icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院77巻12号

2018年12月発行

雑誌目次

特集 検証 平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定

巻頭言

著者: 神野正博

ページ範囲:P.927 - P.927

 平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定は,惑星直列とも言われたトリプル改定,トリプル計画策定であった.特に,今後の人口構成の変化による疾病構造の変化に対応し,地域医療構想,地域包括ケアを下支えするといった目的も示された,時代の大きなうねりの中で節目となる改定だったかもしれない.
 本特集では,診療報酬改定,介護報酬改定ともに,今回の改定を担当し,現在は他部署に転任した行政官の方々から,改定に込めた貴重な生の思いを紹介いただいた.そういった意味で,できることならば,読者には診療報酬改定に関しては冒頭の迫井正深・前医療課長と私の対談,中谷祐貴子・前医療課長補佐の論文,そして介護報酬改定に関しては鈴木健彦・前老健課長の論文を先にお読みいただくことをお勧めしたい.彼らが,多くの汗を流しながら実現しようとした方向性を読み取るべきだと考える.

医療経済・政策学の視点から平成30年度同時改定を読む

著者: 二木立

ページ範囲:P.928 - P.933

●2018年度診療報酬・介護報酬同時改定で注目すべきは以下の4点である.①7対1病棟と10対1病棟の「再編・統合」,②200床未満の中小病院の地域包括ケアへの参入の促進,③医療機関の「複合体」化の奨励,④療養病床の介護医療院への転換の強力な誘導.
●介護医療院の創設は医療者と厚生労働省との信頼関係の回復に大きく寄与する.

同時改定下における医療機関でのビジョンと価値の高いサービスの実現には何が重要か

著者: 荒井耕

ページ範囲:P.934 - P.938

●政策変化の中で,自医療機関としてのビジョンや費用対効果の高いサービスをいかに実現するかは,各機関での適切な経営管理にかかっている.
●機能分化と連携の推進強化という改定の狙いを踏まえ,自施設の強み・弱みと置かれた地域環境の分析に基づいて提供機能を選択し,自施設の「特色出し」をする必要があり,その実現のための戦略を迅速かつ確実に遂行するために,バランスト・スコアカードなどの管理手法が必要となる.
●今同時改定により,医療から介護までの諸機能を分担する各種の施設事業間の連携統合管理が今まで以上に重要となる.このため,中期事業計画やサービス価値企画などの管理手法を,連携統合を促進するように活用することが重要となる.

平成30年度診療報酬改定で目指したもの

著者: 中谷祐貴子

ページ範囲:P.939 - P.946

●平成30年度診療報酬改定の主な項目の概要とその目的および留意点などを解説した.

平成30年度介護報酬改定で目指したもの

著者: 鈴木健彦

ページ範囲:P.947 - P.951

●今回の改定は,「地域包括ケアの推進」等の4つの柱を立てるとともに,医療と介護の連携を重視した.
●例えば,入・退院時,看取り期において医療・介護サービスが連携・連続して提供されるように,診療報酬・介護報酬が連携した改定を行った.
●介護医療院については,新しい「長期療養・生活施設」として位置づけられたことから,各種報酬設定を行うとともに,療養病床などから転換しやすいように配慮した.

同時改定で医療・介護連携が進んだか—外来医療・入院医療と介護

著者: 江澤和彦

ページ範囲:P.952 - P.959

●平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定は,医療・介護連携改定の様相を呈し,「2040年」のセカンドゴールを目指した改定であった.
●住まいと生活を医療が支える新たなモデルとして介護医療院が創設された.事業者が理念と役割を踏まえ,介護医療院のあるべき姿へ向かって継続的に取り組むことが重要である.
●医療・介護連携から住民連携による地域包括ケアシステムの構築の重要性が今後益々高まる.

