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雑誌目次

雑誌文献

病院76巻7号

2017年07月発行

雑誌目次

特集 第7次医療計画─これまでと何が違うのか,病院への影響は?

巻頭言

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.497 - P.497

 平成28(2016)年度に策定された地域医療構想を受けて,平成29(2017)年度は第7次医療計画の策定作業が開始された.今回の医療計画は,1期3年の介護保険事業計画に合わせて見直しができるように1期5年が6年となった.これにより,地域包括ケアシステムの構築に向けて医療と介護のサービス提供体制の整合性が各地域で図られる.
 佐々木論文では今回の地域医療計画のポイントが説明されている.30万人と推計された「在宅等」でケアされる慢性期の患者を地域でどのような体制で診ていくのかという合意形成が必要であること,それには医療と介護,医療介護のサービス間,そして都道府県と市町村の協働が必要であることが強調されている.

第7次医療計画の目指すところ

著者: 佐々木健

ページ範囲:P.498 - P.503

●地域医療構想の策定後は,地域ごとの意見交換が重要である.
●医療計画と介護保険事業(支援)計画を整合的なものとし,医療と介護の連携を推進する.
●医療計画がより実効的なものとなるよう,指標などの見直しを実施する.

地域医療計画は機能するのか

著者: 長谷川友紀

ページ範囲:P.504 - P.508

●病床規制は,一般病床では「重症度,医療・看護必要度」,療養病床では「医療区分」の導入により,事実上,意味を失いつつある.
●政策循環の対象として,5疾病5事業+在宅医療が,データ整備の対象となる指標とともに明らかにされている.しかしストーリー性に乏しく,住民が理解し,あるいは改善策立案につなげることは困難である.今後,この部分の検討が重要である.
●医師の働き方改革は,地域医療に大きな影響を与える可能性があり,注意すべきである.

地域包括ケアの概念に対応する地域医療計画をどう策定するか

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.509 - P.512

●第7次医療計画は地域包括ケアネットワークを構築するための重要な契機となる.
●各地域で,厚生労働省から提供されている資料をいかに活用できるかが鍵となる.
●ネットワーク構築のための合意形成の場としての地域医療構想調整会議の役割が重要となる.

岡山県保健医療計画の策定過程で留意したこと

著者: 則安俊昭

ページ範囲:P.513 - P.518

●新たな課題である地域医療構想を含む医療計画を円滑に策定するためには,さまざまな機会を捉えた非公式な場での説明と忌憚のない意見交換の積み重ねが,極めて有効であった.
●都道府県には,各医療機関の想いや事情を知った上で守秘義務を遵守しながら中立の立場で,機能分化と連携の推進に向けて関係機関や団体,住民をコーディネートしていくことが求められている.

地方の都市部の病院における第7次医療計画への対応

著者: 松波英寿

ページ範囲:P.520 - P.526

●各病院は県が作成する地域医療構想を十分理解し,それに沿った行動が必要である.
●地域においては,地域医療連携推進法人の導入や在宅医療の推進などの施策と整合性のとれた病院運営が重要である.
●在宅医療の推進のためには,いつでもウォッチ®といった医療機器の開発や,擬似患者情報共有システムのような医療情報共有システムの導入が必要であろう.

地方都市の民間病院の立場から考える第7次医療計画—地域のニーズに合わせてソフトランディングする

著者: 織田正道

ページ範囲:P.527 - P.531

●各病院は地域医療構想調整会議や分科会での議論や資料を把握するとともに,積極的に構想区域内での意見交換の場に出て行く必要がある.
●地方では,85歳以上人口増加に伴い,救急搬送患者数,新規入院患者数は,パラレルに急増する.この傾向を踏まえた医療計画でなくてはならない.
●地域医療構想が示す医療機能分化の推計値が,2025年に向けた地域の実情にそぐわない場合もあり,調整会議や分科会では,より弾力的な対応が必要となる.

対談

第7次医療計画が病院に迫る選択

著者: 今村知明 ,   松田晋哉

ページ範囲:P.481 - P.486

2018(平成30)年の医療・介護同時改定を目前に控え,地域医療計画の策定が進められている.
地域医療計画と地域医療構想との整合性をどうするか,急性期以降の医療の充実や在宅医療の推進は.病院経営に与える影響を探る.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・31

社会福祉法人 聖隷福祉事業団 聖隷浜松病院

著者: 宇田淳

ページ範囲:P.490 - P.495

■はじめに
 急性期医療や周産期医療に力を入れている聖隷浜松病院は,病床数750床,職員数約2,000人を擁する静岡県西部医療圏の急性期基幹病院である(図1).診療科は62科(標榜科35科)に及び,救命救急センター,総合周産期母子医療センター,地域がん診療連携拠点病院などの施設認定を受けている.高度急性期医療を中心に,総合診療内科などの地域に根ざした診療も行っている.また診療体系の特色として脳卒中センター・循環器センター・腎センターなどの複数科横断的な体制や,NST(栄養サポートチーム)・RST(呼吸サポートチーム)・緩和ケアチーム・臨床研究管理センターなどの組織横断的なサポート体制も整っている.救急や手術症例も豊富で,超急性期疾患から慢性疾患,頻度の高い症例から稀な症例まで質の高い医療を提供している.
 2016年8月,第4期増築計画が,医局管理棟も含めて竣工した.2006年より検討され,完成まで実に10年をかけた壮大な計画である.延床面積約7万m2,建築面積約1.2万m2という大規模病院の医療活動をさまざまな工夫により止めることなく工事を進めてきた.
 この計画期間中,医療の質の向上を目指し2012年7月に日本医療機能評価機構の4回目となる病院機能評価Ver.6の審査を受け認定されただけでなく,世界標準の「医療の質と患者安全の継続的な改善」を目的として2012年11月にはJCI(国際的医療機能評価機関)の認証を国内では5番目,関東地区以外では初めて取得した.さらに,2015年には,更新審査を受審し合格している.
 本稿では,「聖隷浜松病院が自院のあるべき姿を追求し,さまざまな面から将来を見据えた取り組みを行い,地域の中で選ばれ続ける病院」をコンセプトとする第4期増築計画を中心に紹介する.

