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雑誌目次

雑誌文献

病院79巻5号

2020年05月発行

雑誌目次

対談

地域包括ケアにおける中小病院の役割

著者: 田中滋 ,   山田隆司

ページ範囲:P.325 - P.331

今後の超高齢社会で中小病院に期待されるのはどのような役割か,各地で模索が続けられている.
地域包括ケアシステムの始まりから説き起こし,高齢者を地域の資源としてどう活用するかを通して,地域包括ケアにおける中小病院への期待を語る.

特集 地域包括ケアで輝く病院

巻頭言

著者: 山田隆司

ページ範囲:P.339 - P.339

 医療界は年明け早々より新型コロナウイルス感染症対応で慌ただしい.時事刻々と変わる状況を見据え,終息後に予想される経済不況の中,限られたヒト・カネ・モノをどう活用し,それぞれの病院がどう生き延びるか,医療提供体制をどう維持するのか,予断を許さない状況だ.
 ただでさえ,進みゆく超高齢化,人口減少,医師不足,地域偏在といったさまざまな困難を抱えた状況の中で,いかに持続可能な医療・介護・福祉サービスを提供していくか,いかに最期まで安心して暮らし続けることができる地域を作り守っていくかが問われている.そんな中で今回の特集では「地域包括ケア」を取り上げている.

地域包括ケアの現状と病院の位置づけ

著者: 辻哲夫

ページ範囲:P.340 - P.345

●日本では今後2040年に向けて超高齢化と人口減少が進む中で地域包括ケアの実現を目指しており,それに対応して,医療は「治し支える医療」への歴史的な転換期を迎えている.
●地域包括ケアシステムは,コンパクトなまちづくりでもある.地域型の病院は,地区医師会およびかかりつけの診療所と連携し,コンパクトなまちづくりの基盤である医療介護のネットワークの拠点として,「治し支える医療」の実現に寄与してほしい.

地域包括ケアと中小病院の今後—多機能型地域病院としての役割

著者: 武冨章

ページ範囲:P.346 - P.349

●地域包括ケア病床を有する中小病院は,総合診療のマインドをもった医師が運営に参加することにより,多機能型地域病院として高齢社会に柔軟に対応できる.
●地域の中小病院は,地域住民と行政を巻き込んだ活動や多職種連携の拠点になることによって,地域包括ケアを推進する中心的存在となることができる.

地域包括ケアシステム構築に求められる病院と自治体それぞれの役割と連携

著者: 南眞司

ページ範囲:P.351 - P.356

●高齢化,少子・人口減少社会の富山県南砺市で,医療崩壊の危機に直面した.患者・家族のQOL向上を目指し,疾病・障害・生活課題の解決と支援体制を構築し克服した.
●独居・老老世帯増加に伴う家族介護力の低下を,介護人材育成による24時間型在宅介護の整備で補い,在宅医療との連携で在宅生活の限界点を引き上げた.
●地域で安全に最期まで暮らすための病院医療や在宅医療・介護連携の構築が,超高齢化と人口減少が進む地域住民の安心と幸せにまだ結び付いていない.地域包括ケアシステムの完成には,住民が支え合う温かいまちづくりが必要である.

人口減少が進む地域での公立病院の取り組み—保健・医療・介護・福祉の連携による包括的サービス提供の要として

著者: 小野剛

ページ範囲:P.357 - P.362

●高齢化と人口減少が進む地域では,中小公立病院は在宅・施設医療,医療・介護連携,多職種・多施設連携に積極的に関わり,地域における「ハブ」になるべきである.
●今後到来する「担い手不足」に備え,子どもから元気な高齢者まで地域全体がワンチームになって,それぞれの地域を支えていく仕組みを作ることが必要であり,「地域包括ケアマインド」を持った人材の育成が課題である.
●より良い地域包括ケアシステム構築のためには「連携」と「協働」が必要であり,生活の質(QOL)・人生の最終段階の質(QOD)・地域全体の質(QOC)の向上をもたらすために,中小公立病院が中心的役割を担うべきである.

地域包括ケアを見据えた公的病院の取り組み

著者: 郷秀人

ページ範囲:P.363 - P.368

●当院は地域の行政・医師会と協力して,地域包括ケアシステム構築の中心となって地域に貢献している.
●当院敷地内に誘致した地域包括ケア総合推進センターでは,市職員と医師会職員が常駐して業務に当たっている.
●医療・介護の支援を行う関係機関は,在宅で療養する住民の情報をICTによるネットワークで共有しながら包括的なケアを提供している.