【病院種別影響】

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会—平成30年度病院経営定期調査(中間集計結果)について

著者: 病院団体合同調査ワーキンググループ

ページ範囲:P.960 - P.967

●日本病院会,全日本病院協会および日本医療法人協会の3団体は,従来,各団体で個別に実施してきた改定影響度調査を,平成30年度より「病院経営定期調査」として合同実施した.本稿では,その中間集計結果(速報)の概要を報告する.
●中間集計結果では,前年同月比較で診療単価は,入院・外来ともに2%超の単価増であったが,延べ患者数が減少し,診療収益は,入院が増収,外来は減収,入院+外来診療収益で増収であった.医業損益を見ると,医業利益で赤字拡大,経常利益は医業外収益により赤字額がわずかに縮小したが,依然50%を超える病院が赤字であり,病院経営の厳しい状況は続いている.

日本精神科病院協会—精神科病院からみた平成30年度改定

著者: 大村重成

ページ範囲:P.968 - P.973

●平成30年度診療報酬改定を精神科医療の立場から評価した.
●主に認知症対策,在宅医療の推進,精神保健福祉法改正への対応,精神科救急医療についての見直しが図られた.
●今回の改定により今後の精神医療は少なからず影響を受けると思われた.

回復期リハビリテーション病棟協会

著者: 岡本隆嗣

ページ範囲:P.974 - P.978

●前回(平成28年度)の診療報酬改定で導入された実績指数の基準がさらに引き上げられ,入院料が6段階になった.回復期リハ病棟では,より一層効果的・効率的なリハが求められている.
●今回(平成30年度)の診療報酬改定の柱は,実績指数に基づく入院基本料の再編成,栄養管理の推進,退院後フォロー体制の構築,である.
●今後,入院プロセスの質を評価するため,第三者評価の導入が望まれる.

地域包括ケア病棟協会

著者: 仲井培雄

ページ範囲:P.979 - P.985

●2018年度診療報酬改定では,地域医療構想と地域包括ケアシステムの実現に向けて,地域包括ケア病棟に関するさまざまな仕掛けが用意された.地域包括ケア病棟協会では,平成30年度地域包括ケア病棟の機能などに関する調査を実施して,その影響を検証した.
●地域包括ケア病棟を有する病院は,“急性期ケアミックス(CM)型”,“ポストアキュート(PA)連携型”,“地域密着型”の3つの病院機能に分類することができ,調査対象施設の概ね5割,1.5割,3.5割を占めた.
●“地域密着型”と“PA連携型”は,200床未満の病院が9割前後を占め,新設の地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料1・3[以下,入院料(管理料)1・3]を届出済み・予定ありの施設が7.5割を超えていた.“急性期CM型”は,200床以上の病院が4割を占め,自院からのPAが多いため,入院料(管理料)1・3の届出済み・予定ありが半数を下回った.
●200床未満の施設は入院料(管理料)1・3で評価されたが,200床以上の施設は評価軸が存在せず,地域包括ケア病棟の質の低下が懸念される.

日本慢性期医療協会

著者: 武久洋三

ページ範囲:P.986 - P.992

●患者の病気を治して早く帰すことで地域からの評価だけでなく,診療報酬としての評価につながるかもしれない.
●今後もアウトカム重視の流れは加速する.
●療養病床であっても「慢性期治療病棟」しか認められなくなる.

対談

2025年以降を見据えた診療報酬改定を評価する

著者: 迫井正深 ,   神野正博

ページ範囲:P.909 - P.914

来たる2025年に向けて,医療・介護提供体制を見直す実質上最後の機会となった平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定.
2025年以降の日本の姿を見据えたとき,病院には何が求められるか.
改定を主導した迫井正深氏に聞く.

連載 Graph

地域に開かれた病院のオープンホスピタル—倉敷中央病院

ページ範囲:P.915 - P.917

 夏休み最後の土曜日に「倉中オープンホスピタル2018」が開催された.
 倉敷中央病院のオープンホスピタルは「地域の小中学生をターゲットに,病院の仕事を体験したり施設を見学したりする機会を設け,地域に開かれた病院としてアピールしたい」(同院広報室室長・稲田健太氏),「医療職に興味をもって職業選択の一つにしてもらいたい」(同院人材開発課課長・沖本美紀氏)という思いから始まった.昨年は初回にもかかわらず予想以上の来場者を迎えて嬉しい悲鳴を上げたという.

