるわが国の医師数は29万5049人,そのうち女性医師は5万5897人で,全体の18.9%に及ぶ.近年の医科大学入学者に占める女性の割合は約3分の1となっており,今後も女性医師の割合は高まる見込みである.

 女性医師が増えること自体は,患者の視点からもメリットが多く,男女共同参画の観点からも当然のことと言える.しかし,女性医師の場合,妊娠の一時期・出産時には臨床の現場から離れなければならず,その後も仕事と育児の両立という現実に直面することになる.わが国の医師の慢性的な長時間労働や不規則な勤務形態の現状から,離職や長期休業,非常勤などの不安定な勤務形態への変更を選択せざるを得ない女性医師が多いのが現状である.

女性医師の果たす役割とこれから

著者: 津田喬子

ページ範囲:P.426 - P.429

 近年,女性医師数は増加し,2010年12月31日現在の全国届出全医師数29万5049人のうち,女性は5万5897人(総数の18.9%)である.30年前は10人に1人であったが,5人に1人となり,特に20代では3人に1人を占める.さらに最近13年間の医師国家試験合格者の女性比率が30%を超えていることを考慮すれば,今後も増加が続き,医療における女性医師の果たす役割は一層大きくなっている.しかし,実際はそうとは言えない.というのも,女性医師の研修あるいは職場の環境はそれに対応していないからである.

 本稿では,女性医師の現状と取り巻く諸問題を整理し,これからの女性医師が自らのキャリアを持続しつつ,医学・医療に貢献するために必要な課題について考察する.

女性医師の現状―日本医師会「女性医師の勤務環境の現況調査」より

著者: 小笠原真澄

ページ範囲:P.430 - P.434

 2000年に国家試験合格者に占める女性医師の割合は3割を超え,医師総数に占める女性医師の割合も間もなく2割に達しようとしている.女性医師が出産・育児の時期においても仕事を中断することなく勤務を継続していくための環境整備については,これまでにも様々な方面から指摘されており,その根拠となるアンケート調査は,各学会,都道府県医師会などで実施されてきた.

 日本医師会では,実効性のある就業支援策を提言するために,現状に即した女性医師の勤務環境に関する全国規模でのアンケート調査の必要性が検討され,男女共同参画委員会および女性医師支援センターによる「女性医師の勤務環境の現況調査」を実施した.これは,病院勤務の女性医師すべてを対象として全国の病院に調査票を郵送し,約7500人から回答を得た大規模調査となった.この結果は,2009年3月に報告書としてまとめられている1)が,この内容を紹介する.

海外における女性医師の現状

著者: 米本倉基

ページ範囲:P.435 - P.440

■世界の女性医師数

 2010年現在,OECD加盟34か国中,メキシコを除く33か国における自国内の全医師数に占める女性医師の割合は平均41%となっており,その割合が最も高い国は東欧エストニアの74.3%で,続いてスロベニア,ポーランド,スロバキアと続き,3か国とも50%を超える.北欧諸国もその割合を高くしており,フィンランド約55%,スウェーデン約45%,デンマーク約45%となっている(図1)1).その一方で,OECD加盟国中,女性医師の割合が最も低いのが日本の約19%である.女性医師の割合が著しく低いというこのデータを根拠に,また,先進国の中でも日本は人口当たりの勤務医数(男性含む)が低いというデータと併せて示すことで,女性医師のキャリア支援の必要性がクローズアップされている.しかし,「女性医師の増加に伴うキャリア支援策の問題」と「医師不足の問題」は,政策的には論考の前段において,いったん別々に議論を進めたほうが理解しやすい.

