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連載 医療と法の潮流を読む・3
なぜ診療ガイドラインが裁判に用いられるのか
著者: 小谷昌子1 宇都木伸2 三木知博3
所属機関: 1帝京大学法学部 2東海大学 3武庫川女子大学薬学部
ページ範囲:P.641 - P.645
文献購入ページに移動医師や医療機関が患者から医療過誤があったとして損害賠償を求められ,訴訟となったとき,診療ガイドラインを根拠として医師の過失が肯定される例が近年みられる.これに対して,診療ガイドラインは個々の患者に適用できない場合があったり,内容が古くなってしまっているガイドラインも存在したりする,場合によってはガイドライン間で矛盾もみられるのが現実なのに,従わないからといって法的責任を負わされるのは不当だという声がしばしば聞こえてくる.また,医師をはじめとした医療スタッフがガイドラインと異なる処置をすることについて医療機関としてはどのように対処すればよいのかといった戸惑いもあるように思われる.
診療ガイドラインは,「科学的根拠に基づき,系統的な手法により作成された推奨を含む文書」「患者と医療者を支援する目的で作成されており,臨床現場における意思決定の際に判定材料の一つとして利用することができ」るものと定義・説明注1される文書であり,医師の裁量を制限するものでも,その指針に従い医療を実施する法的義務を医療従事者に課す目的で作成されるものでもないとされる注2.
それではなぜ,種々の診療ガイドラインが訴訟で参照されることになるのだろうか.今回は,訴訟における法の論理について解説してみたい.
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