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文献詳細

雑誌文献

病院73巻7号

2014年07月発行

文献概要

連載 医療計画・地域医療ビジョンとこれからの病院マネジメント・1【新連載】

地域医療ビジョンと第6次医療計画のめざすもの

著者: 松田晋哉1

所属機関: 1産業医科大学 公衆衛生学教室

ページ範囲:P.567 - P.571

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■連載を始めるにあたって

 平成25(2013)年4月25日病床機能の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会での議論の結果,各都道府県は圏域内の医療機関の機能に関する情報や地域の医療需要の将来推計を活用し,平成27(2015)年度から医療ビジョンの策定を開始することとなった.この地域医療ビジョンについては,策定に当たり都道府県ごとに「協議の場」が設定され,「診療に関する学識経験者の団体」が参加することになっている.具体的には都道府県医師会や大学の研究者などの学識経験者が入ることになると考えられる.

 平成27(2015)年度からビジョン策定というスケジュールに沿って検討を進めるためには,平成25(2013)年度中にガイドライン策定に当たって必要となる基礎資料を作成する必要があった.そこで,筆者らは厚生労働科学研究の枠組みでビジョン策定の前提となる将来需要や,現状を投影した場合の医療資源量の推計方法の検討および地域医療ビジョンに投影した場合のイメージを得られるよう,大まかな地域・疾患・医療機能(急性期,亜急性期等)の可視化に関する研究を行ってきた1, 2).平成26(2014)年度以降の研究ではこうした資料をもとに各地域における地域医療ビジョン策定のための具体的なガイドラインの作成作業を行っていくことになる.

 ところで,このガイドラインの位置づけについては関係者間での意見の相違も取りざたされている.例えば,医療系ニュースサイトでは厚生労働省の担当者が「ガイドラインには拘束力を持たせる」との考えを述べたことに対し,日本医師会の幹部が「ガイドラインはあくまで参考に過ぎない」と反論したと報道されている3)

 医療をめぐる財政状況が厳しくなっていることを受けて,病床機能の調整について現在の案で進まなかった場合,より強い規制が導入される可能性があるという3).社会保障制度改革国民会議の最終報告においても,医療者自らの努力によって医療提供体制の適正化が進む必要性と期待が述べられている4).建前上の言葉遊びに過ぎないという批判をあえて甘受する覚悟で私見を述べると,適正化とは医療ニーズの変化に対応した医療提供体制の適正化であり,必ずしも支出の抑制を意味するものではないだろう.実際,社会保障制度改革国民会議の報告書においても今後の医療費増加についてはそれが許容されている.したがって,喫緊の課題は「適正性」の合理的根拠を示す作業をいかに行っていくかであり,しかもその適正化が地域ニーズの多様性に対応して的確に行われる仕組みをどう具体化するかである.

 この作業を関係者の合意のもとで行うためにはデータが必要であり,その準備の一端を筆者らの研究班メンバーが担ってきた.本連載では今回を含めて表に示した6回シリーズで,研究班メンバーの各々がその具体的内容について説明する.なお,医療計画の見直しと地域医療ビジョンは一体的に進むため,本シリーズではこの2つを総合的に議論する.また,地域包括ケアへの対応についても第6回で言及する予定である.

参考文献

1)松田晋哉:平成25年度厚生労働科学研究補助金(政策科学推進研究事業)・医療計画を踏まえた医療の連携体制構築に関する評価に関する研究(H24-医療-指定-037)総括報告書.2014
2)松田晋哉:平成25年度厚生労働科学研究補助金(厚生労働科学特別)・今後の医療需要を踏まえた医療機能の分化・連携を促すための地域医療ビジョン策定に向けて把握すべきデータやその活用方法に関する研究(H25-特別-指定-007)総括報告書.2014
3)池田宏之:知事の権限やガイドラインの強制力に危機感.日医,2014年4月15日
4)社会保障制度改革国民会議:社会保障制度国民会議報告書~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~.平成25年8月6日
5)二木立:医療改革と病院.勁草書房,2004
6)広井良典:地域コミュニティ政策に関する自治体アンケート調査.2007年実施
7)宇沢弘文:社会的共通資本.岩波新書,2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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