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雑誌目次

雑誌文献

病院79巻3号

2020年03月発行

雑誌目次

対談

病院建築は時代の変化にどう対応するか

著者: 筧淳夫 ,   伊関友伸

ページ範囲:P.177 - P.182

高齢化や人口減少など外部環境の変化に伴い,地域から期待される役割が変わり続ける病院.
大きな意思決定を伴う病院建築について,先を見据えてどのように考えていくべきか.
病院建築研究の第一人者・筧淳夫氏に伺う.

特集 病院建築の潮流

巻頭言

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.193 - P.193

 医療をめぐる環境が変わる中で病院建築のあり方も変化してきている.病院が,医療の高度・専門化,機能分化,地域連携など新しい課題に対応していくためには,病院建物に求められる機能も変化を迫られる.患者の療養環境に求められる水準も変化してきている.例えば,欧米と比較したわが国の病院建物の特徴として,病室の面積の狭さがある.わが国では多床室が中心であるが,世界的に見ると,米国建築ガイドラインでは病室は個室と決められ,アジアでもJCI認証を取得している病院は個室が主流である.個室は患者アメニティ確保,感染症リスク軽減,性別を問わずに入室可能など利点も多いことが理由となっている.
 また,わが国において喫緊の課題となっている地域医療構想に基づく病院の統合再編の動きは,病院建物の建て替えや改修を契機とすることが多い.建物が老朽化し,耐震性や医療提供上の問題などから建て替えを迫られている病院も少なくないからだ.

病院建築水準の動向—建築の質とコストを適正化するということ

著者: 中山茂樹

ページ範囲:P.194 - P.198

●平成時代の病院建築は,建設費縮減のゆえにその質を落としてしまったのではないか.
●病院建築の質を担保するためのコスト適正化が図られるべきである.
●病院機能と建築性能のバランスを示す建築ガイドラインの作成が急務である.

多様化する病院建築の建設プロセスごとの課題

著者: 福田昭一

ページ範囲:P.199 - P.204

●病院建築の建設プロセスとして事業着手から運営まで全体の流れを示す.各段階で発注者の意思決定が求められる.
●病院建築の建設に関わる,発注者・コンサルタント・設計者・施工者の関係と役割を示す.
●病院建築の建設は,移転新築・現地建て替え・増築・改修などの建築種別に分類される.建築種別によってどのような課題があるのかを理解する必要がある.
●病院建築の建設に関する発注方式は多様化しているが,それぞれの特徴を理解して発注する必要がある.

最近の医療・福祉施設の建築をめぐる状況

著者: 秦佑佳

ページ範囲:P.205 - P.210

●2011年度以降,医療施設の建築平米単価は上昇しており,病院類型別に見ると,療養型病院や精神科病院と比較して,多様な医療機能を必要とする一般病院の平米単価が高いことを裏付ける結果となった.
●医療施設の建築に限らず,建設業界では資材不足や価格上昇に加えて,建設業就業者の賃金水準もこの3年で上昇しており,施設整備を取り巻く環境は厳しい状況が続いている.
●建設費が上昇するなか,近年厳しさを増している医療経営において設備投資を行うに当たっては,現在の地域の医療需要を的確に捉えることに加え,今後自院が担うであろう医療機能を見通し,環境の変化にも対応できる構想・設計が求められている.

病院が参画する“まちづくり”—30年後の鹿児島の未来を明るく照らす“キ・ラ・メ・キ テラス”

著者: 谷浩志 ,   渡邊剛良 ,   齊藤祐仁

ページ範囲:P.211 - P.216

●病院の建て替えに際し,「キ・ラ・メ・キ テラス」という“まちづくり”への参画という手法を用いた,鹿児島市での具体的な実践事例と取り組みを紹介する.
●2病院(急性期病院,回復期・慢性期病院)が同時に新しい“まち”に新築移転することを機会に実現する「施設整備や運営連携」の考え方を紹介する.
●急性期病院での「早期回復のための急性期スタイル」,回復期・慢性期病院での「100日間を通して,優しく包まれる病院」をコンセプトとした各病院での取り組み事例を紹介する.

現地建て替えによる病院建築

著者: 長浦雅人

ページ範囲:P.218 - P.223

●医療を取り巻く環境が厳しさを増す中で,病院建物の「社会的寿命」に影響を及ぼす要求事項が多岐にわたり,老朽化以外にも,さまざまな理由により建て替えが計画されることとなる.
●現地建て替えでは,敷地内に建設スペースを確保することや,安全かつ合理的に工事期間を短縮し,工事費縮減や病床数を減らさない運営など,工事期間中も現在の経営状況を維持することが重要となる.
●現地建て替えの事例をタイプ別に紹介する.

