icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院77巻7号

2018年07月発行

雑誌目次

特集 これからの地域医療連携の形—地域医療連携推進法人とアライアンス

巻頭言

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.541 - P.541

 医療機関の機能分化と連携は国が一貫して進めようとしている施策である.しかもその連携は,社会の高齢化を反映して介護や日常生活支援,住まいまで広がっている.同じく国が実現を目指している地域包括ケア体制を確立するためにも地域医療連携の推進が不可欠になっているのである.
 本特集の佐藤美幸論文では政策担当者の立場から,地域医療連携推進法人制度導入の目的とその期待される役割を説明している.その設置は必須ではないとしながらも,地域医療へのメリット,特にサービス提供体制の総合性と効率性,そして安定性を向上させる効果に対する期待が述べられている.

地域医療連携推進法人の位置づけ—地域の複合的なニーズに応えるための新しいアライアンスの形として

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.542 - P.546

●高齢化の進行は医療・介護・福祉の総合的提供体制を要求する.
●こうした要望に応えるために,種々の形のアライアンスが各地域で形成されることになる.
●適切なアライアンス形成のために,地域医療構想調整会議の役割が重要になる.

地域医療連携推進法人制度導入の目的および期待する役割について

著者: 佐藤美幸

ページ範囲:P.547 - P.552

●地域医療連携推進法人制度は,医療機関相互間の機能の分担及び業務の連携を推進し,地域医療構想を達成するための一つの選択肢として創設したものである.同制度は,医療機関相互の競争よりも協調を進め,地域において質が高く効率的な医療提供体制を確保することをその目的としている.
●地域医療連携推進法人制度は,各参加法人がそれぞれの法人格を保ったまま参加し,いわばアライアンスを組むものである.
●地域医療連携推進法人制度は,必ず設立しなければならないものではないが,同制度を利用することで効率的な機能分担および業務連携が期待できる場合は活用できるよう厚生労働省として制度の周知に取り組んでいる.

地域医療連携推進法人 日本海ヘルスケアネット設立—目的・期待される効果・解決すべき課題

著者: 佐藤俊男

ページ範囲:P.553 - P.558

●地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネットが設立された.発端は日本海総合病院が中心となって始めた5法人の勉強会であった.
●現段階の参加は地区薬剤師会,歯科医師会も含めた9法人に増えている.地域を挙げて地域包括ケアシステムの構築を推進しようと,多岐にわたる共同事業が検討されている.
●地域の中で医療・介護・福祉・生活も含めた支援・連携機能をどう構築していくのか,医療資源の確保・交流・育成に大きな期待が寄せられている.

済生会熊本病院が進めるアライアンス—多施設連携モデルの有効性

著者: 中尾浩一

ページ範囲:P.559 - P.563

●「アライアンス」は病院機能分化が進み,各施設の得意とする分野が深化する中で,患者中心の医療を地域で実現する方略の一つである.
●データに基づく適正なタイミングでの転院を支援し,安全で質の高い地域完結型医療を提供する.ポスト・アキュート連携のみならず,サブ・アキュートを担う医療機関との連携や,地域における医療人育成活動の基盤ともなる.
●法人間の合併や権利の移転を目指すものではなく,医療機関相互の尊重に基づく活動であって,両者の関係はフラットである.

地域医療連携推進法人の課題—鍵は「非営利性の堅持」と「競争から協調へ」

著者: 西澤寛俊

ページ範囲:P.564 - P.568

●地域医療連携推進法人は,地域医療構想の実現に向けて誕生した非営利法人である.
●地域医療は競争から協調に転換を求められる.
●地域医療連携推進法人は,中小医療法人の活路を開く新たなスキームである.

地域医療連携推進法人の設立・認定の基礎知識

著者: 石井孝宜

ページ範囲:P.569 - P.573

●本稿を『地域医療連携推進法人の設立・認定の基礎知識』と題して,民間がこの制度を活用することをイメージして地域医療連携推進法人の認定申請に関する情報整理を行った.
●先行事例が少ない現状において,認定申請を行う場合に依拠すべき法令・通知等について整理を行った.
●認定申請書の具体的内容の確認と実務の留意点について解説した.
●設立・認定段階から留意すべき地域医療連携推進法人の会計・税務・監査についても,しっかり検討する必要がある.

対談

地域の医療・介護を充実させる連携

著者: 星長清隆 ,   松田晋哉

ページ範囲:P.523 - P.528

大学病院が地域の医療機関や介護施設を巻き込んで設立したことで注目を集める地域医療連携推進法人「尾三会」.
その責任者である星長清隆氏に,設立の背景と目的,今後の展開を伺う.

連載 Graph

患者に安らぎを提供するホスピタルアート—独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター

ページ範囲:P.529 - P.531

 四国こどもとおとなの医療センターは,香川小児病院と善通寺病院が統合して2013年に開設された.設計段階からアートを病院全体に取り入れ,建物の内外が温もりあるアートで彩られている.その取り組みを牽引するのが,中川義信院長とホスピタルアートディレクターの森合音氏だ.
 中川院長は香川小児病院長時代から,子どもたちの療養環境を改善するためにさまざまな試みを行ってきた.例えば,重症心身障害病棟の患者の作品を病棟の廊下に展示したり,患児の緊張を和らげるため看護師の制服をキャラクター柄にしたり,病棟の壁を師長の好きな色に塗らせたり.「旧病院は統合で建て替えが決まっていたので,いろいろ“実験”できました」.地元新聞の取材で旧病院を訪れた森氏も,こうした取り組みの話を聞いて中川院長と意気投合し,同病院のアートディレクションに携わるようになった.

