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雑誌目次

雑誌文献

病院74巻2号

2015年02月発行

雑誌目次

特集 真のチーム医療とは

巻頭言

著者: 今村英仁

ページ範囲:P.105 - P.105

 現代の病院が医療提供を行うに当たり,「チーム医療」は必要不可欠なものになってきている.一つには,高度化,複雑化した医療の中で,もはや医師が全ての知識や技術を習得して一人で医療提供を行うことは不可能だからである.他方,緩和ケア診療加算,栄養サポートチーム加算,感染防止対策加算,呼吸ケアチーム加算など,チーム医療を実践することで診療報酬が加算される仕組みが増え,現場にチーム医療を行うことを強要されているからかもしれない.このようにチーム医療の重要性がますます強調される中で,多くの病院では,チーム医療が十分に機能しているとは言い難い.
 今回の特集では,チーム医療に焦点を合わせ,「真のチーム医療」を行うにはどうすればよいか,そして,これからどのように進化させていけばよいかについて検討した.

病院の「チーム医療」の本質

著者: 小林利彦

ページ範囲:P.106 - P.111

●組織が縦割りだと,会議などを行っても成果は部門間の情報共有にとどまり,メンバーに期待される役割に対して最小限の分担・責任しか負わない「見せかけのチーム」となる.
●「真のチーム医療」を適正に機能させるためには,専門職種間の垣根を払って権限委譲を行うことが必要である.
●また,チーム医療を適切に機能させるうえで中心的役割を演じるためには,経営学における組織論やリーダーシップ論などの学習も求められる.

「チーム医療」推進へ向けた国の取り組み

著者: 山口徹

ページ範囲:P.112 - P.116

●2010年5月,国のチーム医療推進の中心として「チーム医療推進会議」が設置された.その後,看護師およびそれ以外の専門職の役割拡大,業務見直しの検討が進められ,それを踏まえて医療介護一括法で法改正が行われた.
●看護師は特定行為の実施に踏み出したが,他の専門職の業務拡大はまだまだ少なく,今後の意欲的な取り組みが期待される.
●チーム医療は発展段階であり,リーダーとなる医師や経営者である院長などの理解,支援と診療報酬などの支援が欠かせない.

チーム医療推進のための人材養成

著者: 細田悦子

ページ範囲:P.118 - P.123

●産業医科大学病院は,文部科学省「チーム医療のための大学病院職員の人材養成システムの確立」事業にて,「医療連携アドバイザー養成プログラム」が採択された.
●このプログラムを通じて,患者個人に合ったサービスの提供や,多職種間の連携に関わる問題の改善による医療スタッフの負担軽減,医療安全の向上などの具体的改善を実施できた.
●さまざまなツールを使って多職種間の壁を取り除き,チーム医療を推進することが可能である.

チーム医療の評価—役割分担と自立

著者: 副島秀久

ページ範囲:P.124 - P.128

●チームが機能しているかを評価するためには,チーム員の能力,仕事量と人員配置のミスマッチがないか,コミュニケーションがきちんととれているかをチェックするとよい.
●チーム医療の本質は権限委譲にある.チーム員が自立し,目的にかなった行動が医師の直接的指示なしに自然とできることが究極の形である.
●チーム医療を機能させるためには,職種間の意識の壁,上下関係を取り除かなければならない.

チーム医療を成功に導く鍵とは—チームを機能させる「チームビルディング」

著者: 福原麻希

ページ範囲:P.129 - P.132

●機能していないチームには,①リーダーのマネジメント力,②メンバーのリーダーシップ力,③チーム内のコミュニケーション力という3つの共通の課題が見られる.これを機能させるのが「チームビルディング」である.
●病院におけるチームビルディングにおいては,意見のぶつかり合いを恐れてはいけない.そのコンフリクトこそがチームの最大のメリットである化学反応を生み出す.
●チーム医療の成功は職員の満足度を高め,ひいては患者満足度の向上,経営の改善と好循環を生み出していく.

対談

チーム医療の進化の可能性はどこにあるのか

著者: 近森正幸 ,   今村英仁

ページ範囲:P.89 - P.92

チーム医療の重要性は認識されているものの,効果的に実施できている病院は少なく,悩みの多いテーマと言える.
この対談では,病院経営者としてチーム医療を進めてきた経験をもとに,チーム医療の成功へのヒントを探る.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・2

旭川赤十字病院

著者: 石橋達勇

ページ範囲:P.96 - P.100

 旭川赤十字病院は,北海道の中央に位置する人口約35万人の旭川市内にある急性期病院である(図1).大正12(1923)年に札幌市から現在地に移転してきてから約90年間,日本赤十字社の基本理念に基づき地域医療サービスを提供し続けてきている.
 平成16(2004)〜平成22(2010)年に中央診療部,病棟,救命救急センター,供給部などを対象とした大規模な増改築計画・工事が段階的に行われた.本稿では,この一連の工事が終了した旭川赤十字病院における「救命救急医療」と「医療安全・感染防止」に関する取り組みに着目し,その運営と建築・設備の現況を紹介しつつ,考察を行う.