再編統合自治体病院建設のコストアップ防止の工夫—茨城県西部メディカルセンターの例

著者: 柴田浩

ページ範囲:P.224 - P.228

●建設費高騰中や高止まり時期の病院建設は,さまざまな発注方法のメリット・デメリットを十分議論・検討し尽くしてから発注方法を決定する必要がある.
●ECI発注方式採用による病院建設は,病院関係者・設計者による事前準備と,技術提案から工事中,竣工までの病院関係者・設計者・施工者による使い勝手を含めたVE・CDの継続検討が重要である.
●病院建設を成功させるには,病院関係者・設計者・施工者など,関係者全員のベクトル共有がとても重要である.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・63

JA長野厚生連 浅間南麓こもろ医療センター

著者: 山下哲郎

ページ範囲:P.184 - P.188

■はじめに
 浅間南麓こもろ医療センターは,佐久病院(現・佐久総合病院)の小諸分院(34床)として開設され,その後,小諸厚生総合病院(320床)として承認され,規模を拡大してきた.しかし,老朽化と耐震性能の不適合,機能上の不便さが顕著となり,新しい敷地への移転新築することになる.その決断から2017年12月の新病院(浅間南麓こもろ医療センター.以下,こもろ医療センター)開院に至るまで,さまざまに紆余曲折を経るが,ここでは,人口減少を背景としたコンパクトシティ構想との関わりや,施設の複合化に伴って浮かび上がる病院計画の特徴を整理し,人口減少と高齢化が進む地域と関わり合う病院建築の今後のあり方について考えてみたい.

事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・20

社会医療法人 榮昌会 吉田病院—高齢社会の変化に立ち向かう脳神経外科専門病院

著者: 林和希

ページ範囲:P.229 - P.234

 吉田病院は,65年を超える歴史を持ち,脳卒中をはじめとした脳疾患の専門病院としての歴史は50年以上に及ぶ.脳疾患の治療の進歩とともに,地域における急性期の医療需要に応えてきた.また,病院には附属脳血管研究所を併設しており,論文執筆や学会での症例発表などの研究活動が盛んに行われている.
 近年,都市部においても高齢化は確実に進んでおり,専門病院であっても,認知症を合併するなど,さまざまな困難を抱えた急性期患者の増加に直面している.
 今回は,都市部の専門病院が直面する現状や急性期の専門病院が取るべき方向について紹介したい.

医療現場の「働き方改革」 医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・3

労働時間の適正把握と36協定

著者: 福島通子 ,   羽兼朋宏

ページ範囲:P.236 - P.240

■労働時間の適正把握
 前回は,今般の働き方改革に伴う医師の時間外労働の上限規制について解説した.上限規制に対応するためには労働時間の把握および管理が必須であるため,今回は,適正に労働時間を把握する方法を述べる.

遥かなる霞が関・3

GAFAはお辞儀をしない—医療の周辺のサービスはなぜこれほど低レベルのままなのか

著者: 佐藤敏信

ページ範囲:P.242 - P.245

■病院の語源は「もてなす」なのに
 2001年の冬,私はフランスのシャルル・ド・ゴール空港のターミナル2Cで成田空港行きの飛行機を待っていた.雨が降っていて,その雨がいつしか雪に変わろうとしていた.スポットが埋まっていたため,飛行機はいわゆる沖止めとなり,乗客はバスで飛行機に向かうことになった.そこに現れたバスを見て驚いた.普通のバスではなく,モバイルラウンジ*1というものだった.ターミナルに来ると,台車の部分に付いているマジックハンドのような機構が動いて車室部分を押し上げ,横付けして密着する構造になっていたのだ(写真1).乗客が乗り込むと,このマジックハンド部分が縮んで普通のバスの姿になり,そのまま飛行機まで走っていき,ドアに近づくと,また脚を伸ばして乗降口に密着するのだった.
 たったこれだけのことだが,日仏の差を感じた.日本では,沖止めになるとバスで,それも立ち客がぎゅうぎゅうになるほどに詰め込まれ「移送」され,その先も写真2のような屋根のないタラップを上って搭乗である.雨の日などは傘もさすことになり,さらに大変である*2.翻ってフランスでは,荷物を持っている旅行者を立たせたり,歩かせたり,いわんや階段を上らせるなどという発想はないのだ.

多文化社会NIPPONの医療 外国人患者受け入れの課題解決Q&A・30

感染管理の観点から進める外国人受診者受け入れ体制整備

著者: 堀成美

ページ範囲:P.246 - P.247

 2019年12月末に把握された中国・武漢での肺炎症例の集積の原因は,新しいコロナウイルスによるものであると2020年1月上旬に判明しました.コロナウイルスといえば,2002〜2003年に中国・シンガポール・香港などに広がったSARS,2012年にサウジアラビアなど中東で把握されたMERSを引き起こしたのと同じ種類のウイルスです.このようなアウトブレイクのニュースが流れると,医療機関の感染管理担当者が,受診問い合わせや来院時の対応を準備し始めますが,実は,対策は個別のウイルスごとに立てられるのではなく,「急性呼吸器症状のある患者にどのように対応するか」という軸で整理されます.検査を含めた診察が行われるまでは,原因が何か不明なためです.
 輸入感染症に対する体制整備としては,次の3点が重要です.

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目次

ページ範囲:P.190 - P.191

Back Number

ページ範囲:P.251 - P.251

次号予告

ページ範囲:P.254 - P.254

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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