生き残りをかけた民間病院としての取り組み—地域共生社会版Person Flow Managementを目指して

著者: 仲井培雄

ページ範囲:P.370 - P.375

●急性期や回復期,慢性期とそれぞれの病棟の運営から,地域包括ケア病棟を中心に病院全体の生産性と質向上に向けた運営に取り組んだ.
●地域包括ケアを実践するために,芳珠記念病院内,ほうじゅグループ内,地域内でどのような仕組みをつくれば効率よく地域ニーズに応えられるか考え続けてきた.
●当法人のモットー和楽仁「仲よく楽しく 人と社会を健康に」を掲げて,公益的立場としての生い立ちを旨に,2025年に向けた地域包括ケアシステムの構築や地域医療構想の策定と,2040年に向けた地域共生社会の実現に真摯に取り組みたい.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・65

医療法人 林病院

著者: 宇田淳

ページ範囲:P.332 - P.335

■はじめに
 「越前和紙」「越前打刃物」「越前箪笥」などの手仕事職人の町,福井県越前市に立地する林病院は,1913(大正2)年に開設以来,越前市を中心とした地域医療に貢献してきた.旧本館は1969年に竣工,2000年には増築工事を実施しているが,近年の医療環境の変化に対応すべく,2019年4月に移転新築した.基本設計は内藤建築事務所が担当し,その後,DBO(Design Build Operate;設計・監理・施工一括発注)方式で大林組が設計施工した.
 林病院の立地する越前市を含む丹南地域は,南北に国道8号をはじめ,JR北陸本線,北陸自動車道が縦断し,越前海岸沿いを通る国道305号,丹生郡から越前市・南条郡を通って滋賀県に抜ける国道365号,越前海岸から圏域を横断して岐阜県に抜ける国道417号があり,交通の利便性が高い地域である.このようなアクセスの利便性を生かした急性期病院の機能を発揮するため,林病院は他の病院・診療所との医療連携を重視し,開放型病床を設置している.また,入院から退院・在宅療養まで切れ目のない医療を提供するために,地域連携室,医療・退院支援室,居宅介護支援室を集約した地域医療部を開設している.

病院で発生する「悩み」の解きほぐし方・1【新連載】

応召義務をどう考えたらよいのでしょう?

著者: 越後純子

ページ範囲:P.378 - P.380

本連載では,必ずしも一つの正解がない病院関係者を悩ます問題について,その考え方を法的・倫理的・社会的観点から多面的アプローチで解説していきます.解説は,ケースのテーマにとどまらず,応用が利くように配慮したいと思います.初回は,2019(令和元)年12月25日に厚生労働省医政局長通知(医政発1225第4号)が出された応召義務を題材に考えていきます.個人的には,本通知をもって,今後は応召義務に関する現場の悩みは相当減少するのではないかと考えていますが,このような行政通知のもたらす効力も含めて,法律的アプローチを解説します.

事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・21

公益財団法人 ときわ会 常磐病院—「一山一家」の理念と新たな取り組みで地域医療を支える病院

著者: 林和希

ページ範囲:P.381 - P.386

 福島県いわき市は,東は太平洋に面し,南は茨城県と接しており,明治期以降,常磐炭田で栄えてきたが,石炭から石油へのエネルギー転換後は,首都圏から特急で2時間というアクセスの良さもあり,映画『フラガール』でも知られるスパリゾートハワイアンズに代表される観光都市への転換が進んでいる.
 人口は約34万人で県下第1位,東北地方全体でも宮城県仙台市に次ぐ第2位の人口規模である.面積は1,232km2と市域では全国12番目の広さを誇るが,阿武隈高地などにより可住地面積は28.5%にとどまる.

医療現場の「働き方改革」 医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・5

「連続勤務制限」「勤務間インターバル」を意識した労働時間管理

著者: 福島通子

ページ範囲:P.387 - P.391

 前回,「宿日直」および「研鑽」を意識した労働時間管理について述べたが,今回は「連続勤務制限」および「勤務間インターバル」の原則的な考え方を解説し,現場でどのようなシフト勤務ができるのかを検討する.

遥かなる霞が関・5

高齢化の進行の中で考えておきたいこと

著者: 佐藤敏信

ページ範囲:P.392 - P.394

 前回まで,医療の周辺サービスのありようについて書いた.そのポイントの一つは,患者の高齢化に対応するということであった.今回は,その話をもう少しだけ進めてみたい.

多文化社会NIPPONの医療 外国人患者受け入れの課題解決Q&A・32

外国人患者での重症例・ご遺体対応

著者: 堀成美

ページ範囲:P.396 - P.397

 外国人患者対応の中で,最初から患者が意識不明だったり,死亡するリスクがある場合に,医療機関はどのような対応をしていく必要があるでしょうか.あらかじめ対応の手順書(マニュアル)を準備しておくと慌てずにすみます.

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目次

ページ範囲:P.336 - P.337

Book Review こんなときオスラー—『平静の心』を求めて

著者: 中西重清

ページ範囲:P.399 - P.399

Back Number

ページ範囲:P.401 - P.401

次号予告

ページ範囲:P.404 - P.404

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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