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連載 ケースレポート 地域医療構想と民間病院・28
一般財団法人みちのく愛隣協会 東八幡平病院—深刻な少子高齢化の進む過疎地の地域包括ケアを支える中小民間病院の役割
著者: 松田晋哉1
所属機関: 1産業医科大学公衆衛生学教室
ページ範囲:P.288 - P.294
文献購入ページに移動■はじめに
本稿で紹介する東八幡平病院は,岩手県の県庁所在地である盛岡市の北西部に位置する八幡平市にある.八幡平市は2005(平成17)年に西根町,松尾村,安代町の3町合併により誕生した.松尾村には,かつて日本で最大の硫黄生産量を誇った松尾鉱山があった.しかしながら,産業構造の変化と海外からの輸入の増加,石油精製工場において脱硫装置の設置が義務付けられたことによる副産物としての硫黄生産の増加などにより,需要量が激減し,1969(昭和44)年に倒産することになる.一時期1万人以上の人口を抱えた鉱山地域の人口は激減した.その後,北部の安比高原のリゾート開発などに取り組むが,経営難から経営権が海外資本に売却されるなど,厳しい状況が続いている.
図1は八幡平市の人口の状況を見たものである.2018年現在で2万5千人の人口は今後さらに減少し,2040年には1万5千人程度になると予想される.その原因はコホート分析の結果からも分かるように,少子化,若者層の流出,そして死亡の増加である.2015年の65歳以上人口割合は36.2%,75歳以降人口割合21.1%であるが,これが2040年にはそれぞれ52.8%,35.9%になると予想されている.
図2は上記の人口推移を前提としたときの傷病構造の変化を見たものである.外来はいずれの傷病においてもすでに減少局面にあり,また入院も肺炎,骨折,脳血管障害,慢性心不全が2030年くらいまで現状と同レベルであるが,その後は減少局面に入る.その他の傷病についてはすでに減少傾向が続いている.要介護高齢者の数も2025年くらいまでは現状と同レベルであるが,その後急速に減少する(図3).
市内の医療機関の状況は,国民健康保険西根病院(内科・外科・小児科),東八幡平病院,診療所8カ所(うち2カ所は国保診療所),歯科診療所9カ所となっている.
人口減少と高齢化が進む地域で,地域医療を担う病院をいかに維持していくかは非常に重要な地域政策である.こうした地域においては限られた人的資源で効率的にサービス提供を行うことが求められるが,それは必ずしも国の医療・介護政策と整合性のあるものではない.特にこうした地域で地域医療を担う病院が民間病院である場合,経営の自立性も求められるため,一般財政などからの補助が入る公立病院とは異なり,社会経済状況,医療・介護政策の状況を踏まえながら,より厳しいマネジメント姿勢が必要となる.
本稿ではこうした問題意識に基づいて,厳しい社会経済環境の中で八幡平市において地域リハビリテーションの実現を目指している東八幡平病院の取り組みを紹介する.
本稿で紹介する東八幡平病院は,岩手県の県庁所在地である盛岡市の北西部に位置する八幡平市にある.八幡平市は2005(平成17)年に西根町,松尾村,安代町の3町合併により誕生した.松尾村には,かつて日本で最大の硫黄生産量を誇った松尾鉱山があった.しかしながら,産業構造の変化と海外からの輸入の増加,石油精製工場において脱硫装置の設置が義務付けられたことによる副産物としての硫黄生産の増加などにより,需要量が激減し,1969(昭和44)年に倒産することになる.一時期1万人以上の人口を抱えた鉱山地域の人口は激減した.その後,北部の安比高原のリゾート開発などに取り組むが,経営難から経営権が海外資本に売却されるなど,厳しい状況が続いている.
図1は八幡平市の人口の状況を見たものである.2018年現在で2万5千人の人口は今後さらに減少し,2040年には1万5千人程度になると予想される.その原因はコホート分析の結果からも分かるように,少子化,若者層の流出,そして死亡の増加である.2015年の65歳以上人口割合は36.2%,75歳以降人口割合21.1%であるが,これが2040年にはそれぞれ52.8%,35.9%になると予想されている.
図2は上記の人口推移を前提としたときの傷病構造の変化を見たものである.外来はいずれの傷病においてもすでに減少局面にあり,また入院も肺炎,骨折,脳血管障害,慢性心不全が2030年くらいまで現状と同レベルであるが,その後は減少局面に入る.その他の傷病についてはすでに減少傾向が続いている.要介護高齢者の数も2025年くらいまでは現状と同レベルであるが,その後急速に減少する(図3).
市内の医療機関の状況は,国民健康保険西根病院(内科・外科・小児科),東八幡平病院,診療所8カ所(うち2カ所は国保診療所),歯科診療所9カ所となっている.
人口減少と高齢化が進む地域で,地域医療を担う病院をいかに維持していくかは非常に重要な地域政策である.こうした地域においては限られた人的資源で効率的にサービス提供を行うことが求められるが,それは必ずしも国の医療・介護政策と整合性のあるものではない.特にこうした地域で地域医療を担う病院が民間病院である場合,経営の自立性も求められるため,一般財政などからの補助が入る公立病院とは異なり,社会経済状況,医療・介護政策の状況を踏まえながら,より厳しいマネジメント姿勢が必要となる.
本稿ではこうした問題意識に基づいて,厳しい社会経済環境の中で八幡平市において地域リハビリテーションの実現を目指している東八幡平病院の取り組みを紹介する.
参考文献
1)みちのく愛隣協会東八幡平病院ホームページ http://mairin.jp/hospital/(2018年12月14日確認)
2)松田晋哉:医療法人博仁会志村大宮病院—地域リハビリテーションのネットワーク構築を通したまちづくりへの積極的参画と地域共生型CCRCの提案.病院75:211-218,2016
3)松田晋哉:西日本のある慢性期病院の事例—制度改革に翻弄された20年を振り返って.病院78:136-140,2018
4)岩手県ホームページ http://www.pref.iwate.jp/seisaku/suishin/35731/040267.html(2018年12月30日確認)
5)松田晋哉:欧州医療制度改革から何を学ぶか—超高齢社会日本への示唆.勁草書房,2017
6)松田晋哉:社会医療法人財団 董仙会 恵寿総合病院—施設品質から地域品質へ:変化の先頭に立つ経営.病院75:536-543,2016
7)松田晋哉:地域医療構想調整会議で使用されるデータの解釈.病院74:590-597,2015
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