icon fsr

文献詳細

雑誌文献

病院73巻2号

2014年02月発行

文献概要

特集 2025年に求められる病院経営のプロ

医療職としての病院マネジメント職育成を考える

著者: 松田晋哉1

所属機関: 1産業医科大学医学部公衆衛生学教室

ページ範囲:P.135 - P.141

文献購入ページに移動
 少子高齢化の進行,経済の停滞,そして医療技術の進歩と国民の要求水準の高まりなどにより,病院経営は質的な変化を求められている.図1は県庁所在地を含む地方のある医療圏における傷病別入院患者数の推計を伏見の考案した手法によって行った結果を示したものである1)注1.今後急速に進む高齢化に伴い当該二次医療圏では肺炎,骨折,循環器系疾患(脳卒中)が増加する.表1は現在の病床種別の入院患者数を前提としたとき,各病床がどれだけ必要になるかを推計したものである注2.一般病床数の必要数は10%程度の伸びであるのに対し,療養病床の必要数がほぼ倍増する.当該地域は医療計画上,病床過剰地域であることから,現行の医療法を前提とすれば,これ以上の増床は不可能であり,したがって在院日数を短縮することが不可欠となる.表2はその結果を示したものである.2030年でみると一般病床の平均在院日数は2010年の18.9日から15.2日に短縮することが必要となる.おそらくこれは問題なく達成できるであろう.むしろ仮に平均在院日数が国の示しているような目標値に収れんするのであれば,この地域における一般病床数は余ることになる.他方,療養病床は医療療養型で186.9日から119.5日,介護療養型で399.1日から225.1日へと大幅な短縮を求められることになる.

 以上の結果は当該地域においては今後,急性期以後の医療(介護)提供体制を整備していくことが必要であることを示している.しかしながら,現実には当該医療圏においては公的病院を中心に急性期病床の建て替えが断続的に行われており,急性期中心の入院医療提供体制の整備が進められている.このままの状況が進むと,近い将来,受け皿の問題から急性期医療も行き詰まってしまう可能性がある.

参考文献

1)伏見清秀:傷病構造の将来推計.病院 72(9):696-699,2013
2)川渕孝一:これからの病院マネージメント.医学書院,1996
3)藤森研司,中島稔博:エクセル・アクセスではじめるDPCデータ分析入門.じほう,2007
4)藤森研司・中島稔博:DPC データ分析 アクセス・SQL活用編.じほう,2009
5)松田晋哉:DPCを用いたクリニカルパスの評価.日本クリニカルパス学会誌 12(1):85-95,2010
6)田崎年晃:新規パス作成ならびにパス精緻化への応用.藤森研司,松田晋哉(編著):明日の医療に活かすDPCデータの分析手法と活用.pp29-44,じほう,2010
7)RSキャプラン,DPノートン:バランススコアカード.生産性出版,1997
8)伊藤一彦・上宮克己:バランス・スコアカードの作り方,東京:同友館,2005.
9)伏見清秀:DPCデータ活用ブック 第2版 東京:じほう,2008.
10)石川ベンジャミン光一,松田晋哉,伏見清秀,若尾文彦:厚生労働省平成23年度DPC調査データに基づく地域病院ポートフォリオ.じほう,2013
11)松田晋哉:基礎から読み解くDPC 第3版─実践的に活用するために.医学書院,2011
12)松田晋哉:医療の何が問題なのか─超高齢社会日本の医療モデル.勁草書房,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら