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文献詳細

雑誌文献

病院76巻1号

2017年01月発行

文献概要

連載 病院組織コーチング・8

医療安全とコーチング

著者: 小野眞史12

所属機関: 1日本医科大学眼科 2日本医科大学付属病院臨床研修センター

ページ範囲:P.70 - P.72

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■医療安全に対するニーズの変遷
 医療界は1990年代から現在,そしてこれからの近未来にわたり非常に大きな変革を遂げると考えられている.医療安全におけるニーズの変化は2004年のWHOによる「患者安全」(Patient Safety)の提唱から始まり,「ヒューマンエラー」を前提とし,従来の訴訟回避のための「リスクマネジメント」と区別して,「セイフティマネジメント(安全管理)」の語が提唱されるようになった.時間的な対応も従来の事後対応から事前の予防,セイフティマネジメントが提案され,その後「質と安全」概念の統合が提唱されるようになった1)
 本邦では医療訴訟が1990年頃より急速に増加したことから,リスクマネジメントの重要性が再認識され,加えて前述のセイフティマネジメントの必要性が提唱された.さらに医療費の増加と相まって,現場の限られた人的・金銭的・時間的資源の制約から,医療の質の低下が問題視されるようになり,「クオリティマネジメント」のニーズが高まった.本邦のような国民皆保険制度の下で,欧米において提唱されるこれらのマネジメントを全て医療者が同時に高品質に行うよう求められるようになったことが,一部の組織破綻につながり,医療崩壊といった言葉がささやかれるようになった一因ではなかろうか.いまや医療従事者の疲弊は医療界にとって大きな問題となっている.先に提唱された「患者安全」の提言は非常に重要でかつ大きな変革ではあったが,現状ではそこからさらに一歩進み,「医療安全は誰のためのものか」も再考する必要が生じ,本連載第7回で吉田2)が述べたように,持続可能でそこに参加する全ての人々が不平等でない医療を実現するためには「複数の医療者と患者,家族」のための円滑なコミュニケーションを持ったチーム医療の概念の重要性も提唱され始めている.このように,「医療安全」という文言一つにおいてもさまざまなニュアンスおよび時代によるニーズの変遷があることをご理解いただきたい.

参考文献

1)長谷川敏彦:医療安全再考(前編)─遅すぎた革命から,これからの革命へ.病院 72:640-643,2013
2)吉田穂波:どうしたら真のチーム医療が実現するのか─コーチングの活用とその意義.病院 75:1010-1012,2016
3)小野眞史:メディカルコーチング─医療コミュニケーションの新たな技法と医療安全.病院 72:976-981,2013
4)河野龍太郎:医療におけるヒューマンエラー─なぜ間違える どう防ぐ,第2版.医学書院,2014
5)岡本智子,鈴鴨よしみ,出江紳一:コミュニケーショントレーニングが医療現場の組織活性に及ぼす影響.医療の質・安全学会誌 11:39-46,2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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