icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院77巻10号

2018年10月発行

雑誌目次

特集 病院マネジメント職に求められるもの

巻頭言

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.769 - P.769

 病院経営をめぐる環境が激変する中で,病院マネジメント(事務)職の能力向上は,病院生き残りのための最重要課題の一つである.病院マネジメント職の能力向上に何が必要か.病院マネジメント職については,病院機能の拡大に対応して,経営企画,総務,秘書,経理,人事,広報,医事,情報,調達,管財など組織分化が進んできている.さらに,地域連携や医師事務作業補助など,多職種との連携が不可欠な病院マネジメント職の業務が拡大している.
 しかし,医療現場に入ってみると,病院マネジメント職に対して期待される能力に,職員が追いついていないことも多いように感じる.高い技術と職務意識を持った優秀な医師や看護師は多数存在する.それらの優秀な医師や看護師を養成するための研修システムは,わが国において長い時間をかけて確立されてきた.病院を業界として見るならば,医師や看護師などの専門職のほとんどは医療業界で仕事を行い,病院は人材の最大の受け入れ先であった.したがって,病院を中心とした医師・看護師などの医療職の人材養成(典型は大学病院)は,わが国の医療の浮沈に影響する最重要事項でもあり,最優先されてきた.

人工知能(AI)を用いたヒューマンリソース・マネジメント能力

著者: 高橋泰

ページ範囲:P.770 - P.774

●人口減少と働き方改革により,医療現場も「生産性向上」が求められる時代になった.
●生産性向上に向けて人工知能による「忙しさの予測」と「働き方の最適化」が注目されている.
●人工知能を用いた「ヒューマンリソース・マネジメント能力」を身に着けることが,これからの病院マネジメント職に求められるようになるだろう.

人口減少時代における病院マネジメント職の採用と育成のあり方

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.775 - P.780

●病院マネジメント職は,コストセンターではなくプロフィットセンターとなった.
●病院マネジメントに必要な能力は,「社会人基礎力」である.
●対話の中で職員の意識が変わる.

【事例】

国立大学附属病院における人材育成

著者: 小西竹生

ページ範囲:P.781 - P.783

●国立大学附属病院には,社会・医療環境の急激な変化に対応できる人材や,高度医療・臨床研究支援業務など新しい業務領域に対応可能な人材が求められている.
●また,地域における最後の砦としての安定的な経営を維持するマネジメント能力も必須となっている.
●これらを踏まえて,将来を見据えた戦略的に人材を育成する研修システムについて紹介する.

三法人共同事業「病院経営管理職養成講座」による病院経営管理職育成の試み

著者: 車田絵里子 ,   坪茂典

ページ範囲:P.784 - P.786

●愛仁会,生長会,淀川キリスト教病院は,2001年から病院経営管理職養成講座(経営塾)を三法人合同で開催している.プログラム開発,講師・受講生派遣,実地研修など,三法人相互交流方式によって運営しているものである.
●受講期間は6〜7カ月であり,受講生は管理職に必要な知識と技術を習得する.経営塾は組織内外の他者と交わる機会であり,人的ネットワーク形成の場としても有用である.
●2017年度時点における経営塾修了生総数は215名であり,現在その多くが管理職として医療経営の現場で活躍している.

日本医療経営機構の医療経営人材育成プログラム—幹部の経営力強化と経営企画スタッフの育成

著者: 今中雄一

ページ範囲:P.787 - P.789

●戦略的な経営企画が一層重要となってきている現在,その推進を担うのは,経営企画力を備えたスタッフである.単なるビジネス人材ではなく,医療の専門職としての使命感と倫理観を持つ経営企画人材が育つ基盤づくりが必要である.
●経営幹部にとっても,経営企画スタッフにとっても,経営力や経営企画力の強化には,多くの実事例から体験的に学ぶことが重要である.筆者らは,計4年間の経済産業省委託事業を通じ医療経営ケース教材を多数創り上げてライブラリを構築し,制度・政策の流れに応じて更新,新規追加を行い育成に活用している.

病院図書室に期待される事務職への学術的支援

著者: 佐藤正惠

ページ範囲:P.790 - P.794

●本稿では,地域包括ケアシステム時代の地域医療支援病院における図書室の概要と,資料の電子化に伴う司書の新たな役割について述べる.さらに千葉県済生会習志野病院図書室が実施する事務職向けの学術的支援の事例を報告する.
●情報専門職である司書が関わることで,院内の学術的環境が整備され,より優秀な人材の獲得や,職員の教育に効果が期待される.

