icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院79巻10号

2020年10月発行

雑誌目次

対談

これからの重症度,医療・看護必要度

著者: 福井トシ子 ,   松田晋哉

ページ範囲:P.727 - P.732

看護必要度は,2006年に診療報酬に導入されて以降,改定ごとに見直しを重ね,現在は「重症度,医療・看護必要度」として利用されている.
しかし,現場からはその在り方に疑問が呈されている.
その成り立ちと経緯を紐解き,今後の方向性を問う.

特集 重症度,医療・看護必要度 見直しの方向性

巻頭言 フリーアクセス

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.743 - P.743

 高齢化の進展は,患者の病態像を複合化させる.医療と介護の複合化,急性期と急性期以後のケアニーズの複合化が,病床機能を問わず,いずれの病棟でも進行している.こうした患者のニーズの変化に対応して,看護サービスの経済的評価についても,構造や人員配置という外形的な基準のみから考えるのではなく,患者の状態像(看護必要度)の視点を加味して評価すべきであると考えられるようになった.このような視点から開発されたのが「重症度,医療・看護必要度」であった.
 しかし,本特集で秋山氏が指摘するように,2006年度診療報酬改定において,患者の重症度や看護の必要度を加味しないままに「7対1入院基本料」が新設され,その後の大混乱を招く結果となった.今回の新型コロナウイルス感染症への対応で顕在化したように,急性期の場合7対1以上の人的配置基準を必要とする病棟が存在する.秋山氏が解説している「看護必要度の実情に応じた病棟間・勤務帯間の看護師の適正な傾斜配置の方法論」は,この問題を考えるためのヒントをくれるものである.

「重症度,医療・看護必要度」の指標

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.744 - P.749

●「重症度,医療・看護必要度」は,わが国における看護マネジメントの重要なツールである.
●B項目については,急性期・回復期・慢性期医療および介護,入院(入所)・在宅を通じた共通尺度として活用が可能である.
●入力の負荷を軽減し,その利活用を促進するために,総合的なIT化が必要である.

「看護必要度」活用の課題

著者: 秋山智弥

ページ範囲:P.750 - P.754

●看護サービスは本質的に目に見えにくく,それだけに単体としての評価が難しい.
●しかし,看護サービスの質は医療のアウトカムを確実に左右する.
●看護の視点から看護必要度を評価・活用すれば,看護サービスは自ずとその輪郭を現す.

「重症度,医療・看護必要度」の課題と見直しの方向性

著者: 林田賢史

ページ範囲:P.756 - P.761

●現在,診療報酬で考慮すべき「急性期の入院患者」の把握方法について,既存の指標や諸外国の指標なども参考にしながら,より適切な評価手法を開発する研究が実施されている.
●その中では,中・長期的な入院に係る評価体系として,職員配置等の構造的な要素については施設基準にて評価した上で,①病床機能ごとの基礎的な評価,②医療内容の評価,③患者状態の評価,④成果(早期回復等)に応じた評価の4つの要素による評価体系のイメージ案が提案されている.

回復期リハビリテーション病棟における「重症度,医療・看護必要度」の活用と課題

著者: 宮井一郎

ページ範囲:P.762 - P.768

●2008年度診療報酬改定で,回復期リハビリテーション病棟入院料に係る質の評価のアウトカム指標として,重症度・看護必要度B項目から派生した日常生活機能評価が導入された.
●2012年度診療報酬改定でA項目が追加導入されたが,日常生活機能評価で重症度は十分に評価できると考えられ,2018年度診療報酬改定では削除されている.
●2020年度診療報酬改定で,日常生活機能評価に代わり,FIM総得点での評価が可能となった.

慢性期病院における「重症度,医療・看護必要度」の活用と課題—病期を問わない共通の評価指標の必要性

著者: 武久洋三

ページ範囲:P.769 - P.773

●「医療ニーズ」「介護ニーズ」の複合ニーズを抱えた患者が増え,「病院完結型医療」から「地域完結型医療」へ医療提供体制が大きく変化している.
●大学病院であろうと高度急性期病院であろうと,高齢患者が増加している中で,「基準介護」 「基準リハビリテーション」を取り入れ,寝たきり患者を減らす対策が必要である.
●そして,急性期から回復期,慢性期に至るまで,病期や病床種別に関係なく,患者評価は「重症度,医療・看護必要度」で統一し,病態評価と処置評価はDPCで統一すべきである.

特別記事

医師事務作業補助者のこれから—臨床支援士としての発展を目指して

著者: 矢口智子

ページ範囲:P.775 - P.779

■はじめに:医師事務作業補助者の誕生
 医師事務作業補助業務は,平成12(2000)年頃より,勤務医の負担軽減を図ることを目的に日本各地の病院で自主的な「医師の事務作業の負担軽減」の取り組みとして始まった(米国や英国では,その数十年前からメディカルアシスタントやメディカルセクレタリーが同様の業務を行っていた).まずは,医師が最も負担に感じていた「診断書等の代行作成」などの事務作業補助業務が普及した.その後,2008年度診療報酬改定において,勤務医の負担軽減を目的に「医師事務作業補助体制加算」(以下,加算)が創設されたことにより,全国へ急速に医師事務作業補助者の配置が拡大していった.診断書や診療記録の代行入力,データ登録などが主な業務とされた.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・70

加賀市医療センター

著者: 藤田衛 ,   宮本一平

ページ範囲:P.734 - P.739

■病院建て替えの背景
 「加賀市医療センター」は,石川県加賀市の2つの市立病院「加賀市民病院」と「山中温泉医療センター」の統合病院として平成28(2016)年4月に開院した1)
 統合前の旧病院の状況は,旧・加賀市民病院が,病床数226床(一般)・診療科16科・外来486人/日・常勤医師数28人,平均病床稼働率70%程度[平成26(2014)年度]となっており,旧・山中温泉医療センターが,病床数199床(一般159床・療養40床)・診療科10科・外来195人/日・常勤医師数9人,平均病床稼働率70%程度[平成26(2014)年度]となっていた.

