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文献詳細

雑誌文献

病院77巻1号

2018年01月発行

文献概要

連載 医療と法の潮流を読む・8

人生の最終段階でどこまで医療を提供するか—安楽死・尊厳死をめぐる法の動向

著者: 福山好典1 宇都木伸2 三木知博3

所属機関: 1姫路獨協大学人間社会学群現代法律学類 2東海大学 3武庫川女子大学薬学部

ページ範囲:P.76 - P.80

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終末期医療に刑事司法を介入させないためのルールづくりの必要性
 終末期にある患者が耐え難い苦痛を訴えるとき,医療者はどうすればそれを緩和できるかを考えてきた.また,回復の見込みがないまま人工呼吸器につながれている終末期患者を前にして,医療者はどうすることがその患者のためになるか,医療を中止する方がよいのではないかと思い悩んできた.現在この問いは,超高齢社会の到来を背景に,これまで老衰と位置づけられてきた人々にどこまで濃厚な医療を提供するかという問題にまで広がりを見せている.医療者はそれらの患者やその家族と話し合い悩みながら,医療の方針を決めていかなければならない.こうした中で,医療者が患者のためを思ってしたこと(あるいはしなかったこと)が,患者の余命を短縮したとして刑事司法の介入(捜査・訴追・処罰)を受けるなら,医療者には大きな負荷がかかることになり,ひいては患者のためのよりよい終末期医療の実現にも暗雲が立ち込めることになろう.ここにおいて,医療者は看取りの過程で,安楽死や尊厳死と呼ばれるものが法的に問題となるのはどのような場合かという問いに直面することになる.終末期医療のルールづくりは,そうした医療者の負荷を軽減し,患者のためのよりよい終末期医療を実現しようとする取り組みにほかならない.もっとも,「暗い灰色とやや明るい灰色との間に切れ目を入れる作業」1)のように,それは一筋縄ではいかないのである.本稿では,このような問題意識のもと,安楽死,尊厳死をめぐる法の動向として,これまでの裁判例や立法提案,ガイドラインの動向を振り返りながら,そこから見えてくる課題を示し,併せて,その解決の方向性を模索したい.

参考文献

1)井田良:終末期医療と刑法.ジュリスト1339:39,2007
2)町野朔:生と死,そして法律学.p296,信山社,2014
3)樋口範雄:終末期医療と法.医療と社会25:32,2015
4)終末期医療に関する意識調査等検討会:人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書.p88,2014
5)山本紘之:治療中止における手続履践の刑法的意義.高橋則夫,只木誠,田中利幸,他:長井圓先生古稀記念 刑事法学の未来.p259,信山社,2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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