組織を越えて病院マネジメント職を育てる—全国連携実務者ネットワークの取り組みと花立セミナーの軌跡

著者: 木佐貫篤

ページ範囲:P.795 - P.797

●全国連携実務者ネットワークおよび各地の連携実務者ネットワークが,医療連携実務者のスキルアップと交流に果たした役割は大きい.
●合宿形式の事務職員向け研修会である花立セミナーは,内容に加え講師と参加者の交流が深まる場を提供することで,参加者のスキルアップとモチベーション向上につながると評価されてきた.
●多くの志ある事務職員が組織を越えて集まり,現場ニーズに応える研修会を実践することは,病院マネジメント職育成において重要な役割を果たしてきたと考えられる.

対談

病院マネジメント職が医療を変える

著者: 久保田巧 ,   伊関友伸

ページ範囲:P.751 - P.756

事務職は病院マネジメント職として,医療を変える可能性がある—.
病院という組織の中で,事務職はどうあるべきか.
若手オピニオンリーダーの一人,久保田氏に聞く.

研究

複数主治医制による,病院勤務医の労働時間,仕事満足度およびバーンアウトへの効果の検討:前向き横断研究

著者: 竹村知容 ,   嶋田雅俊 ,   片岡裕貴 ,   伊木れい佳 ,   平位知之

ページ範囲:P.806 - P.811

要旨
【目的】複数主治医制による,病院勤務医の勤務時間と仕事満足度への効果を検討すること.
【方法】2017年4〜5月の間に,単一の大規模市中病院で複数主治医制を行っている呼吸器内科,腎臓内科と,行っていない神経内科,糖尿病・内分泌内科の医師を対象に前向き横断研究を行った.主要アウトカムは,①1カ月当たりの超過勤務時間,②仕事満足度,③バーンアウトの有無である.
【結果】複数主治医制を行っている科といない科で対象者はそれぞれ20人,15人であった.平均超過勤務時間はそれぞれ52.5時間,65.2時間であった(p=0.26),多変量解析では有意差が見られた(95%信頼区間-46.6 to -0.7,p=0.04).仕事満足度,バーンアウトに有意差は見られなかった.
【結論】複数主治医制による仕事満足度とバーンアウトの関連は認められなかったが,超過勤務時間は減少する可能性が示唆された.

連載 Graph

助かるはずの命を助ける「劇的救命」の追求—八戸市立市民病院

ページ範囲:P.757 - P.759

 青森県の八戸市立市民病院救命救急センター.現院長の今 明秀 氏は2004年にたった1人の救急専従医として同センター長(兼臨床研修センター長)に着任し,全国にその名を轟かせる有名病院へと育て上げた.

アーキテクチャー×マネジメント・46

一般財団法人竹田健康財団 竹田綜合病院

著者: 佃悠

ページ範囲:P.760 - P.765

■病院の紹介
 福島県会津地方の地域医療を牽引する竹田綜合病院は,昭和3(1928)年会津若松市大和町に開業した.昭和10(1935)年には現在地の山鹿町に移転し,昭和25(1950)年に総合病院として認可されている.今回の新病院建設前には,東北大学筧和夫教室と蔵王設計事務所により設計された本館[昭和50(1975)年竣工]をはじめ,昭和32(1957)〜56(1981)年に建設された12棟の建物が稼働していた.しかし,施設の老朽化と狭隘化が目立つとともに,近年は耐震性能の向上,地域医療支援病院としての医療の高度化への対応,療養環境の快適性などが求められており,病院の建て替えを進めることになった.

