病院77巻9号

2018年09月発行

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・23

富山県朝日町の医療再生とまちづくり

著者： 伊関友伸¹

所属機関： ¹城西大学経営学部マネジメント総合学科

ページ範囲：P.728 - P.733

■何が問題だったのか
①自治体消滅に直面する町
　富山県朝日町は，富山県の東端，新潟県との県境に位置する町である．「日本の渚百選」にも選ばれている日本海のヒスイ海岸から標高3,000m級の北アルプス朝日岳・白馬岳に至る自然豊かな地域である．
　江戸時代以降，親不知・子不知という難所を控えた越中の東端という地理的条件から，関所が設けられ宿場町として栄えてきた．歴史のある町であるが，地方の自治体の典型で，大幅な人口減少に直面している．1989年に18,396人であった人口は，2016年に11,936人となった（富山県人口移動調査）．人口減少の原因は，出生率の低さと若年層を中心とした人口流出である．2008〜2012年の朝日町の合計特殊出生率^注1は1.35と富山県内でも最も低かった^注2．また，2015年の町の人口の社会減は-94人で，人口の0.7％が町外に流出していた^注3．特に，20〜24歳の層が，進学や就職により町外に流出していた．このままでは朝日町は，人口減により消滅することが確実であった．