 33か国で働くすべての女性医師120万人に占める割合で見ると,アメリカが全体の20%(約24万人),イタリア(約14万人)とドイツ(約13万人)が各11%,それにスペイン(約9万人),フランス(約8.5万人),イギリス(約7万人)が続き,日本は約5万人で第7位にランクインし,これらを含む上位10か国で全体の75%(約93万人)を占める.逆に,自国内に占める女性医師の割合が高い東欧・北欧諸国は,そもそも自国の医師数が少ないため女性医師数では下位に位置づけられ,自国内の7割が女性医師である割合トップのエストニアに至っては,男女合わせてわずか約6000人の医師しかおらず,うち女性医師は33か国の全女性医師の1%にも満たない(図2)1)

女性医師のキャリアデザイン

著者: 野村恭子

ページ範囲:P.441 - P.445

 直近の「医師・歯科医師・薬剤師調査」(平成22年12月31日)によれば,わが国の医師数は29万5049人で1),総務省による2012年7月の人口推計1億2756万1000人で算出すると,人口1000人当たり2.3人であり,OECD諸国における平均医師数(2011年3.1人)に達していない.

 医師不足が顕性化したきっかけに,2004年の新医師臨床研修制度・マッチングシステム導入がある.これにより大学研修医が不足し,大学から地域への医師派遣が困難となり,地方での医師不足が顕在し,産婦人科,小児科等の診療科偏在が深刻化,医療崩壊が社会問題となった.こうした医師不足時代において,女性医師の医師労働力への積極的な動員は医療界の共通認識となった2).ところが,私立医科大学同窓会のネットワークを活かして行った14校の合同調査3)によれば,女性医師は男性医師に比べ,「フルタイムよりもパートタイムワーカーとして働く割合が高い」「週の労働時間が短い」「専門医や医学博士の取得率が低い」等,性別により医師の働き方あるいはキャリアに違いがあることが明らかとなっている.

【座談会】女性医師が働きやすい病院とは

著者: 惠谷ゆり ,   藤巻高光 ,   三石知左子 ,   依光たみ枝 ,   伊関友伸

ページ範囲:P.446 - P.451

伊関 厚生労働省(以下,厚労省)のデータによると,2010年末で医師数約29万5000人のうち,女性は約5万5000人,つまり20%弱です.しかし,既に大学医学部では学生の3分の1くらいが女子学生で,大学によっては半分近くを占めるところもあり,今後も女性医師の増加が予測されます.

 女性医師の増加自体は歓迎すべきことだと思いますが,妊娠・出産の時には,必ず臨床現場から離れなければなりませんし,その後も育児と仕事をいかに両立するかという現実に直面します.したがって,現在の医師不足と女性医師の増加傾向をふまえると,今後は女性医師のキャリアデザインに配慮した病院でなければ必要な医師数を充足できない,ひいては存続できない時代になってくることが考えられます.そこで,本日は女性医師のキャリアデザインと病院について,ご議論いただきたいと思います.

産科・婦人科における女性医師のキャリアデザイン

著者: 木戸道子

ページ範囲:P.452 - P.454

 産婦人科では対象が女性患者,妊産婦であるという診療科の特性により,女性医師へのニーズが高い.このため,特に近年女性医師の割合が増加している.日本産科婦人科学会における会員のうち女性の占める割合は全体で約30%程度であるが,30歳未満では約70%,30歳以上40歳未満では約58%となっている.今後,産婦人科医療が安定的に継続,発展していくためには,構成員の多くを占めつつある若手女性医師が診療のみならず研究・後進の指導に参画し,キャリアを築いていけるようにサポートすることが欠かせない.

 すでに日本産科婦人科学会ならびに日本産婦人科医会では以前よりさまざまな取り組みを行っている.本稿ではその概要を紹介したい.

外科における女性医師のキャリアデザイン

著者: 前田耕太郎

ページ範囲:P.455 - P.458

 近年の医科大学における学生の約3分の1は女性が占めており,女性医師の医療に貢献する割合はさらに増加しつつある.このような状況の中で,従来男性医師の多かった外科領域でも,女性医師の活躍はますます期待されるところである.本稿では,日本外科学会としての女性外科医支援に関するこれまでの取り組みと,キャリアデザインについての問題,将来展望を概説する.

