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雑誌目次

雑誌文献

病院75巻2号

2016年02月発行

雑誌目次

特集 進化するDPC

巻頭言

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.97 - P.97

 平成15(2003)年に導入されたわが国独自の診断群分類DPC(Diagnosis Procedure Combination)は,平成27(2015)年現在,DPC準備病院を含む約1,900の病院に適用され,退院患者数で約1100万件,病床数で約55万床をカバーしている.平成26(2014)年からは,データ提出加算を算定している病院にも同様のデータ提出が義務づけられ,さらにそのカバーする施設の範囲は広がっている.
 本特集は,厚生労働省のDPC研究班に参加している研究者によって,DPCプロジェクトの目指してきたことを網羅的に説明し,関係者にさらなる情報提供を行おうというものである.松田論文ではDPCの目的とその開発過程について歴史的経緯を踏まえて説明した.紆余曲折はあったものの,医療情報の標準化とその各レベルでの活用という目的に向かってこのプロジェクトが進んできていることが理解していただけると思う.伏見論文では現在の研究班を率いる立場から,重要な検討課題となっている分類の精緻化(CCPマトリックスの作成),病院群の設定,機能評価係数Ⅱのあり方について論考されており,厚生労働省の担当者が意図するところを理解する上で参考になる.

DPC開発の目的とは

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.98 - P.103

●DPC開発の最も重要な目的は,医療情報の標準化と可視化であった.
●可視化された情報に基づく各レベルでの医療評価を行うための方法論開発が研究班の主な役割であった.
●既存の情報システム〔レセプトコンピュータ(レセコン)情報〕を用いたこと,情報の応用可能性を重視したことがDPC一般化の成功要因であると考えられる.

DPCの現状と課題

著者: 伏見清秀

ページ範囲:P.104 - P.108

●DPC診断群分類は,CCPマトリックスの導入により精緻化が進められる.
●DPC病院の病院情報公表が決まり,今後質評価指標公表も視野に入ってきた.
●DPCデータ活用の有用性が広く認識されてきている.

DPCデータを活用した病院マネジメント

著者: 藤森研司

ページ範囲:P.109 - P.113

●DPCデータを活用した病院マネジメントの改革を進める上で,自院データの活用,他院とのベンチマーク,「DPC導入の影響評価に係る調査」の公開データの活用について考える.
●少子高齢化の進展で医療機関を取り巻く環境は徐々に変化している.地域医療構想の枠組みの中で,これからの自院の方向付けが問われている現在,自院の立ち位置の把握が重要である.
●DPC/PDPSでは,包括範囲に対しては全国平均値の在院日数に対して全国平均値の支払いが行われるため,より考慮された医療資源の投入でより高いパフォーマンスを得るほど医療機関の経常収支は改善する.量から質への転換,すなわち“賢い医療”の出番である.

DPCと地域医療構想

著者: 石川ベンジャミン光一

ページ範囲:P.114 - P.119

●地域医療構想では,DPCデータ・NDBデータに基づく入院受療率を用いて医療需要と供給の推計を行い,将来のあるべき医療提供体制を踏まえた必要病床数の設定を行う.
●目標とする医療提供体制の実現に向けては,DPC調査と病床機能報告制度のデータを用いて現況を把握しながらマネジメントを行うことが求められる.
●あるべき医療提供体制の検討の中では,量的な需給のバランスだけでなく,DPCデータを利用した患者視点からのアクセシビリティ分析などを行い,地域住民への説明責任を果たす必要がある.

DPCを支える診療情報管理—診療情報管理士の立場から

著者: 阿南誠

ページ範囲:P.120 - P.124

●診療情報管理の視点からみると,日本版DRGの導入以来17年間,一貫した課題とされてきたのが,データ精度である.それは分類の開発や妥当性の検証など,DPC制度導入の成果を評価し,適正な診療報酬請求を可能にするための必須の要件である.
●病院の立場からは,質の高いデータに基づく総合的な情報創出,管理能力が必要とされ,それに関わる専門職として診療情報管理士が大いに注目されるようになった.
●ここでは,上記の課題に対応するための施策や病院側の対応,その成果などについて診療情報管理士の視点で論じた.

DPCデータを用いた医療の質評価

著者: 池田俊也 ,   小林美亜

ページ範囲:P.125 - P.129

●臨床指標は医療の質を定量的に評価する物差しであり,プロセス(過程)指標とアウトカム(結果)指標に大別される.
●医療機関においてDPCデータを用いた臨床指標の利用が進んでいる.
●DPC/PDPS下において医療の質を保証するためには,臨床指標の計測結果を評価し,結果に応じて改善を図る仕組みを整備することが肝要である.

DPCデータを用いた臨床研究

著者: 康永秀生

ページ範囲:P.130 - P.133

●臨床研究の一つの柱として,大規模データベースを用いた観察研究が近年急速に発展している.
●大規模データベースの一つであるDPCデータベースには,臨床研究にも応用できる詳細なデータが含まれる.
●本稿では,DPCデータを用いた臨床研究の実例をいくつか紹介する.