アーキテクチャー×マネジメント・43

社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック

著者: 境野健太郎

ページ範囲:P.532 - P.537

■設立の経緯
 社会医療法人敬愛会「ちばなクリニック」は,2002年11月,沖縄市知花にある「中頭病院」の隣に,中頭病院の外来診療部門を分離するかたちで開業した.同法人が運営する中頭病院は,1982年の開院以来,沖縄本島中部地区の中核病院(326床)として地域の総合医療を担ってきた.もともと医療機関が少ない地域であり,増加する患者に対応するために2度の増築を行ったが,外来患者数が1,000名を超え,待合スペースの不足や障害者用トイレなど要求される設備の設置,また,2000年の医療法改正への対応を目的に外来部門を分離して,ちばなクリニックの開設が行われた.
 隣接して2つの医療機関を運営するに当たり,病院とクリニックの機能分化が図られた.中頭病院が入院・救急・紹介患者の受け入れといった地域支援病院としての役割を担う一方,ちばなクリニックは地域のかかりつけ医として,いわゆる飛び込み受診や中頭病院退院後の患者のフォロー,健診や予防の観点からの役割を担うこととした.クリニックに各診療科を構えて開設することで,中頭病院をかかりつけとしていた患者も安心して治療を継続することができた.

事例から探る地域医療再生のカギ・22

松戸市立病院の建て替え問題

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.576 - P.581

 千葉県松戸市は,東京都に隣接する人口約48万の都市.都心から20km圏に位置し,江戸時代から水戸街道の宿場町として栄え,近年は都内のベッドタウンとして人口が増加している.
 松戸市は2つの自治体病院を運営している.一つは市の中央部の上本郷地区にある松戸市立病院である.松戸市立病院は1950年設立で,病床数613床(移転新築前),3次救急救命センターを持つ千葉県東葛地域の拠点病院である.小児・周産期医療に強く,2010年の時点で小児科医が24名在籍(後期研修医含む),小児の年間外来患者総数26,112名,年間新入院患者数2,504名,時間外入院数は908名(入院の36.3%)に達し,千葉県東葛北部の子どもの命の砦と言える病院であった.

事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・10

医療法人社団十善会 野瀬病院—地域の信頼回復と人事制度の整備による病院再建

著者: 関悠希

ページ範囲:P.582 - P.585

 神戸市にある野瀬病院(以下,同院)は病床利用率89.1%(2016年度実績)と高い稼働注1を誇り,近年では介護事業も展開するなど,地域のニーズに積極的に応えている病院である.また,人材確保が困難な昨今において,看護師も募集をかければすぐ集まる状況にあり,運営は順調である.
 しかし,現院長の野瀬範久氏が2003年に着任した当時は,現在と大きく状況が異なっていた.同院は1931年に創設された歴史ある病院だが,それゆえに旧態依然とした医療を提供している面が大きく,患者は離れ,地域の医療機関からも有力な連携先としてみなされていなかった.また,職員の深刻な離職にも直面するなど,病院として正常な運営ができているとは言い難かった.

「働き方改革」時代の労務管理・2

あなたの病院にもいる?「名ばかり管理監督者」

著者: 越本幸彦

ページ範囲:P.588 - P.592

■管理職には残業代を支払わなくてよい!?
 病院経営者の方であれば,「管理職には残業代を支払わなくてよい」と一度は耳にしたことがあるのではないだろうか.実際に,病院経営の実務においても,部長職など一定の職位以上にある従業員や医師は全員管理職として扱い,残業代は支払わない(基本給や役職手当などの手当に含まれている)という運用も多く見受けられるところである.
 他方で,ご記憶のある方も多いと思うが,ある県立病院では,労働基準監督署の立入調査の結果,管理職として時間外労働手当等が支払われていなかった部長職以上の医師について,遡って2年分(賃金請求権の時効期間分)の割増賃金を支払うよう是正勧告で命じられたのみならず,残業代を規定より少なく算定したとして,同病院を運営する県病院事業庁と幹部らが書類送検された.

多文化社会NIPPONの医療・10

訪日客の未収金は誰が負担すべきか

著者: 堀成美

ページ範囲:P.594 - P.595

 外国人患者受け入れ体制整備を始めると,すぐに湧いてくる疑問がある.「これは果たして個々の病院の責任でやることなのだろうか」と.そもそも外国人が地域に増えているのも,訪日客が増えているのも,国の政策や自治体の観光客誘致が影響しているのだから,医療を提供する際に必要な通訳の確保や未収金対応について国や自治体の支援があってしかるべきなのではないか.今回は「日本の健康保険証のない外国人患者」に真摯に医療を提供した病院が泣き寝入りしないための対策を紹介する.

--------------------

目次

ページ範囲:P.538 - P.539

Book Review 医療管理—病院のあり方を原点からひもとく

著者: 河北博文

ページ範囲:P.575 - P.575

Book Review ポケット医学英和辞典 第3版

著者: 福澤利江子

ページ範囲:P.587 - P.587

Back Number

ページ範囲:P.596 - P.596

Information

ページ範囲:P.597 - P.597

次号予告

ページ範囲:P.600 - P.600

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?