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雑誌目次

雑誌文献

病院79巻12号

2020年12月発行

雑誌目次

対談

2020年診療報酬改定が意味するもの

著者: 松本吉郎 ,   神野正博

ページ範囲:P.883 - P.888

コロナ禍中に行われた2020年診療報酬改定.
400床以上の大病院,200床未満の中小病院に今後求められる機能とは何か.
働き方改革やオンライン診療の方向性はどうか.
中医協で診療側委員として議論を尽くしてきた松本吉郎氏に,改定項目の見直しが意味するもの,中医協と診療報酬改定の在り方について伺う.

特集 2020年診療報酬改定から読む病院経営

巻頭言

著者: 神野正博

ページ範囲:P.899 - P.899

 2年ごとの診療報酬改定では,病院はその都度大きな変革に適応する.時には,重症度,医療・看護必要度のように2年前に変更した要件さえ,その本質的な効果を見ることもなく,変わってしまう項目さえ見受けられる.
 ところが,病院はさらに大きな変革に晒されることとなった.2020年4月の診療報酬改定実施前に,新型コロナウイルスのパンデミックが発生した.新型コロナウイルス感染者を受け入れた病院も,そうでない病院も,第一級の緊張状態を強いられつつ,採算を度外視して,患者・職員の安全のために新型コロナウイルス感染症対応機器・設備を整備し,PPE(個人防護具)の確保に奔走した.

診療報酬政策の意味と課題

著者: 遠藤久夫

ページ範囲:P.900 - P.904

●診療報酬改定には,医療費および医療内容のコントロール機能がある.
●診療報酬改定には,リアクティブ改定とプロアクティブ改定の2つのタイプがある.前者は現状に合わせて診療報酬を修正するケース,後者は新しい方針に沿って医療内容を変えていこうというケースである.
●診療報酬による医療のコントロールは政策目標通りになるとは限らない.次の4通りのケースが考えられる.効果が出過ぎる「オーバーシュート型」,反応が鈍い「笛吹けど踊らず型」,患者の受療行動の変化が効果を弱める「受療行動の変化による効果相殺型」,コントロールしても他の行為が変化して効果を弱める「交差弾力型」.
●今後の診療報酬政策で注目すべき視点は次の4つである.「外来医療の包括化はあるか」「診療報酬のアウトカム評価は拡大するか」「レセプトデータによる医療の透明化」「地域別の診療報酬の可能性」.

医療政策における診療報酬改定の位置づけ

著者: 鈴木康裕

ページ範囲:P.905 - P.910

●診療報酬は医療サービスの対価だが,その設定には政策的意味合いがある.
●補助金や規制と並んで,診療報酬はサービスの増減,質の向上などを誘導しうる.
●ただし,その特質を踏まえた上で,他の施策と組み合わせたり,さまざまな留意を行うことが必要だ.

令和2年度診療報酬改定で目指したもの

著者: 木下栄作

ページ範囲:P.911 - P.916

●今回の改定では,医療従事者の負担軽減,医師等の働き方改革の推進を重点項目として位置づけ,他の施策との連動に留意しつつ実施した.
●また,患者・国民にとって身近であって,安心・安全で質の高い医療の実現や,医療機能の分化・強化,連携と地域包括ケアシステムの推進といったこれまでの取組については,前回の診療報酬・介護報酬の同時改定において,大幅な見直しを行ったことも踏まえ,現場への影響なども考慮しながら対応した.
●効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上に資する評価などについても,改定項目として位置づけた.

働き方改革は診療報酬にいかに反映されたか

著者: 猪口雄二 ,   西本育夫

ページ範囲:P.917 - P.921

●2019年3月に医師の働き方改革についての議論が取りまとめられた.診療報酬改定以外においても諸施策の検討が行われており,遅くとも2024年度までに結論を得る必要がある.
●今回の改定では医療従事者の負担軽減,医師等の働き方改革の推進が重点課題と位置付けられ,医療機関全体でこれらの解消についての取り組みが求められている.
●今後の診療報酬改定においては人員配置偏重の評価体制から,効率重視の評価体制に変化すると考えられる.

診療報酬改定からみた地域連携と入退院支援の在り方

著者: 十河浩史

ページ範囲:P.922 - P.926

●地域連携の診療報酬は,院内外の多職種連携を促進させるために取り組む.
●入退院支援に関する診療報酬は,機能分化を進め新入院が増えなければ見合わない.
●機能分化により分散した情報を統合する仕組みが必要である.

【病院種別影響】2020年の評価と2022年の課題

日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会—新型コロナウイルス感染症の影響と2020年診療報酬改定から読む病院経営

著者: 島弘志

ページ範囲:P.927 - P.931

●日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の3団体は,平成30年度から行っている合同の病院経営定期調査は行わず,新型コロナウイルス感染拡大による病院経営の調査を行い,国(厚生労働省)に病院経営の危機を訴えた.
●新型コロナウイルス感染症の対応に対し,厚生労働省は,さまざまな診療報酬上の措置を打ち出してきたが,元々半数以上の病院の経営が赤字になっている状況に加え,受療行動の変容は,大きな痛手となっているために,診療報酬の本質である患者を診療した対価としての効果は定かではない.

日本精神科病院協会—精神科病院からみた2020年の評価と今後の課題

著者: 大村重成

ページ範囲:P.932 - P.935

●令和2年度改定を精神科病院の立場から評価した.
●地域移行・地域生活支援,急性期入院治療に係る項目を中心とした改定となった.
●精神科病院においても,新型コロナウイルスによる影響は甚大である.

回復期リハビリテーション病棟協会—回復期リハビリテーション病棟の課題と今後について

著者: 三橋尚志

ページ範囲:P.936 - P.939

●回復期リハビリテーション病棟では,2016年度診療報酬改定から,FIM利得と在棟日数による実績指数を指標とするアウトカム評価が導入され,2018年度改定からは入院料にも導入されている.
●2020年度改定では,実績指数が引き上げられ,さらに短期間での退院が求められるようになった.また,入院料1では常勤専任の管理栄養士の配置が規定された.
●新型コロナウイルス感染拡大の影響により,回復期リハ病棟においても,急性期病院から時間差をもって稼働率の低下がみられている.

地域包括ケア病棟協会—診療報酬改定と新型コロナウイルス感染症の影響

著者: 仲井培雄

ページ範囲:P.940 - P.945

●200床未満の地域包括ケア病棟入院料・地域包括ケア入院医療管理料1・3を届け出る病院には,リハビリテーションの院内・地域内(訪問リハビリテーション)における充実が求められ,地域包括ケアシステムに寄り添う仕組みが整った.
●200床以上の地域包括ケア病棟入院料・地域包括ケア入院医療管理料2・4を届け出る病院には,リハビリテーションの充実(特にDPC対象病院)と地域医療構想に寄り添う役割が求められた.
●新型コロナウイルス感染症の流行により,多くの地域包括ケア病棟を有する病院の経営が悪化しているため,その感染対策を積極的に行う病院に寄り添う評価を要望している.

日本慢性期医療協会

著者: 武久洋三

ページ範囲:P.946 - P.949

●近年の診療報酬・介護報酬は,国民に有益な医療・介護を提供する医療機関・介護施設等に加算をつける方策で格差をつけようとしている.
●今後は医療機能のさらなる厳密化が進み,高度急性期機能に特化した「急性期」,地域急性期機能と地域包括ケア病棟機能を包括した「地域包括期」,そして慢性期治療病棟をはじめとする「慢性期」に分類されるだろう.

【コラム】2022年に積み残した課題

日本看護協会—医療・看護の質向上へのさらなる寄与/日本病院薬剤師会/日本理学療法士協会

著者: 吉川久美子 ,   川上純一 ,   佐々木嘉光

ページ範囲:P.950 - P.951

 医師等の働き方改革の推進への評価と課題について述べる.働き方改革に関する改定では,専従・専任要件の緩和,総合入院体制加算の施設基準に「特定行為研修を修了した看護師の複数名配置と活用による医師負担軽減」「院内助産・助産師外来の開設による医師負担軽減」が追加された.これは,医師の負担軽減のみならず,患者へのタイムリーな医療の提供や妊産婦への安心・安全を提供する上で効果的である.また,麻酔管理料Ⅱでの特定行為研修修了看護師の評価や救急搬送看護体制加算1の救急外来における専任の看護師の複数名配置の要件化は,患者への貢献が期待できる.
 看護職員夜間配置加算や急性期看護補助体制加算が充実したが,これは看護職の負担軽減に加え,患者への安全・安心な医療の提供,医療・看護の質の向上につながる.これらの改定がさらなる医療・看護の質向上に寄与すべく,日本看護協会では「特定行為研修を修了した認定看護師」の育成を推進していく.また,看護補助者の配置の充実は,看護職の負担軽減に寄与するが,看護補助者の採用が困難という課題がある.採用や就労継続は雇用条件が大きく関与することから,加算の活用を含め対応の検討が必要である.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・72

北見赤十字病院

著者: 渡延公

ページ範囲:P.890 - P.895

■はじめに
 北見赤十字病院の新病院本館の竣工は2014年12月である.続けて2015年6月に新北館が完成し,全体の完成(2015年12月)から5年を超えた(図1).新本館の竣工前2014年3月には北見赤十字病院オホーツクPETセンターを開設し,2016年4月には救命救急センターに救急ワークステーションを併設し,日勤帯でのドクターカーの運用を開始した.
 また,道立北見病院が2016年8月に北見赤十字病院の敷地を借りて移転新築で開院し,2018年度から10年間,北見赤十字病院が指定管理者となり,隣接した北見赤十字病院と道立北見病院との一体的運営を始めた.
 北見赤十字病院は三次医療圏であるオホーツク圏域の地方センター病院注1として,地域における中核的な病院と位置づけられている.オホーツク圏域は三次医療圏として岐阜県の面積を上回る全国9番目の広大な面積を有する一方,それを支える人的資源である医師数は少なく,慢性的な医師不足の状況が続いている.少子高齢化が進む中,人口は年々減少するが,高齢化が進むため入院患者数は2030年まで増加が見込まれる.
 北見赤十字病院の役割の一つは,オホーツク圏域の地域完結型の医療体系において,高度急性期・急性期医療の一端を担うことである.広大な地域医療の充実に向けて,病院運営・地域医療サービスとハードとしての建築がどのように関わっているかを報告したい.

