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雑誌目次

雑誌文献

病院76巻5号

2017年05月発行

雑誌目次

特集 地域を支える病院看護師の育成

巻頭言

著者: 山田隆司

ページ範囲:P.345 - P.345

 超高齢社会を迎え,「治す医療」から「支える医療」への転換が求められている.看護師にも超急性期,急性期のクリニカルパスが適用されやすい患者への看護から,回復期,長期療養患者へのより個別的な対応が求められるようになってきた.地域包括ケアを実現するための要として,介護施設や在宅での看護師の役割もより重要となってきている.看護師の人材育成については,このように地域社会のニーズに応えられるような変革が求められている.疾病中心から患者中心へ,単一疾患からマルチモビディティへ,キュアからケアへ,病院内から地域へ,刻々と変化する医療ニーズに対して幅広い視野を持った看護師の育成が求められているのである.
 今回の特集では,高齢化が進む地域の医療現場で実際に実力を発揮できる看護師をいかに育成するかという視点で執筆をお願いした.

地域包括ケア時代の看護職員の育成

著者: 加藤典子

ページ範囲:P.346 - P.348

●地域包括ケアを推進するためには,看護職員の量と質の確保がますます重要になっている.
●新人看護職員研修では,資質の向上を図るよう努めることが看護職員本人及び病院等の開設者にも求められている.この他の研修についても時代の要請に応じた研修の企画や受講が求められる.
●看護師の特定行為研修制度は,平成27年10月に施行されており,在宅医療等の推進を図るため,多くの看護師に受講いただきたい.

中小規模病院の看護管理者および看護職員の資質向上の取り組み

著者: 草間直子

ページ範囲:P.349 - P.351

●今後,地域連携を推進しながら質の高い医療提供体制を構築するためには,全国の病院の約8割を占める中小規模病院の看護管理者や看護職員の資質の向上が重要である.
●中小規模病院の看護管理者の看護管理向上のための取り組みを全国的に推進することを目的に,平成28年度厚生労働科学研究において「中小規模病院看護管理支援事業ガイドライン」を策定した.
●全国の中小規模病院における看護の質向上のための研修等の実態を量的・質的に把握し,看護職員への教育研修体制の充実を通した,中小規模病院におけるさらなる看護の質の向上および看護職員の確保を目的とし,平成28年度看護職員確保対策特別事業において,公益社団法人日本看護協会が「中小規模病院の看護の質の向上に係る研修等に関する調査」を行い,報告書を作成した.
●都道府県や関係団体等がこれらを活用することで,看護の質向上につながるよう期待している.

回復期リハビリテーション病棟の看護師教育

著者: 猪川まゆみ

ページ範囲:P.352 - P.359

●回復期リハビリテーション病棟の看護の目的は,生活の再構築である.
●生活の再構築をするために,回復期リハビリテーション病棟協会の看護介護委員会では,国際生活機能分類(ICF)に基づいたアプローチを推奨している.
●回復期リハビリテーションにおいて,質の高いリハビリ看護を提供するためにはチームアプローチの充実が必要である.

病院と地域をつなぐための多施設協働による看護師育成

著者: 角田直枝

ページ範囲:P.360 - P.364

●在宅医療の経験がない病院看護師に,訪問看護の短期体験研修や療養病棟・特別養護老人ホームへの出向を行い,生活を支える視点を育成した.
●上記の育成により退院支援の視点をもつ病棟看護師の育成を行うとともに,新卒訪問看護師の育成の受け入れや救急外来看護師に対する地域包括ケアの教育を試みた.
●多施設協働による看護師育成は,看護師の成長と離職の低下につながるため,今後は診療報酬などによる評価,教育の標準化,実行できる看護管理者の育成が急務である.

高齢者看護に力を発揮する認定看護師

著者: 吉村浩美

ページ範囲:P.366 - P.370

●認定看護師(Certified Nurse:CN)は医療が高度複雑化し利用者のニーズが多様化している現代において,医療の質を保証しチーム医療を推進するために育成されてきた.追い風は診療報酬の誘導である.
●CNは高齢者のキュアとケアに対応でき,“ときどき入院,ほぼ在宅”の実現に向けた地域連携と多職種協働の鍵である.
●急性期病院の看護管理者はCNを取得した部下に対し,その分野の実力がつくよう支援し,在宅療養や地域の施設・診療所でCNが活用されるような仕組みを創ることが求められる.