女性の初期研修医・医学生から見た「勤務したい病院」

著者: 瀬尾恵美子

ページ範囲:P.459 - P.461

 近年の医学部入学者に占める女性の割合は約3分の1であり,筑波大学附属病院の初期臨床研修医も女性の占める割合は35%である.今後もその割合は高まることが予想されており,これからの病院には女性医師が働き続けられる勤務環境の改善が望まれている.では,女子医学生や初期研修医は,自身のキャリア,勤務環境についてどのように考えているのであろうか.アンケート調査を行い,彼女たちの考えている勤務したい病院像について検討した.

女性医師支援を通じて地域の医療に貢献する―MUSCATプロジェクトの活動と今後

著者: 片岡仁美

ページ範囲:P.462 - P.464

 医師不足と地域・診療科による医師の偏在が社会的にも大きな問題となっている昨今,医師不足によってますます過酷になる労働条件の中で,急速に増加している女性医師の就労状況が注目されてきた.女性医師の能力を生かすという目的のみならず,医師不足への即効性のある方策としても,女性医師の就労支援は重要視されている.

 女性医師は近年急速に増加し,現在29歳以下の女性医師は全医師の35.9%を占める1).わが国の女性の年齢階級別労働力人口比率の推移をグラフ化すると,女性は30代で就労人口が低下し,M字カーブを描くことが知られていが,医師においても,一般人口と比べれば離職率は低いものの,卒後5~15年の10年間に女性労働人口が減少することが報告されており,東京医科大学・川崎医科大学で施行されたアンケートでは(同大学卒業生1423人を対象,711名の回答),「常勤医をやめたことがある」55%であった.離職時の年齢は「25~29歳」44%,「30~34歳」42%(計86%)と報告された2)

男性医師の育児休業

著者: 大城征

ページ範囲:P.465 - P.468

 「育児のためお休みをください」


 もし,今一緒に働いている男性医師がそう言ってきたらみなさんはどう「感じる」だろうか? やっと医師という仕事に慣れてきた2年目の研修医が,認定医取得したての5年目の先生が,病棟や外来でリーダー的存在の10年目の先生が….

グラフ

安心の医療は職員のゆとりから 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院

ページ範囲:P.409 - P.412

 北野病院は京都大学医学部の関連病院として大阪梅田の地に1928年に設立され,病院そのものが医学研究所として認知されている全国でも珍しい病院である.2011年より公益財団法人となり,救急をはじめ,大阪市の地域医療を支えている.当院は2006年にNPO法人イージェイネットによる「働きやすい病院評価ホスピレート(HOSPIRATE)」の認証を受けており(昨年更新),職員のワークライフバランスに積極的に取り組んでいる病院としても知られている.今回,当院がどのように働きやすい環境を整備してきたのかを紹介する.

連載 アーキテクチャー 第221回

南浜中央病院の復興計画

著者: 鈴木慶治

ページ範囲:P.416 - P.422

 2011年3月12日,出張先の九州から朝一番の飛行機で,まだ電車の運行がままならない東京に戻った.やっとの思いでたどり着いた自宅は意外にも地震による被害がほとんどないことを確認し,ほっと一息をつき,テレビにスイッチを入れた.その瞬間,目に飛び込んできた映像は,海の中に孤立した,見覚えのある建物の屋上でSOSのサインを送る人々の姿であった.

 それが,自らが2001年に設計した南浜中央病院であることは,すぐに理解できた.昨日仕事先で呆然と見ていた津波に襲われる三陸地方の映像が,突然現実のものとして迫ってきた.それまで宮城沖で度々マグニチュード(M)7以上の大地震が起こり,三陸では津波被害も報告されていたが,ハザードマップでも5mの津波にも耐えられると記されていたため,十分な高さの防波堤を備えている海岸線が水につかることは考えていなかった.しかしM9の地震は人知をはるかに超え,防波堤を,そして防風林をなぎ倒し,南浜中央病院をのみこんでいった.

世界病院史探訪・3

古代ギリシアの医神アスクレピオスの神殿

著者: 石田純郎

ページ範囲:P.423 - P.424

 アスクレピオスの神殿(Asclepion)は,欧米の医史学書では,病院のルーツとされている.紀元前4世紀から紀元後4世紀までの古代ギリシア文化圏に,600か所ほど造られ,古代ローマ文化圏にも受容されていた.