Data mania・2

医療施設調査

著者: 長田祐記

ページ範囲:P.102 - P.103

調査概要
 「医療施設調査」は,全国の施設数の動向など,医療提供体制の実態を示す調査です.第1回の患者調査が日本国内の医療需要を示すのに対し,本調査では医療の供給状況を表します.
 本調査は医療施設から適宜提出される申請・届出を基にしてひと月ごとに集計される「動態」調査と,3年ごとに全医療施設を対象にして一斉に実施する「静態」調査の2種類があります.いずれも調査主体は厚生労働省ですが,集計方法が違います.前者は医療施設における変更があるたび提出される届出などに基づいて都道府県知事または保健所を設置する市や特別区の長が調査票を記入するのに対し,後者は3年ごとに医療施設の管理者が自ら調査票に記入することとなっています.

赤ふん坊やの地域ケア最前線!〜全国各地の取り組みに出会う旅〜・[1]【新連載】

福井県高浜町

著者: 井階友貴

ページ範囲:P.140 - P.143

ボクの町・福井県高浜町では,住民が行政や医療関係者と一緒になって,地域の課題に取り組んでいるんだ!
連載第1回目の今回は,自己紹介を兼ねて,旅の出発地である高浜の取り組みを紹介するね!
高浜町で住民—行政—医療の協働を追及して活動している,井階友貴医師にお話を聞きました!

医療の可視化と病院経営・2

わが国の医療情報の可視化の現状と課題(1)—データ解析のツール

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.144 - P.151

■都道府県担当者の苦慮
 平成25(2013)年4月25日病床機能の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会での議論の結果,各都道府県は圏域内の医療機関の機能に関する情報や地域の医療需要の将来推計を活用し,平成27(2015)年度から地域医療構想(ビジョン)の策定を開始することとなった.筆者らは,厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)「今後の医療需要を踏まえた医療機能の分化・連携を促すための地域医療ビジョン策定に向けて把握すべきデータやその活用方法に関する研究(H25-特別-指定-007)」(研究代表者:松田晋哉)の枠組みの中で,ガイドライン策定に当たって必要となる基礎資料を作成し,これを「データブック」という形で厚生労働省に提出した1).このデータブックは各都道府県の担当部署に配布された後,筆者ら研究班のメンバー〔松田晋哉(産業医科大学),藤森研司(東北大学),伏見清秀(東京医科歯科大学),石川ベンジャミン光一(国立がんセンター研究所)〕が講師となって,活用方法に関する講習会を複数回行ってきた.配布したソフトなどの操作方法はさほど難しいものではないと思われるが,一連のツールを用いてどのような分析を行い,そしてそれをどのようなシナリオにまとめ上げるかというところで,各都道府県の担当者は苦慮している.
 実は今回提供したツールのいくつかは第6次医療計画策定のための資料として,筆者らの研究班,平成24年度厚生労働科学研究補助金(政策科学推進研究事業)「医療計画を踏まえた医療の連携体制構築に関する評価に関する研究(H24-医療-指定-037)」(研究代表者:松田晋哉)で作成し,各都道府県に配布したものの更新版である2).残念ながらこの研究で作成した資料集は長野県などの先進的事例を除くと,あまり活用してもらえなかった.その最も大きな理由は資料集で提示した指標群の活用のためには,ある程度の医学的知識が必要とされるため,非医療職である担当者には扱いにくいものであったという意見が関係者から寄せられている.実際,この資料集を用いた研修会でも,筆者らが提供した資料を用いてどのように計画を作るのかについては具体的なイメージが持てないという感想が多かった.

Current Issue【新連載】

助産師出向システムの可能性

著者: 石渡勇 ,   相川三保子 ,   青木雅行 ,   村田昌子

ページ範囲:P.152 - P.153

■はじめに
 助産師が少ない病院・診療所や閉院を余儀なくされている産科診療所もある一方で,産婦人科病棟の閉鎖などにより助産業務が行えない助産師がいるなど,助産業務の施設間格差が助長されている.また,総合周産期母子医療センターなどでは,ハイリスク妊娠・分娩が中心で正常分娩が極端に少なく,正常分娩の管理・助産を希望する若い助産師の意欲が失われていることもある.
 そこで,このような背景の中,平成25年・26年度厚生労働省の事業として,日本看護協会が主体となり助産師出向支援事業(以下,本事業)がモデル的に開始された.本事業の目的は,助産師の就業先の偏在および助産師の業務における施設間格差を是正するするとともに,正常分娩の介助経験など助産実践能力を強化することにある.