アーキテクチャー×マネジメント・48

総合病院 南生協病院

著者: 河合慎介

ページ範囲:P.918 - P.923

■はじめに
 南生協病院(愛知県名古屋市)は2010年に新築移転した.地域住民を巻き込んだ独自の検討プロセスや病院運営が話題となり,本誌1〜3)をはじめとした雑誌4〜5)掲載,新聞掲載,テレビ放映,ラジオ放送など多くのメディアに取り上げられた.またその取り組みがドキュメンタリー映画化もされた.そこで本稿では改めて建築と病院運営と地域住民の関わりを考察したい.

ケースレポート 地域医療構想と民間病院・26

医療法人大誠会 内田病院——ポストアキュートを担う医療介護複合体による地域活性化のモデルケース

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.993 - P.999

■はじめに
 大誠会・内田病院は群馬県沼田市にある一般病床49床(障害者病棟37床,地域包括ケア病棟12床),回復期リハビリテーション病棟50床からなるケアミックス病院である1).標榜科目は内科・老年内科・小児科・肛門外科・外科・消化器内科・循環器内科・呼吸器内科・皮膚科・リハビリテーション科・麻酔科で,外来機能としては内科・リハビリテーション科を中心としたプライマリケアを提供している.人を中心とする医療(パーソン・センタード・ケア)を基本理念とする同病院は,縛らない医療など認知症ケアの分野で高い評価を受けている施設であり,群馬県認知症疾患医療センターの指定も受けている.筆者が同病院に注目したのは,こうした認知症ケアの評価の高さもあるが,それ以上に大誠会の地域に対して積極的に関わろうとするその姿勢に関心を持ったからである.
 そこで,本稿ではこうした大誠会・内田病院の取り組みについて,「医療介護複合体による街づくり」という視点から紹介してみたい.

「働き方改革」時代の労務管理・7

懲戒処分—「その解雇,本当に大丈夫?」

著者: 越本幸彦 ,   岡田祐輝

ページ範囲:P.1000 - P.1003

■懲戒処分は自由にできない
 医療現場は,重篤な負傷者や病気を発症した者,容態が急変した患者,常時看護または安静を要する要注意患者など,今まさに生命身体が危険に晒されている患者への適正な医療提供などが行われる場でもあり,日々,瞬時の判断やチーム医療による多職種連携が求められるなど,一つのまたは一人の判断ミスや過誤によって重篤な結果を招きかねず,精神的にも肉体的にも極めて緊張度が高い職場といえる.
 そのような中,患者や同僚とのトラブルが多い,コミュニケーションが円滑にいかない,スキルが足りない,よくミスを犯すなどといった医療従事者がいた場合,病院経営者の中には,「適正な医療提供や患者の安全確保のため」という思いが先に立ち,そのような目的のためには懲戒解雇も当然正当性が認められる,との考えに至る人も少なくない.

多文化社会NIPPONの医療・15

病院の定期訓練シナリオに「外国人対応」を入れよう

著者: 堀成美

ページ範囲:P.1004 - P.1005

 今年は地震や台風の影響を受ける地域が多く,「日本語がわからない外国人が困っている」との報道が続いている.そして,困っている外国人の対応に困っている人たちもいる.短期・長期に滞在する外国人に対して非常時にどのように対応するのかは医療機関にとっても課題である.非常時の混乱を最小限にするために,医療機関や行政ができる工夫を紹介したい.

赤ふん坊やの地域ケア最前線!—病院と地域のかかわりを学ぶ旅・[24]【最終回】

福井県高浜町

著者: 海透優太

ページ範囲:P.1006 - P.1009

 福井県高浜町では,大きな総合病院ではなく,地方の小病院ながら,積極的に学生・研修医の教育に取り組んでいる病院があるんだ! 連載最終回となる今回は,地域にアツい想いを持ち,教育というツールを利用して,後進の育成のみならず院内のチームビルディングや診療の質改善まで取り組む,JCHO若狭高浜病院の海透優太先生にお話を聞きました!

--------------------

目次

ページ範囲:P.924 - P.925

Back Number

ページ範囲:P.1010 - P.1010

Information

ページ範囲:P.1011 - P.1011

次号予告

ページ範囲:P.1014 - P.1014

「病院」第77巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?