 ギリシア神話の医神は,アポロン,その息子のアスクレピオス,孫娘である健康の女神ヒギエイアである.アポロンの専門は多様であるが,アスクレピオスは医の専業の神である.病人あるいはその代理人は,入浴して身を浄め,神殿でアスクレピオス像に病気の平癒を祈り,お籠り堂(病室)で眠りに就く.夢の中にアスクレピオスが現れ,治療してくれる,あるいは治療のヒントをくれる.ヒントは覚醒後,神官(アスクレピオスの神殿で,看護師の役割)に告げ,治療を神官から受ける.1晩から数か月間,神殿に滞在して,病人は平癒して,退院する.

診療情報管理の最前線・8

診療情報管理士の卒前教育

著者: 武田隆久

ページ範囲:P.480 - P.483

■診療情報管理士の教育の歴史

 わが国において診療情報管理士の基盤となる教育が始まったのは,1964年,当時の厚生省病院管理研究所(現在,国立保健医療科学院)において「病歴管理事務研修科」というコースが設置されたことによる.当時は,名称も「病歴士」,「病歴管理士」などと呼ばれていた.

 その後,その「病院管理事務研修科」を卒業した実務者と日本病院会により,1972年,2年制の通信教育として「診療録管理通信教育」(現在の「診療情報管理士通信教育」)が日本病院会に誕生する.

アンケートが現場を変える 短期集中型業務改善・3

改善を望む声

著者: 阪本研一

ページ範囲:P.484 - P.485

 前回まで,当院が全職員アンケートを用いた短期集中型業務改善を実施するに至った背景と,「医療安全対策の観点から抜本的な業務改善を行うこと」を中心目的に掲げつつも,複数の到達目標を設定したことを述べた.今回は,どのようなアンケートを実施したのか,そしてその結果について紹介する.

決算書類を読みこなす・6【最終回】

病院経営と税金

著者: 牧健太郎

ページ範囲:P.486 - P.490

■法人の税務

1.消費税

 消費税は,国公立・公的病院,民間病院,大学病院など,全ての病院に関係する税金です.正確に説明すると,消費税は国税の4%部分,残りの1%部分は地方消費税と呼ばれますが,ここでは消費税および地方消費税をまとめて「消費税」と称します.

 消費税は現在5%ですが,平成26年4月に8%,平成27年10月に10%に引き上げられる予定です.このことで病院はどのような影響を受けるでしょうか.

鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・69

家族が側を離れた時

著者: 鉄郎

ページ範囲:P.492 - P.493

 あるがん患者さん.彼は病院での治療を終えて退院したが,その後もがんは進行し,町のクリニックが自宅での緩和ケアを担当することになった.患者さんは医者嫌いだったのだが,そのクリニックの医者は根っからの明るい人で,静かにしんみりと話すのではなく,診察の時は常にワッハッハと笑いが飛び交う.患者さんも彼のことが気に入ったようで,以前よりもよく笑うようになり,訪問日を楽しみにするようになった.

 ある訪問日のこと.いつもは看護師や理学療法士など誰かが一緒なのだが,その日は医者1人だった.いつもの通りに様子を聞き,処置をして,世間話をした.ところが,家族が部屋を離れた時,あたりを見回した患者さんが,近くに来いと医者を呼んだ.医者が何事かと側に行くと,患者さんは声のトーンを落として,こうつぶやいた.

リレーエッセイ 医療の現場から

現場の力になる広報を目指して

著者: 鍋嶌紋子

ページ範囲:P.495 - P.495

 私は,外資のスポーツメーカーで商品開発やマーケティングを経験した後に転職し,石心会に勤務するまで大手といわれる広告代理店におりました.そこでは戦略的に情報を発信する,いわゆる【戦略PR】の企画立案から実施制作のすべてを取り仕切るプロデューサーを担っていました.