病院経営に効く1冊・2

『病院の世紀の理論』

著者: 山田隆司

ページ範囲:P.155 - P.155

地域医療構想(ビジョン)の策定が唱えられ,その一環としてこの秋には病床機能報告制度が開始された.それぞれの病院は2次医療圏内での現在の立ち位置を把握し,今後の役割を選択していくことになる.病院が国の定める医療制度の中でその役割を果たしている以上,もはや避けられない道筋である.
 病院経営に携わる身として,診療報酬制度,医療制度の変更があるたび,常に敏感にその流れを読み取り,自院にとっての最善策を判断し続けなければならないことにいささか窮屈な思いと疲労感を抱いているのはなにも私だけではないだろう.

特別記事

新しい専門医制度の意義と予想される影響—総合診療専門医と「かかりつけ医」の共存

著者: 箕輪良行

ページ範囲:P.134 - P.138

■はじめに
 2013(平成25)年4月に発表された「専門医の在り方に関する検討会」最終報告は非常に大きな改革である.筆者はこの影響を予測し,第3の改革と位置づけたい.つまり,約150年間に3つの大きな医制改革があったことになる(表1).明治政府がドイツ医学を導入して漢方医を事実上消滅させた第1の医制改革,GHQが旧帝大卒業の医師と同等の医師資格を大量にいた医専卒業医にも付与すると決めた第二次大戦後の第2の改革,2004(平成16)年に新しい臨床研修で始められて後期研修の整備と専門医制の確立をうたった今回の改革である.
 2017(平成29)年以降に確立される専門医制度は世界標準の体制だが,それまで医療供給の主体であった医師群と新しい医師群とが共存する初期段階は医療の受け手である国民にも多少の混乱が生ずるだろう.けれども医師が世代交代する20年程度のあいだ開業医が中心となって,国民医療を提供する日本独特の医療システムのもとで安定した医療供給がなされ,専門医制と開業医制が継承されるだろう.

Book Review

『トラブルに巻き込まれないための医事法の知識』

著者: 宝金清博

ページ範囲:P.157 - P.157

 メディアを見ると,医療と法の絡んだ問題が目に入らない日はないと言っても過言ではない.当然である.私たちの行う医療は,「法」によって規定されている.本来,私たち医師は必須学習事項として「法」を学ぶべきである.しかし,医学部での系統的な教育を全く受けないまま,real worldに放り出されるのが現実である.多くの医師が,実際に医療現場に出て,突然,深刻な問題に遭遇し,ぼうぜんとするのが現状である.その意味で,全ての医師の方に,本書を推薦したい.このような本は,日本にはこの一冊しかないと確信する.
 先日,若い裁判官の勉強会で講演と情報交換をさせてもらった.その際,医療と裁判の世界の違いをあらためて痛感させられた.教育課程における履修科目も全く異なる.生物学,数学は言うまでもなく,統計学や文学も若い法律家には必須科目ではないのである.統計学の知識は,今日の裁判で必須ではないかという確信があった私には少々ショックであった.その席で,いわゆるエビデンスとかビッグデータを用いた,コンピューターによる診断精度が医師の診断を上回る時代になりつつあることが話題になった.同様に,スーパーコンピューターなどの力を借りて,数理学的,統計学的手法を導入し,自然科学的な判断論理を,法の裁きの場に持ち込むことはできないかと若い法律家に聞いたが,ほぼ全員が無理だと答えた.法律は「文言主義」ではあるが,一例一例が複雑系のようなもので,判例を数理的に処理されたデータベースはおそらく何の役にも立たないというのが彼らの一致した意見であった.法律の世界での論理性と医療の世界での論理性は,どちらが正しいという以前に,出自の異なる論理体系を持っているのではないかと思うときがある.医師と法律家の間には,細部の違いではなく,乗り越えられない深い次元の違う溝が存在するのではというある種の絶望感が残った.

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Information

ページ範囲:P.154 - P.154

COOK Zenith大動脈解離用
エンドバスキュラーシステム
製造販売承認取得
 米国クックメディカルは,「COOK Zenith大動脈解離用エンドバスキュラーシステム」の製造販売承認を取得しました.これは日本で初めて承認された大動脈解離に対する血管内治療用デバイスで,合併症を有する急性期Stanford B型大動脈解離のうち,内科的治療が奏効しない患者の血管内治療に用いられます.
 血管内治療法は外科的治療法に比べ,デバイスを挿入する大腿動脈の切開部分が小さく,侵襲性が低い治療法と考えられています.
フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社

Back Number

ページ範囲:P.156 - P.156

投稿規定

ページ範囲:P.158 - P.159

次号予告

ページ範囲:P.160 - P.160

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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