文献詳細
特集 これからの医療安全を考える
文献概要
■リスク・マネジメント再考
1.リスク・マネジメントの始まり
1990年代の終わりころから,医療現場において医療安全対策に注目が集まるようになり,リスク管理(リスク・マネジメント)に組織的に取り組む医療機関が増加した.例えば,リスクマネジャーなどの名称で,医師やコメディカル,事務職も含めた職種横断的な取り組みが行われるようになった.かつては,医療の質・安全を高めるのは,資格と能力であると信じられてきたが,組織とコミュニケーションの重要性が認識されるようになってきた.
2002年の医療法施行規則改正および2006年の第5次医療法改正によって,医療機関に医療安全管理者の配置と苦情相談窓口の設置が義務づけられるようになるとともに,2006年の診療報酬改定で医療安全管理者の配置を施設基準とした医療安全対策加算が認められるようになった.また,苦情相談窓口に関連して2012年の診療報酬改定で医療対話推進者の配置に加算が認められた.このように,国は病院内に医療安全管理の組織作りを行って組織内の安全管理に関する情報収集と分析を行うとともに,患者・家族等からの苦情相談対応の窓口を設置し,患者からの苦情を質・安全改善のための情報として積極的に受け止める対応をすすめてきた.
1.リスク・マネジメントの始まり
1990年代の終わりころから,医療現場において医療安全対策に注目が集まるようになり,リスク管理(リスク・マネジメント)に組織的に取り組む医療機関が増加した.例えば,リスクマネジャーなどの名称で,医師やコメディカル,事務職も含めた職種横断的な取り組みが行われるようになった.かつては,医療の質・安全を高めるのは,資格と能力であると信じられてきたが,組織とコミュニケーションの重要性が認識されるようになってきた.
2002年の医療法施行規則改正および2006年の第5次医療法改正によって,医療機関に医療安全管理者の配置と苦情相談窓口の設置が義務づけられるようになるとともに,2006年の診療報酬改定で医療安全管理者の配置を施設基準とした医療安全対策加算が認められるようになった.また,苦情相談窓口に関連して2012年の診療報酬改定で医療対話推進者の配置に加算が認められた.このように,国は病院内に医療安全管理の組織作りを行って組織内の安全管理に関する情報収集と分析を行うとともに,患者・家族等からの苦情相談対応の窓口を設置し,患者からの苦情を質・安全改善のための情報として積極的に受け止める対応をすすめてきた.
参考文献
1)野村英樹:平成25年度厚生労働科学研究 地域医療基盤開発推進研究事業「医業ないし歯科医業停止処分対象となった医師・歯科医師の再教育のあり方に関する研究」報告書
2)児玉安司:医療現場からみた医療安全・医事紛争の10年─1999年から2006年までの3つの物語をめぐって.ジュリスト No.1396,2010
3)厚生労働省:平成23年受療行動調査(確定数)の概況 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/11/dl/kakutei-gaikyo-all.pdf
4)N・グレゴリー・マンキュー(著),足立英之,他(訳):マンキュー経済学,第2版,Ⅱマクロ編.p253,東洋経済新報社,2005
5)ニクラス・ルーマン(著),大庭健・正村俊之(訳):信頼─社会的な複雑性の縮減メカニズム.勁草書房,1990
6)ユルゲン・ハーバーマス,ニクラス・ルーマン(著),佐藤嘉一,他(訳):批判理論と社会システム理論─ハーバーマス=ルーマン論争.木鐸社,1987
7)山岸俊男:信頼の構造─こころと社会の進化ゲーム.東京大学出版会,1998
8)NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)ホームページ http://www.coml.gr.jp/
9)医師患者関係を信認関係から説明したテキストとして,樋口範雄:フィデュシャリー[信認]の時代─信託と契約.有斐閣,1999
10)ロナルド・H・コース(著),宮沢健一,他(訳):企業・市場・法.東洋経済新報社,1992などが著名である.宍戸善一・常木淳:法と経済学─企業関連法のミクロ経済学的考察.有斐閣,2004のように法学者と経済学者の協働による優れたテキストがある.
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