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文献詳細

雑誌文献

病院72巻7号

2013年07月発行

文献概要

特集 病院の経営統合

経済学におけるM&A

著者: 宮島英昭1

所属機関: 1早稲田大学商学学術院

ページ範囲:P.514 - P.519

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■M&Aと日本経済

 M&A(Merger and Acquisition:合併・買収)が日本経済において存在感を高めたのは,図の通り1999年からである.それ以前のバブル期(1986~1990年)にも小さなブームがあったが,この時期の国内企業間のM&A(IN-IN)は限定されており,中心はもっぱら海外企業を対象とするM&A(IN-OUT)であった.三菱地所によるロックフェラービルの買収や,松下電器(現,パナソニック)による大手エンターテイメントMCIの買収が著名である.

 その後,M&Aはいったん停滞した後,1999年からIN-IN,IN-OUT,さらに,海外企業による国内企業の買収OUT-INが並行して増加した.M&A件数の増加は2003年頃までは比較的緩慢であったが,株価が上昇した2004年から急増し,戦後初のはっきりとしたM&Aのブームを迎えた.レコフ社の集計によれば,ピークの2006年は2,775件,金額は約15兆円でGDPの約3%に達した.

参考文献

1)宮島(2007)の序章による.詳しくは,同書を参照されたい.宮島英昭(編):日本のM&A:企業統治・組織効率・企業価値へのインパクト,東洋経済新報社,2007
2)企業A,Bが単独に営業を営み,Aが利益,Bが欠損を生じる場合,M&Aにより損益通算が可能となれば,Aの利益は,Bの欠損と相殺され,節税効果が発生する.
3)Jensen MC:The Modern Industrial Revolution, Exit, and the Failure of Internal Control Systems. Journal of Finance 48(3):831-880, 1993
4)宮島,他(2013)による.サンプルは,上場企業3582社中,回答の得られた419社である.宮島英昭・齋藤卓爾・胥鵬・田中亘・小川亮:日本型コーポレート・ガバナンスはどこへ向かうのか?:「日本企業のコーポレート・ガバナンスに関するアンケート」調査から読み解く,(独)経済産業研究所,Policy Discussion Paper Series,2013(近刊)
5)イベント・スタディは,M&Aの発表日をイベント日(t=0)とし,その前後の期間中において当該企業の株価に生じた変化を市場全体の変化を調整して推計したものである.通常,発表前後の前後計3日ないし5日の合計が利用される.
6)前掲1)の宮島(2007),および井上・加藤(2006)がこの点を整理している.井上光太郎,加藤英明:M&Aと株価,東洋経済新報社,2006
7)この見方は,market driven仮説と呼ばれ,1990年代の米国の株式交換が盛んに利用されたM&Aの波動を念頭において,Shleifer and Vishney(2003)によってはじめて提唱された.Shleifer A and Vishny RW:Stock Market Driven Acquisitions. Journal of Financial Economics 70(3):295-311,2003
8)Shleifer A and Summers LH:Breach of Trust in Hostile Takeovers. Auerbach AJ(ed):Corporate Takeovers:Causes and Consequences(NBER, Chicago, IL),1988

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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