 時期的に戦略的な広報がブームだったこともあり,各業界からの依頼数は多く,お得意先は,製造業,電力会社や通信などのインフラ産業,官公庁関係,流通,住宅,金融など,多岐にわたりました.そして,社長をはじめ,広報・広告・商品開発・マーケティング・店頭開発・販促・WEBシステムなどの各担当者や著名タレント・有識者,時には県知事・市長……など,本当に様々な人とお仕事をさせていただきました.広告代理店での8年間は,自分にとって非常に良い経験になったと思います.

研究と報告【投稿】

インシデントに起因する追加的医療費算出の試み

著者: 江上廣一 ,   廣瀬昌博 ,   津田佳彦 ,   大濱京子 ,   本田順一 ,   島弘志 ,   今中雄一

ページ範囲:P.469 - P.473

要旨 傷害レベル2以上のインシデントにより,検査や治療が実施され,あらたな費用(追加的医療費)が発生する.本院で2009年度のインシデントレポートから,転倒を除く一般事例のうち,レベル2以上の626例について追加的医療費を算出した.

 1件当たりの追加的医療費は,レベル2~3a:10,676±23,999円(216件)およびレベル3b~5:174,839±212,971円(22件)で,後者が有意に高額であった(p<0.001).また,追加的医療費の確認できた全事例242件のうち,最も実施された診療行為は“処置・手術”であり,最も医療費が投入された診療行為は“注射”であった.それらの実施件数および1件当たりの追加的医療費は,前者が137件(56.6%)および1,993円,後者が80件(33.1%)および25,235円であった.

 インシデントによる追加的医療費を正確に把握し,より適切な病院経営と医療安全活動を行うことができる.とくに高額の費用が必要なレベル3b以上への対策が重要である.

特別記事

災害に強い病院とは

著者: 小林直樹

ページ範囲:P.474 - P.478

 平成23年厚生労働省データによると,現在,国内には診療所を含め1万9290の医療施設が存在する.このうち災害拠点病院は2011年1月時点で609施設であり,全体の3.16%が指定を受けている.また,2009年の内閣府調査ではBCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)が策定されている医療施設は4.8%,BCPを知らない割合は73.4%という結果になっている.「災害拠点病院」や「病院BCP」は1995年の阪神淡路大震災以降に重要性が指摘されるようになってきた比較的新しい考え方のため,既存病院の多くは十分な対策が取られていないというのが実情である.

 災害拠点病院は災害時の医療の拠点となるため建物の耐震化や備蓄,設備の信頼性も高いものが求められている.例えば,東日本大震災の発生後開催された厚生労働省の審議会『災害医療等のあり方に関する検討会』において災害拠点病院の要件について審議されており,そこでは非常用発電機の用量は通常時の60%程度,運転するための燃料備蓄量は3日分程度確保しておくことが必要であるとされている.では,災害拠点病院の指定を受けていない残りの97%余りの医療施設では,災害対策として何をどこまで備えておけばよいのだろうか.特に中小規模の医療施設では行政からの援助も十分ではなく,ほとんど自助努力で対応せざるをえない状況にある.

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書籍紹介

ページ範囲:P.445 - P.445

書評 自らの体験を通して症状や問題点を時系列で解説―関 啓子(著)『「話せない」と言えるまで─言語聴覚士を襲った高次脳機能障害』

著者: 前島伸一郎

ページ範囲:P.491 - P.491

 本書の著者である関啓子氏はわが国を代表する高次脳機能研究の第一人者であり,言語聴覚療法のエキスパートでもある.これまで30年近く,この領域のトップランナーとして臨床・研究・教育活動に従事してこられた.

 その関氏が,自らが被った脳梗塞による症候を分析して解説を加えるとともに,発症から社会復帰に至るまでのリハビリテーションの始終を記録した本書を刊行された.本書の最大の特徴は,脳卒中を罹患した患者が勉強して書いたものではなく,脳損傷による高次脳機能障害の専門家が,自らの症候を主観的に捉えて分析し書かれたところにあり,たぐいまれなるわが国で唯一の書物といえる.

次号予告/告知板

ページ範囲:P.496 - P.496

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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