連載 病院経営に効く1冊・4
スローメディシンのすすめ—年老いていく家族のケアに向き合うあなたへ
著者:
松田晋哉1
所属機関:
1産業医科大学公衆衛生学教室
ページ範囲:P.303 - P.303
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マッカラ医師は米国の著名な老年医学の医師である.本書の序文でマッカラ医師は現代米国の医療が,機械化した一つの産業のようなものになっており,あたかも病気の治療を商品化し,進むべき方向をテクノロジーによって機械的に決定するという,医療が本来持つべき「心」からはずれたものになっていることに警鐘を鳴らしている.そして高齢者医療を専門とする医師の目から見て高齢患者とその家族をとりまく現在の窮状は,現代の医療システムの機能不全を表すものと問題提起をしている.この状況はわが国が直面する問題と同じものであり,超高齢社会において地域包括ケア体制の確立という目標を掲げているわれわれが真摯に受け止めなければならない課題である.
この問題に対処するためにマッカラ医師は「スローメディシン」という概念を提示する.それは序文で「病院でのテクノロジーを中心とした急性期医療からは距離をとり,高齢者一人一人で異なる複雑な問題にゆっくり立ち向かう」医療の「態度」と定義される.