対談

DPCはこうしてつくられた

著者: 矢島鉄也 ,   松田晋哉

ページ範囲:P.81 - P.86

DPCは,病院レベルのマネジメントはもちろん,医療の質評価,臨床研究,さらには地域医療構想にも利用される巨大なツールへと進化を続けている.
日本の医療情報の標準化と透明化を進める上で大きな役割を果たしたDPCの来し方から現在,そして未来を,開発を担当した当事者2人が解き明かす.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・14

医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院

著者: 石橋達勇

ページ範囲:P.88 - P.93

■医療機能の概要
 手稲渓仁会病院は,札幌市手稲区にある595床を有する急性期病院である(図1).医師243人,看護職837人を含めて1,743人のスタッフにより運営されている(2014年現在).経営主体の医療法人渓仁会が,1987年にグループ基幹病院として開院して以降,現在に至るまでに高度先進医療をも提供する地域医療支援病院として,各種医療サービスの提供を行っている.医療機能上の特徴として,救命救急センターを有し災害拠点病院であること,地域周産期センターを有していること,地域がん診療連携拠点病院であること,などが挙げられる.
 同病院の診療圏は,主に札幌市手稲区・北区・西区,石狩市,後志の912,179人である.外来患者の73.4%が札幌市,うち49.0%は病院が位置している手稲区から来院している.次いで17.1%が石狩市・小樽市,8.6%がその他北海道内,0.9%が北海道外からの来院となっている.しかし,入院患者の住所地は,61.1%が札幌市,18.8%が石狩市・小樽市からであるが,18.8%がその他北海道内,1.3%が北海道外となっている.これは,同病院が大学病院本院群に次ぐDPCⅡ群病院の指定を受けて先進的な急性期医療を提供していることで,前述の診療圏以遠の北海道内の小病院や診療所の紹介を経て広く来院しているため,とのことであった.日常の地域医療を支えつつ,北海道内の高度医療の一端をも担っていることから,「縦」にも「横」にも広い医療を提供している民間病院であるといえる.

Data mania・14

医療施設調査×国民医療費

著者: 長田祐記

ページ範囲:P.94 - P.95

調査概要
 今回は本連載第2回で取り上げた「医療施設調査」を軸に分析を行います.本調査は,一言で言うと医療の供給状況を示すデータです.医療施設数や病床数のほか,医療機器の設置状況など医療機関を取り巻くマクロなデータが把握できます.これらを病床機能や規模,都道府県別に切り分けて分析することが可能です.
 本稿では,本調査に1人当たりの国民医療費のデータを組み合わせた視点を示します.この組み合わせには,医療の供給が国民医療費という,いわばコストにどのような影響を与えているかを探るという意味合いがあります.

ケースレポート 地域医療構想と民間病院・2

医療法人ふらて会 西野病院—病院の持つ「安心保障機能」の地域への開放・社会化の実践

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.134 - P.140

■病院の概要1)
 西野病院は福岡県北九州市八幡東区にある医療法人ふらて会の中核施設で,120床〔一般病棟20床(10:1),療養病棟50床(看護基準20:1,介護基準20:1),回復期リハビリテーション病棟50床(看護基準15:1,介護基準30:1)〕のケアミックス病院である.診療科は内科・神経内科・呼吸器科・循環器科・消化器科・小児科・整形外科・リハビリテーション科・放射線科で,法人内には他に介護老人保健施設〔入所:90名(うち認知症専門棟40名),通所:デイケア60名〕と在宅支援センター(居宅介護支援事業所,通所介護,訪問看護ステーション,単独型短期入所生活介護)が併設されている.また,ふらてグループには社会福祉法人ふらて福祉会があり,ケアハウス,通所介護,グループホーム,訪問介護の各サービスを提供している.さらに地域貢献活動の一環としてNPO法人生きがい創造塾を組織し,年会費3,000円で表1に示した活動に地域住民が自由に参加できる枠組みを提供している.

赤ふん坊やの地域ケア最前線!—全国各地の取り組みに出会う旅・[7]

沖縄県うるま市

著者: 髙山義浩

ページ範囲:P.142 - P.145

 沖縄県うるま市では,地域の中核病院自らが地域に飛び出し,患者さんの生活と療養を結び付けるための取り組みが,2011年から展開されているんだ! 連載第7回目の今回は,有名研修病院でもある沖縄県立中部病院の「地域ケア科」の取り組みを紹介するね! 国内外のさまざまな医療を見てこられ,ここ沖縄で病院と地域とのつながり方を開拓されている,髙山義浩医師にお話を聞きました!

医療・病院をめぐる文献ガイド・5

職業感染予防について知るための文献

著者: 坂本史衣

ページ範囲:P.146 - P.149

■職業感染予防の動向
 業務を遂行する過程で起こる感染を職業感染という.医療現場で生じる職業感染の種類とリスクはさまざまな条件に左右されるため,予防策も多岐にわたる(表1).本稿では急性期病院において発生し得る代表的な職業感染とその予防に焦点を絞る(表2).

地域医療構想と〈くらし〉のゆくえ・11

地域における医師の確保について

著者: 髙山義浩

ページ範囲:P.150 - P.151

 先日,文科系の学生さんと一緒にビールを飲む機会がありました.大学では,地域における医師の確保を研究テーマにしていて,卒後は病院事務の仕事に就きたいと考えているんだそうです.
 「まずは,医師が働きやすい病院が必要ですよね」と学生さんが言いました.「地域に医師をつなぎとめるための条件だと思います」

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Book Review 診療情報学 第2版

著者: 髙久史麿

ページ範囲:P.141 - P.141

Book Review 今日から使える医療統計

著者: 香坂俊

ページ範囲:P.153 - P.153

Information

ページ範囲:P.155 - P.155

Back Number

ページ範囲:P.157 - P.157

次号予告

ページ範囲:P.160 - P.160

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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