ケースレポート 地域医療構想と病院・37

カナダ・ケベック州のJewish General Hospitalにおける家庭医の活動

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.781 - P.786

■はじめに
 医療制度の国際比較研究の結果として,強いプライマリケアシステムを有している国は,医療アウトカムが優れている上に,費用対効果が高いという知見が出されている1).その代表的な国の一つがカナダである.カナダではMedicareと総称される税金に基づく皆医療保障制度下で,家庭医を中心とした医療提供体制の整備が強化されている.
 少子高齢化の進むわが国では,多様な慢性疾患を持ち,介護や生活支援のニーズもある高齢者に対して,いかに効率的に質の高い総合的サービスを提供していくかが課題となっている.この総合性は診療領域の総合性に加えて,医療・介護・生活ケアの総合性やサービス間の連続性を要求する.例えば,認知症と糖尿病がある87歳の高齢女性が,自宅で転倒し股関節骨折を受傷してしまい,急性期病院の整形外科で股関節置換術を受けたとする.外科手術を受けるところまでは整形外科の患者であるが,術後は認知症と糖尿病に対応しながらリハビリテーションを行い,退院調整を行うことになるだろう.この時に病棟で主治医機能をもって患者の診療に当たるのは,ホスピタリストとしての総合医が適切である.済生会熊本病院では,こうした問題意識に基づいて,病院総合医が院内主治医として機能している2).本稿で説明するカナダ・ケベック州では,医療と社会サービスを総合的に提供する中核に家庭医が位置付けられており,家庭医が病院医療や高齢者施設における医療に体系的に組み込まれる仕組みとなっている.この取り組みは,わが国の今後の病院医療の在り方を考える上でも参考になると筆者は考えている.
 本稿では文献調査と訪問調査に基づき,カナダ・ケベック州のJewish General Hospitalにおける家庭医の活動を中心に紹介する.

感染症新時代—病院はどう生き抜くか・1【新連載】

旭中央病院・中村朗医師インタビュー(1)

著者: 堀成美 ,   中村朗

ページ範囲:P.788 - P.791

新しい感染症とその流行は,常に人類や社会にとって大きな脅威である.過去の歴史を振り返っても,地域の人口の1/3が失われた感染症の大流行事例もあり,当然のことながらその結果,社会経済も大きなダメージを受けている.2019年12月に中国の武漢で増加が把握された肺炎を引き起こしたウイルスは,2020年1月には遺伝子情報が世界で共有された.これまでにないスピードで検査・治療薬・ワクチンの開発が進められており,各地での経験は,査読前論文を含め,膨大な情報となって私たちの目の前に蓄積されている.日本での「物語」も多様だ.本連載では,このような経験知を共有すべく,地域特性の大きい感染症対策について,各地のリーダーの視点を紹介する.
第1・2回は,千葉県旭市にある旭中央病院の中村朗医師にお話を伺う.

病院で発生する「悩み」の解きほぐし方・6

患者の意思をどのように確認すればよいのでしょうか?—①人生の最終段階編

著者: 越後純子

ページ範囲:P.792 - P.794

Case
末期がんで入院している患者の意識レベルが低下してきました.同居している内縁の妻(内妻)によれば,患者は積極的な治療は望まないとのことで,緩和療法を受けながら過ごしていました.いよいよ最期が近づき,意思表示が十分にできない状況に陥った後に,10年以上音信不通だった前妻との間の娘が初めて来院し,家族でもない者の意向に従って積極的な治療をしないのはおかしいと苦情を述べ,可能な限り生命を長らえるように積極的な治療を行ってほしいと言って譲らず,病院スタッフは内妻と娘の板挟みになり,対応に苦慮しています.

医療現場の「働き方改革」医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・10

病院におけるダイバーシティ・マネジメント

著者: 福島通子 ,   山本悠子

ページ範囲:P.795 - P.799

 「多様性を活かして組織の力を高める」といった考え方が,ここ数年で急速に社会に浸透している.多様な働き方が「働き方改革」の推進に効果的に作用することが実証され始め,新聞の企業欄やビジネス誌などで取り組み事例を目にすることも増えてきた.次世代育成支援対策法,女性活躍推進法の整備,表彰制度「ダイバーシティ経営企業100選プライム」の創設といった政府の施策も後押しとなり,ダイバーシティ推進の潮流は,今後ますます勢いを増していくと思われる.
 今回は,働き方改革の一つの手段として,病院におけるダイバーシティ・マネジメントの好事例を参考に,「多様性を活かして組織の力を高め」,活性化させるためのマネジメントを考えてみたい.

--------------------

目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.740 - P.741

Back Number フリーアクセス

ページ範囲:P.801 - P.801

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.804 - P.804

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら