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文献詳細

雑誌文献

病院79巻10号

2020年10月発行

文献概要

連載 ケースレポート 地域医療構想と病院・37

カナダ・ケベック州のJewish General Hospitalにおける家庭医の活動

著者: 松田晋哉1

所属機関: 1産業医科大学公衆衛生学教室

ページ範囲:P.781 - P.786

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■はじめに
 医療制度の国際比較研究の結果として,強いプライマリケアシステムを有している国は,医療アウトカムが優れている上に,費用対効果が高いという知見が出されている1).その代表的な国の一つがカナダである.カナダではMedicareと総称される税金に基づく皆医療保障制度下で,家庭医を中心とした医療提供体制の整備が強化されている.
 少子高齢化の進むわが国では,多様な慢性疾患を持ち,介護や生活支援のニーズもある高齢者に対して,いかに効率的に質の高い総合的サービスを提供していくかが課題となっている.この総合性は診療領域の総合性に加えて,医療・介護・生活ケアの総合性やサービス間の連続性を要求する.例えば,認知症と糖尿病がある87歳の高齢女性が,自宅で転倒し股関節骨折を受傷してしまい,急性期病院の整形外科で股関節置換術を受けたとする.外科手術を受けるところまでは整形外科の患者であるが,術後は認知症と糖尿病に対応しながらリハビリテーションを行い,退院調整を行うことになるだろう.この時に病棟で主治医機能をもって患者の診療に当たるのは,ホスピタリストとしての総合医が適切である.済生会熊本病院では,こうした問題意識に基づいて,病院総合医が院内主治医として機能している2).本稿で説明するカナダ・ケベック州では,医療と社会サービスを総合的に提供する中核に家庭医が位置付けられており,家庭医が病院医療や高齢者施設における医療に体系的に組み込まれる仕組みとなっている.この取り組みは,わが国の今後の病院医療の在り方を考える上でも参考になると筆者は考えている.
 本稿では文献調査と訪問調査に基づき,カナダ・ケベック州のJewish General Hospitalにおける家庭医の活動を中心に紹介する.

参考文献

1)Starfield B, Shi L:Policy relevant determinants of health:an international perspective. Health Policy 60:201-218, 2002
2)園田幸生:医療マネジメントを行う病院総合医の育成—チーム医療の推進と働き方改革.病院78:740-745,2019
3)Government of Canada:Canada Health Act. https://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/c-6/(2020年7月9日閲覧)
4)La Régie de l'assurance maladie du Québec. http://www.ramq.gouv.qc.ca/fr/Pages/accueil.aspx(2020年7月9日閲覧)
5)INESSS https://www.inesss.qc.ca/(2020年7月9日閲覧)
6)Herzl Family Practice Centre https://www.mcgill.ca/familymed/teachingsites/fmu/smbdjgh(2020年7月9日閲覧)
7)Gouvernement du Quebec:Dossier Santé Quebec. https://www.quebec.ca/sante/vos-informations-de-sante/dossier-sante-quebec/(2020年7月9日閲覧)
8)Federation des Medecins Omnipraticiens du Quebec:Tout sur les AMP, Les activités médicales particulières https://www.fmoq.org/pratique/installation-en-pratique-informatisation/activites-medicales-particulieres/(2020年7月9日閲覧)
9)The Jewish General Hospital https://www.jgh.ca/(2020年7月9日閲覧)
10)吉岡充,村上正泰:高齢者医療難民—介護療養病床をなぜ潰すのか.PHP新書,2008
11)方波見康夫:生老病死を支える—地域ケアの新しい試み.岩波新書,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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