ケースレポート 地域医療構想と病院・38

カナダ・ケベック州のMcGill大学病院における家庭医養成

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.952 - P.955

■はじめに
 人口の高齢化に伴って複数の慢性疾患を持った高齢患者が増加し,病院における急性期・回復期・慢性期の複合ニーズへの対応が先進諸国共通の課題となっている.こうしたニーズに応えるために,多くの国で総合医の育成が重視されるようになっている.また,その活動場所も診療所を中心とした外来から,病院医療に拡大してきている.しかしながら,入院医療にも対応できる総合医をどのように育てていくかについては,まだ多くの国で試行錯誤の状態にある.例えば,フランスの場合は,総合医を目指す医師を増やす目的で総合医を専門医課程の一つに位置付けるなどしているが1),研修課程は2年間で,1年間の病院での研修の後,地域の開業医の下で外来を中心とした指導を受ける形になっており,病院総合医として勤務するためには不十分である.ただし,フランスの場合,大学5年次・6年次のベッドサイド研修が,わが国の初期研修と同様の内容になっているため,卒業時点での臨床力はわが国に比べるとかなり高い注1
 わが国でも病院総合医の必要性に関する認識が近年高まっている.すでに病院総合医の育成に先進的に取り組んでいる済生会熊本病院や聖路加国際病院には,病院総合医を希望する若い医師が集まり始めている.筆者が医学生の頃から人気の高かった沖縄県立中部病院も,総合性の高い医師の養成を行っていることが若い医学生を引き付ける魅力の一つであった.
 本稿では前回2)に引き続き,総合医の養成課程の在り方として筆者が高く評価しているカナダ・ケベック州のMcGill大学病院における家庭医の養成課程について説明する.

感染症新時代—病院はどう生き抜くか・3

武蔵野中央病院・大西潤子看護部長インタビュー(1)

著者: 堀成美 ,   大西潤子

ページ範囲:P.956 - P.959

新型コロナウイルスに限らず,市中で感染症が流行すると,医療機関に必ず持ち込まれることになり,それをゼロにすることはできない.それでも,持ち込まれても拡大させないようにする有効な方法はある.それは,持ち込まれたことに気づいてから何とかする特別な方法ではなく,知らず知らずに持ち込まれたとしても広げない環境や予防の手技が実践されているかどうかにかかっている.
本連載第3・4回は,感染管理の専門スタッフがおらず,手指衛生やマスク着用といった感染対策への協力が難しい患者が多い精神科病棟で広がった新型コロナウイルス感染症の対策のリーダーとなった武蔵野中央病院・大西看護部長にお話を伺う.

病院で発生する「悩み」の解きほぐし方・8

ケアレスミスを繰り返す人への指導は,パワハラでしょうか?

著者: 越後純子

ページ範囲:P.960 - P.962

Case
1年目の研修医Aは,薬を処方する際に違う患者に処方したり,異なる患者から採血を行ったりするなど,ケアレスミスが目立っていました.指導医Bは,患者の誤認は重大な事故につながりかねないので,その都度,十分に患者氏名などの必要事項を確認するように指導していましたが,辟易していました.ある日,カンファレンスの終了後に医局員が沢山いるところで,Aが「血液型を間違って輸血したが,他のスタッフがすぐに気付いたため,問題はなかった」と悪びれずに同僚と話していたことに対して,Bは,患者の生命に危険が及びかねない事態を軽んじている態度に堪忍袋の緒が切れ,「患者を殺す気か,お前には医者を続ける資格はない!」と,語気を荒げてAを非難しました.Aは,その日以降,無断で出勤しなくなってしまいました.その1週間後,Aから抑うつ状態と病名が記載された診断書とともに,ハラスメント委員会への申し立て書が送られてきました.

医療現場の「働き方改革」医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・12【最終回】

人を育てる人事制度

著者: 福島通子 ,   古矢和義 ,   金子進

ページ範囲:P.963 - P.967

 医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させるために,どのように「働き方改革」を進めたらいいのか,さまざまな視点から検討してきたが,やはり,最終的には「人」にたどり着く.効率化を進め,ICTを活用しても,医療従事者の意識が変わらなければ効果は望めない.「人」という医療資源を最大限に活用するために何をすべきか.労働時間や制度の整備だけでは足りない.もう一つ,「人を育てる」という視点が必要ではないか.人材を育成することで得られる効率化もある.モチベーションが上がれば医療の質が向上する.今回は,モチベーションを高め,人を育てる人事制度について考えてみたい.

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目次

ページ範囲:P.896 - P.897

Back Number

ページ範囲:P.969 - P.969

次号予告

ページ範囲:P.972 - P.972

「病院」第79巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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