地域医療に貢献する看護師特定行為研修

著者: 春山早苗 ,   村上礼子

ページ範囲:P.371 - P.375

●自治医科大学では大学の理念および地域医療に従事する看護師の現状を踏まえ,平成27(2015)年10月より全学体制で看護師特定行為研修を開始した.看護師が就労を継続しながら受講できるようeラーニングも取り入れ,19区分の研修を実施し,現在までに90人が入構し,23人が修了している.
●本稿では,受講希望の多い「呼吸器関連(長期呼吸療法)」および「創傷管理」を例に挙げて研修の実際を述べる.
●研修生の所属施設における学習サポート体制づくりや研修修了後の活動を円滑にする体制づくりが,本研修の成果を左右する課題である.
●研修修了生から報告された実践現場における成果から,研修修了看護師の活躍に寄せる期待を述べる.

対談

これからの看護師に期待される役割

著者: 坂本すが ,   山田隆司

ページ範囲:P.329 - P.334

超高齢社会を迎えるに当たり地域包括ケアシステムの要として,「生活」と「医療」に関わる専門職である看護師への期待は高まる.
これからの看護師が地域社会で果たすべき役割とはどのようなものか.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・29

公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院

著者: 竹宮健司

ページ範囲:P.338 - P.343

■はじめに
 倉敷中央病院は,岡山県倉敷市を基盤に幅広く活躍した実業家・大原孫三郎(以下,大原氏)によって,1923年に創設された民間の病院である.90年以上の歴史をもつこの病院の発展の経緯を概観し,その過程で,建築がどのように計画されてきたのかについて報告したい.

事例から探る地域医療再生のカギ・15

兵庫県立柏原病院の医療再生(前編)

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.378 - P.383

 小児科を守る母親たちの運動で全国的に有名な兵庫県立柏原病院(以下,県立柏原病院)は,一般にはその運動により医療崩壊の危機が去ったと思われている.しかし,小児科以外の診療科は長く医師不足の状態にあり,住民を含めた病院関係者は長い時間をかけて病院再建に取り組んできた.その長い経過を前後編にわたってお伝えする.

事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・3

社会医療法人若弘会 若草第一病院—地域医療支援病院の取得

著者: 関悠希

ページ範囲:P.386 - P.390

 今回は人口50万人を擁する東大阪市で,2006年に地域医療支援病院に承認された社会医療法人若弘会若草第一病院(以下,同院)を取り上げる(図1).同院は逆紹介率93.8%(2015年度実績)という極めて高い数値からもわかるように,徹底した機能分化を行っているのが特徴である.かかりつけ医の普及を含め,機能分化を進める上でも有効な制度として注目される地域医療支援病院であるが,地域医療支援病院として地域の機能分化を促進しつつ,高度医療を提供し続けるためのポイントを考察するため,同院が地域医療支援病院を目指したきっかけから現在に至るまで,時系列で追うこととしたい.

病院組織コーチング・12【最終回】

[コーチング導入事例・3]海老名総合病院—「変える」から「変わる」へ

著者: 内山喜一郎

ページ範囲:P.394 - P.396

■はじめに
 組織運営における重要な要素がコミュニケーションであることには,誰しも異論がないであろう.では,効果的なコミュニケーションの方法とはどのようなものだろうか.これにはさまざまな意見があるに違いない.
 筆者は知人の勧めで個人的にコーチングを学んだ.その学びから,円滑なコミュニケーションにはある種のスキルが必要であり,その一つがコーチングであると確信し,自らが院長を務める病院に導入した.プロジェクトを進めた2年間の経緯を紹介する.

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Book Review 地域医療と暮らしのゆくえ—超高齢社会をともに生きる

著者: 佐々木淳

ページ範囲:P.377 - P.377

Book Review —快をささえる—難病ケア スターティングガイド

著者: 松村真司

ページ範囲:P.385 - P.385

Book Review 感染対策40の鉄則

著者: 吉田眞紀子

ページ範囲:P.393 - P.393

Back Number

ページ範囲:P.398 - P.398

Information

ページ範囲:P.399 - P.399

次号予告

ページ範囲:P.402 - P.402

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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