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連載 医療・病院をめぐる文献ガイド・8
医事法について知るための文献
著者: 小西知世1
所属機関: 1明治大学法学部
ページ範囲:P.628 - P.631
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「医事法? ああ,医療法ですね! 学生時代,関係法規で学びました.」─私が自己紹介をするたびに返ってくる回答である.残念ながら,この返事はちょっとズレている.医療法という返事は,おそらくは医療にかかわる法律という意味で理解してくれているのだろう.医事法とは,狭義では医学および医療に関する法のことをいうから,その限りで間違ってはいない.だが,「医療法」という名前の法律が実際に存在するため,普通,混乱を避けるために医療法という言葉をそのような形で使わない.では,関係法規はどこがズレているのだろうか.職種ごとに学ばなければならない関係法規の範囲は変わってくるが,衛生法規といわれる法令のカテゴリーがその中心的なものであることは今も昔も変わらない.衛生法規は,もちろん医事法に含まれる.しかし,医事法は衛生法規よりも射程が広い.例えば,インフォームド・コンセント.むろん医事法でとり上げられるテーマではあるが,衛生法規の中にこれを正面から規定する法令は存在しない.医療事故訴訟で用いられる法律は,主に民法や刑法である.これらは衛生法規に位置づけられる法律ではない.
では,今回の文献ガイドのテーマである医事法とは何か注).
「医事法? ああ,医療法ですね! 学生時代,関係法規で学びました.」─私が自己紹介をするたびに返ってくる回答である.残念ながら,この返事はちょっとズレている.医療法という返事は,おそらくは医療にかかわる法律という意味で理解してくれているのだろう.医事法とは,狭義では医学および医療に関する法のことをいうから,その限りで間違ってはいない.だが,「医療法」という名前の法律が実際に存在するため,普通,混乱を避けるために医療法という言葉をそのような形で使わない.では,関係法規はどこがズレているのだろうか.職種ごとに学ばなければならない関係法規の範囲は変わってくるが,衛生法規といわれる法令のカテゴリーがその中心的なものであることは今も昔も変わらない.衛生法規は,もちろん医事法に含まれる.しかし,医事法は衛生法規よりも射程が広い.例えば,インフォームド・コンセント.むろん医事法でとり上げられるテーマではあるが,衛生法規の中にこれを正面から規定する法令は存在しない.医療事故訴訟で用いられる法律は,主に民法や刑法である.これらは衛生法規に位置づけられる法律ではない.
では,今回の文献ガイドのテーマである医事法とは何か注).
参考文献
1)手嶋豊:医事法入門,第4版.有斐閣,2015
2)久々湊晴夫,旗手俊彦(編):はじめての医事法,第2版.成文堂,2011
3)葛生栄二郎,河見誠,伊佐智子:新・いのちの法と倫理.法律文化社,2009
4)唄孝一:志したこと,求めたもの.日本評論社,2013
5)和田仁孝,前田正一:医療紛争─メディカル・コンフリクト・マネジメントの提案.医学書院,2001
6)隈本邦彦:医療・看護事故の真実と教訓.ライフサポート社,2008
7)佐藤智(編集代表),大島伸一,高久史麿,山口昇(編):在宅医療の展望.明日の在宅医療1巻,中央法規出版,2008
8)佐藤智(編集代表),黒岩卓夫,前沢政次(編):在宅医療の諸相と方法.明日の在宅医療2巻,中央法規出版,2008
9)佐藤智(編集代表),鈴木荘一,村松静子(編):在宅での看取りと緩和ケア.明日の在宅医療.3巻,中央法規出版,2008
10)佐藤智(編集代表),野中博,大内尉義(編):高齢者ケアと在宅医療.明日の在宅医療4巻,中央法規出版,2008
11)佐藤智(編集代表),片山壽,川越博美(編):在宅医療・訪問看護と地域連携.明日の在宅医療5巻,中央法規出版,2008
12)佐藤智(編集代表),開原成充,井部俊子(編):在宅医療と人材養成・人材確保.明日の在宅医療6巻,中央法規出版,2008
13)佐藤智(編集代表),西村周三,田中 滋(編):在宅医療の経済的基盤.明日の在宅医療7巻,中央法規出版,2008
14)田代志門:研究倫理とは何か─臨床医学研究と生命倫理.勁草書房,2011
15)鈴木利廣,水口真寿美,関口正人(編):医薬品の安全性と法─薬事法学のすすめ.エイデル研究所,2015
16)三瀬朋子:医学と利益相反─アメリカから学ぶ.弘文堂,2007
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