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特集 これからの医療安全を考える
医療への信頼を再構築するための法政策の課題
著者: 児玉安司1
所属機関: 1東京大学
ページ範囲:P.854 - P.858
文献購入ページに移動1.リスク・マネジメントの始まり
1990年代の終わりころから,医療現場において医療安全対策に注目が集まるようになり,リスク管理(リスク・マネジメント)に組織的に取り組む医療機関が増加した.例えば,リスクマネジャーなどの名称で,医師やコメディカル,事務職も含めた職種横断的な取り組みが行われるようになった.かつては,医療の質・安全を高めるのは,資格と能力であると信じられてきたが,組織とコミュニケーションの重要性が認識されるようになってきた.
2002年の医療法施行規則改正および2006年の第5次医療法改正によって,医療機関に医療安全管理者の配置と苦情相談窓口の設置が義務づけられるようになるとともに,2006年の診療報酬改定で医療安全管理者の配置を施設基準とした医療安全対策加算が認められるようになった.また,苦情相談窓口に関連して2012年の診療報酬改定で医療対話推進者の配置に加算が認められた.このように,国は病院内に医療安全管理の組織作りを行って組織内の安全管理に関する情報収集と分析を行うとともに,患者・家族等からの苦情相談対応の窓口を設置し,患者からの苦情を質・安全改善のための情報として積極的に受け止める対応をすすめてきた.
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