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医療事故当事者をサポートするために病院ができること—公正な文化の醸成に向けて
著者: 大磯義一郎1 井上真智子23
所属機関: 1国立大学法人浜松医科大学医学部医療法学 2浜松医科大学地域家庭医療学講座 3静岡家庭医養成プログラム
ページ範囲:P.49 - P.52
文献購入ページに移動医療安全の推進は,近年の医療界における最重要課題である.医療事故に対する考え方は,1999年に米国立科学アカデミー医学研究所が“To err is human”を発表した1)ことを契機にパラダイムシフトが起きた.すなわち,かつては医療事故の原因は,医療事故当事者個人の不注意や技術的な未熟さであると考えられていた.そのため,再発防止策は,当事者となった個人に対し,処罰や再教育をすることと考えられていた.しかし,当たり前のことではあるが,個人処罰を繰り返したところで医療現場の安全性の向上は得られるはずもなかった.その結果,現在では,医療事故の原因はシステムの脆弱性により一定の確率で発生するものと考えられるようになり,再発防止策としては,人は間違えることを前提に,人が間違えたとしても第三者に損害が発生しないようシステムの安全性を高めることと考えられるようになった(図1).
そして,この医療安全におけるパラダイムシフトは,医療事故当事者に対する捉え方を大きく変えることとなった.すなわち,かつては,医療事故当事者は「被疑者」として取り扱われていたが,現在では,システムの脆弱性を明らかにした存在であり,他の誰もが経験しうることに遭遇したにすぎないと考えられるようになった.しかし,わが国では,いまだに個人に責任を負わせる風潮が根強く残っており,医療事故当事者は罰せられるべき罪人であるとする誤った姿勢で医療事故が取り扱われることが,しばしば見受けられる.その結果,わが国の医療安全の推進が大きく阻害されている.
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