ケースレポート 地域医療構想と民間病院・25

慢性期医療の在り方を改めて考える

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.799 - P.804

■はじめに:地域医療構想と慢性期医療
 人口の高齢化は傷病構造を大きく変える.筆者らが報告しているように,すでに介護保険を利用している高齢者から多くの脳梗塞や大腿骨近位部骨折,肺炎などの急性期症例が発生している1).このことは急性期,回復期,慢性期という単純な区分で,現在の傷病構造を記述することが難しくなっていることを示している.また,筆者らは医療提供のパスについても,介護福祉施設に入所している高齢者の多くは,外来を除けば一般病床への入院以外はあまり医療を利用していないことも報告している2).すなわち超高齢社会においては,介護も含めて慢性期の医療の在り方が大きな課題となるのである.
 他方で,筆者もその策定に関わった地域医療構想においては,慢性期の病床について医療区分1の70%を病床以外でケアし,また療養病床の入院受療率の都道府県格差を縮小するという前提で推計を行った.この推計自体はベースのところで現状の性年齢階級別・傷病別の入院受療率が将来も続くとして,それに人口推計を掛け合わせる方法で行ったものである.その意味で甘い推計になっている部分がある.全体では112万〜116万床になるという推計になっているが,他方で仮に今の入院受療率を前提とすると2025年に152万床必要になるという推計値も出している.仮に,現在稼働している病床が128万床程度だとすると約24万床不足することになる.そして上記の増加分のほとんどは医療区分1相当の高齢患者であるが,果たしてこれだけの数の医療区分1の高齢患者を病床以外で診ることができるのかが今後の重要な検討課題となる.
 現在,各地で行われている地域医療構想調整会議では,主に急性期,回復期の病床の在り方の議論が中心になっていると聞く.地域によっては急性期,回復期の病床数の在り方をめぐって対立のようなものが生じている地域もあるらしい.筆者の個人的な見立てではあるが,各施設が自施設の患者の状況を時系列で冷静に分析することで,急性期と回復期を合わせた一般病床数は自然に落ち着いていくだろう.他方で,慢性期に関してはその在り方を計画的に考えないと,地域医療の現場に大きな混乱が生じる可能性がある.単純に地域医療構想で推計された数字を達成することを目的にしてしまうと,政策を誤ってしまう.
 本稿では,次回以降の慢性期医療の具体的事例を紹介する導入として,地域医療構想策定に際して提供されているデータを基に各地域で慢性期医療の在り方を考えるための視点について論考する.

「働き方改革」時代の労務管理・5

「宿日直許可」で賃金が1/3になる!?

著者: 越本幸彦 ,   山崎祥光

ページ範囲:P.812 - P.815

■宿日直許可とは
 連載第1回で記述した通り,「労働時間」とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であり注1,例えば,宿直の際に仮眠中の時間があっても,「労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである」とされ注2,実労働が発生していなくても,指示に従い,業務への即応が求められる場合には仮眠時間も労働時間と判断されることになる.
 そのため,宿日直の中で,軽微な業務であっても,労働からの解放が保障されていると言えなければ,それは労働時間であり,(仮眠時間も含めて)日勤時間帯と同じ賃金が発生し,宿直時間が時間外労働や深夜労働に該当する部分は,所定の割増賃金を支払わなければならない.

多文化社会NIPPONの医療・13

「どうしても日本で受診したい」人の増加

著者: 堀成美

ページ範囲:P.816 - P.817

 海外から日本に医療を受けにくる「医療ツーリズム」「インバウンド医療」が実際に何件あるのか,把握できない状況が続いている.2011年に新設された「医療滞在ビザ」の取得には時間や費用がかかるため,これを回避して観光や親類訪問のための短期滞在のビザで来日し,日本の医療機関を受診する人たちがいるためである.
 「親(や祖父母)ががんと診断されたので,日本でよりよい治療を受けさせてあげたい」との相談が増える背景には,自国にはない治療の選択肢(承認薬の差)への期待以外にも,「医療の技術が高く,医師や看護師の対応が丁寧で公平だ」といった日本の医療への高い評価がある.

赤ふん坊やの地域ケア最前線!—病院と地域のかかわりを学ぶ旅・[23]

石川県能美市

著者: 仲井培雄

ページ範囲:P.818 - P.821

 石川県能美市では,大人も子どももお年寄りも障がいのある方も,みんなが共に生きることを目指して,さまざまな医療・福祉サービスを一体的に提供し,地域に溶け込んでいる施設があるんだ! 連載第23回目の今回は,地元に根付く医療・福祉グループの代表として活躍する,医療法人社団和楽仁の仲井培雄先生にお話を聞きました!

--------------------

目次

ページ範囲:P.766 - P.767

Book Review 薬剤師レジデントマニュアル第2版

著者: 石井伊都子

ページ範囲:P.823 - P.823

Back Number

ページ範囲:P.824 - P.824

Information

ページ範囲:P.825 - P.825

次号予告

ページ範囲:P.828 - P.828

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?