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文献詳細

雑誌文献

病院78巻7号

2019年07月発行

文献概要

特別記事

終末期医療の法と倫理—許されること,許されないこと,その根拠

著者: 一家綱邦1

所属機関: 1国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 生命倫理・医事法研究部 医事法研究室

ページ範囲:P.508 - P.513

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■はじめに
 2018年3月に厚生労働省が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(以下,プロセスGL)を改訂した1).プロセスGLは,最初2007年に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」という名称で策定され,2015年に現在の名称に改められ,現在に至る.本稿は,プロセスGLの内容(特に最新版に含まれる内容)を解説することを目的の一つにする.
 厚生労働省による「平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」によれば,病院でのプロセスGLの利用状況は5割を超え2),その数字は5年前よりもかなりの改善状況にはある3).だが,筆者が医療者と話をする限り,存在を知っていても活用できなかったという声を耳にすることは少なくない.その原因の一つには,プロセスGLが置かれたわが国の終末期医療をめぐる法の状況が分かりにくいこと,その中で法律ではないガイドラインなるものをどう扱ったらよいのかが分からないことにあるのではないか,と筆者は推測する.この問題に対応することが,本稿のもう一つの目的である.
 本稿は特段新規な知見を提示するものではなく,既に明らかになっていることを再構成して提示するに過ぎないが,これまで筆者が所属機関や研修・講演の場で医療者と話してきた経験からは,法の現状を正しく理解するだけでも終末期医療をより良いものにする,すなわち患者も医療者も望む終末期医療にできると考えている.

参考文献

1)厚生労働省:「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂について.2018 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html
2)厚生労働省:平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書.p122 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_h29.pdf
3)厚生労働省:平成24年度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書.p69 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000041847_3.pdf
4)横浜地裁平成7年3月28日判決.
5)横浜地裁平成17年3月25日判決.
6)最高裁平成21年12月7日決定.
7)福山好典:人生の最終段階でどこまで医療を提供するか—安楽死・尊厳死をめぐる法の動向.病院77:76-80(77頁参照),2018
8)一家綱邦:再考・病院内倫理委員会:本邦の現状と再生のための序論.生命倫理23:23-30,2013
9)井田良:再論・終末期医療と刑法.町野朔先生古稀記念:刑事法・医事法の新たな展開(下巻),p139,信山社,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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