【事例】
地域医療魚沼学校の試み―住民こそ医療資源である
著者:
布施克也
,
鈴木孝明
,
林純一
,
高野清美
,
上原喜美子
,
上村伯人
,
井口清太郎
,
大平妙子
,
佐藤洋子
ページ範囲:P.698 - P.701
■地域医療再編成事業として
新潟県魚沼圏域(2012年人口21.3万人)は10万人当たりの医師数が124.4(2008年)で,全国平均の6割にも満たない医師不足地域である.また,圏域の高齢化率は30.1%(2012年)で,集落によっては40%を超えるところもある.また,人口減少も著しく,私たちが直接担当している魚沼市(2012年人口39,163人)で人口動態を詳しくみると,20年間で人口は14%減少しており,2015年には高齢化率が33.3%になると予想されている.出生数は10年間で約3割減少し,いっぽう死亡数は高齢化により10年間で約3割増加している.介護保険の認定率は18.2%と全国平均(16%)よりやや高い程度だが,高齢化のため要介護5の割合が19.3%と全国平均(11.2%)に比して著しく高くなっている.医師不足により高度医療機能は十分とは言えず,救急車搬送先の10%は他医療圏に依存しており,また放射線治療施設や循環器救急施設がないため,高度医療も隣接医療圏に依存している.
これらのことから,新潟県は郡部の医療システム再構築のモデルケースとして,医療圏での医療福祉の完結性の向上を目指した.この再編成事業は,2003年頃に端を発してさまざまな検討を重ね,2009年には地域医療再生計画事業の認定を受け,県の重要保健政策となった.高度専門医療機能整備だけでなく,総合診療医の育成により「地域全体をひとつの医療機能とする」を理念とし,「マグネットホスピタルの新設」「プライマリケア医療機関の強化」「多職種連携教育と協働実践の推進」「住民の主体的参加」「医療情報ネットワークの構築」を目標に計画された.2015年にはマグネットホスピタルとなるべく「新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院」が開院し,この理念実現の緒が開かれることになる.