医療と法の潮流を読む・2

医薬分業を越えて 病院-保険薬局協働の時代へ

著者: 十万佐知子 ,   宇都木伸 ,   三木知博

ページ範囲:P.538 - P.543

■医薬分業の目的は患者安全
 「医薬分業」の考え方は,実は明治時代から存在した.しかしそれは,戦前戦後を通じて─特に,GHQ(連合国最高司令官司令部)の強大な権力をもってしても─定着することはなかった.医薬分業元年と呼ばれている1974(昭和49)年1),厚生省(現厚生労働省.以下,厚労省)が処方箋料を大幅に引き上げたことにより,その当時1%に満たなかった院外処方箋受取率(分業率)は徐々に伸び始めた2).2016年,約40年かけてついに全国平均が70%を超え3),「量」的には医薬分業をほぼ達成する状況になった.
 ここで,医薬分業の「質」が問われる時代が本格的に到来したのである.

事例から探る地域医療再生のカギ・16

兵庫県立柏原病院の医療再生(後編)

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.544 - P.549

何が問題だったのか
①止まらない医師退職
 「小児科を守る会」の活動で全国的に有名になった兵庫県立柏原病院であるが,小児科以外の医師の退職は止まらなかった.特に減少が著しかったのが内科で,2004年に13人在籍した医師が2009年には5人に減少する.内科医のいない病院では十分な診療ができないという理由で他科の医師も引き揚げが起きる.脳神経外科,皮膚科,泌尿器科,眼科,耳鼻咽喉科,麻酔科の常勤医が不在となり,医師5人体制であった整形外科は,一時期常勤医師が不在となる(その後1名を雇用).2004年に44人在籍していた常勤医師数は,2008年には19人にまで減少する.
 医師数の減少により病院の提供する医療も縮小する.夜間も含め365日受け入れてきた午後5時以降の診察時間外の内科救急は,原則二次救急輪番制の当番日である水曜のみ(土,日曜も当番日のみ)となった.心臓カテーテル治療が必要となる心筋梗塞などの患者の受け入れもできなくなった.脳神経外科も,医師退職により脳卒中や頭部外傷の患者の受け入れができなくなる.医師の大量退職により,病院の入院患者数は大幅に減少する.図1は,常勤医師数と1日平均入院患者数の推移を示すグラフであるが,患者数は2002年度の298人から2008年度には73人と約1/4の水準に落ち込む.

事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・4

公益財団法人 湯浅報恩会 寿泉堂綜合病院—再開発計画における病院の移転新築

著者: 関悠希

ページ範囲:P.551 - P.555

 今回は人口33万人を擁する福島県郡山市にある急性期病院,公益財団法人湯浅報恩会 寿泉堂綜合病院(以下,同院)を取り上げる.同院の特徴は,その立地と設置形態にある.新幹線など4つの路線が停車する郡山駅から徒歩5分,24階建てのタワービルの地下1階〜地上11階に同院は入居している.12〜24階は住居エリアだ.昨今,マンションと医療モールとの一体型はよく見られるようになってきたが,急性期病院とマンションの一体型は全国でもまだ珍しい.
 マンション一体型の構想は同院の発案であり,その目的の一つには地域の活性化があった.近年CCRC(Continuing Care Retirement Community)やコンパクトシティが話題になる中,駅前のマンション一体型といった形で移転新築を行うことになったきっかけから,地権者との調整などの準備段階を経て,完成までの経緯を時系列で追うことで,病院主導の地域づくりについてヒントを得たい.

病院勤務者のためのDPCデータ解析入門(番外編)・1【新連載】

—病院経営陣とのコミュニケーションのためのレポート作成(1)—DPCデータの加工

著者: 本野勝己 ,   村上玄樹

ページ範囲:P.556 - P.560

■はじめに
 本誌2016年4月号〜2017年3月号に連載していた「病院勤務者のためのDPCデータ解析入門」は,Microsoft Excel,Microsoft Access(以下,Access),Qlik Senceなどのソフトを用いたDPCデータの分析手法などについて学んできた.その番外編として,今回と次回にわたって,以前に予告していた「病院経営陣とのコミュニケーションのためのレポート作成」について紹介する.具体的には,病院経営陣に伝える内容の例として,診療報酬算定の収入部分についての月報を作成する.

特別記事

地域医療連携推進法人—制度の概要と山形県酒田市における設立準備に至る経緯

著者: 栗谷義樹

ページ範囲:P.532 - P.536

 急激に進む地方の過疎化・高齢化の現場では,病院経営環境もそれに並行して激変の予兆が出てきており,医療提供体制はこの数年以内の早急な構造改革を迫られている.地方の医療を支える立場から,今般の医療法改正で創設された地域医療連携推進法人について,当地域の取り組み状況を述べる.

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Book Review 健康格差社会への処方箋

著者: 五十嵐隆

ページ範囲:P.537 - P.537

Book Review がん診療レジデントマニュアル 第7版

著者: 西田俊朗

ページ範囲:P.550 - P.550

Back Number

ページ範囲:P.562 - P.562

Information

ページ範囲:P.563 - P.563

次号予告

ページ範囲:P.566 - P.566

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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