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雑誌目次

雑誌文献

病院79巻7号

2020年07月発行

雑誌目次

対談

病院再生に必要なこと

著者: 長堀薫 ,   伊関友伸

ページ範囲:P.485 - P.490

地域の高度急性期・急性期医療を担うべく,救急車全応需や手術件数増加により院長就任後短期間で経営を立て直した長堀氏.
生産性向上と働き方改革の両立を目指すAIホスピタルの取り組みなど,横須賀共済病院の歩みと展望を伺う.

特集 病院再生はドラマだ!

巻頭言

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.501 - P.501

 病院をめぐる環境は厳しいものがある.どの病院も,いつ自院が存続できない事態に追い込まれてもおかしくないのが現状である.病院が右肩上がりで成長できていたのはいつ頃までであっただろうか.
 高齢化の進展により,国民医療費が急増し,その抑制が国を挙げた課題となった.医療費抑制の必要性はあるものの,病院現場の事情を考えないような診療報酬改定が続き,病院の財務状況は急激に悪化している.

わが国の病院を再生するために何が必要なのか—新型コロナウイルス感染症の蔓延を踏まえて

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.502 - P.507

●新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の蔓延は,国が進めてきたこれまでの医療政策に対して大きな変更を迫る.
●COVID-19の蔓延に対して,感染症指定医療機関が十分に配置できていない.
●これまでの地域医療計画において,新興感染症への対応はほとんど考慮されていない.
●感染症専門医の数や医師の集約化のメリットを考えれば,都市部の自治体・公的病院を統合・再編して機能向上を図る必要がある.

こうすれば病院経営は良くなる—2病院の経営改善に携わって

著者: 池田佳広

ページ範囲:P.508 - P.513

●病院経営が悪いということは,患者が病院にあまり来ていない,ということとほぼ同義である.その最大の原因は,病院が患者から信頼されていないからではないだろうか.
●信頼されていない理由の一つは,良い医療・看護・サービスを行っていないから.もう一つは,良い医療・看護・サービスを行っているにもかかわらず,それが周りに知られていないからである.病院の良いところを探し,それを周知することを徹底すれば,患者数が増えることがほとんどである.また,患者数が増えれば,職員の業務負担は増える.そのため,業務改善も必要になる.
●病院経営の2本柱は,患者の集客と業務改善である.そして,実際にそれを行うのは現場の職員なので,いかに現場にそれを浸透させ行ってもらうのかが病院経営の肝である,と筆者は考えている.

あかびら市立病院の経営再建

著者: 實吉俊介

ページ範囲:P.514 - P.519

●病院は市の経済を支える一企業であり,大切な雇用創出を担っている.しかし,財政状況が全国ワースト2位のまちの市立病院は不良債務が30億円であった.
●病院再生に当たっては,保守的な職員,議会,組合,住民懇談会など,不安や抵抗がいくつもあった.筆者は医療職との近い距離を保ち,そのスタッフたちに助けられた.また,市民ボランティアによる食堂経営など住民の協力が得られた.
●財政の見直しや医師確保に奔走した結果,不良債務を解消できた.本稿では,病院改革を通して,病院事務長として大切なことを述べる.

たつの市民病院の経営再建—3人のM氏の物語

著者: 毛利好孝 ,   三村令児 ,   森本康路

ページ範囲:P.520 - P.525

●たつの市民病院は,平成25(2013)年4月に現地建て替えによって新病院が竣工したが,大幅な病床減によっても病床稼働率は回復せず,平成26(2014)年度の病床稼働率は53.1%,経常収支は7億1千8百万円を繰り入れながら8千5百万円の赤字であった.
●平成27(2015)年度から地域の医療ニーズに合わせる形で医療機能が大幅に転換され,平成30(2018)年度の病床稼働率は84.5%,基準内繰入後の経常収支は1億1千3百万円の黒字となり経営再建が達成された.
●令和2(2020)年4月からは地方独立行政法人化され,新たなスタートを切っている.

医療法人東和会 第一東和会病院の経営改善への歩み

著者: 行本百合子

ページ範囲:P.526 - P.530

●2012年の診療報酬改定に際し,初めて2025年の病院のあるべき姿が示された.その姿に向かうための目標のシナリオを作成した.
●全職員が一致して進むためには,情報の発信と理解を得ることが重要である.当院の強みは,会長・理事長を中心に一つにまとまって進みやすいことである.また,もう一つの強みは,医師をはじめ看護師,コメディカル,事務職員全職員が高いコスト意識を持つようになったことである.
●核となる幹部職員が医療現場を理解して目標達成へ進むことが経営改善につながる.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・67

北九州総合病院

著者: 筧淳夫

ページ範囲:P.492 - P.496

■はじめに
 小倉駅から日豊本線で3つ目の駅となる城野駅の古いプラットホームに降り立った.しかし駅舎は新築であり,近代的ではあるが温かみのあるデザインで,新たに再開発が行われた町であることを感じさせられた.その駅舎からペデストリアンデッキが北に向かってまっすぐに伸びており,その先に真新しい病院の建物が強い印象とともに立ちはだかっている(図1).これが今回訪れた北九州総合病院である.

病院で発生する「悩み」の解きほぐし方・3

このような場合,個人情報保護法違反になりますか?

著者: 越後純子

ページ範囲:P.532 - P.534

■アプローチ
まず根拠法を確認する
 個人情報については,それを保護するための法律があります.厳密には民間と公的機関では適用される法律が異なり,類似した法律が複数ありますが,ここでは一般的な「個人情報の保護に関する法律」(以下,個情法)について解説します.

事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・22

病院経営状況の推移

著者: 林和希

ページ範囲:P.536 - P.541

●はじめに
 本稿を執筆している2020(令和2)年4月は新型コロナウイルス感染症による新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の前後の時期で,感染拡大防止の観点から取材を自粛していた.このため,今回および次回は,個別事例に代えて,病院の経営状況全般について紹介することでご容赦いただきたい.
 独立行政法人福祉医療機構(以下,WAM)では,1991(平成3)年度以降30年にわたって貸付先からの事業報告を基に病院の経営分析参考指標を作成してきた.WAMの貸付先は,医療法人が主体で病床200〜300床規模の中小病院が多いという特徴がある.
 医療制度・診療報酬制度や指標作成基準の変更,融資対象の属性変化などの影響もあるが,長期の連続した経営指標の推移は,一般病院(全病床に占める一般病床が占める割合が50%超)に係るマクロの経営状況の推移を把握する上で参考になるため紹介したい.

医療現場の「働き方改革」医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・7

時間外労働削減の取り組みなどの好事例

著者: 福島通子 ,   富澤昌平

ページ範囲:P.542 - P.547

 新型コロナウイルス感染症が医療機関に及ぼす影響は,その機能によって正反対の様相を見せ始めている.新型コロナウイルス感染症患者を受け入れている最前線では,法規制など意識の外に追いやられてしまうほどの働き方を余儀なくされている医療従事者がいる.長時間労働や連続勤務だけでなく,家族などへの感染防止のために帰宅もできずに院内泊や車中泊をしているとも聞く.その一方で,不要不急の受診を控える患者が増え,収入が激減し,職員を休業させなければならない医療機関も増えてきている.この偏在を何とかできないものだろうか.簡単にはいかないのは承知の上だが,地域全体で医療を支えるという考え方をさらに推進し,医療従事者の有効活用や負担を分け合う仕組みを考えないと,共倒れになるのではないかと危惧している.命を左右するという職種の特異性から、長時間労働もやむを得ないと目を瞑ってしまえば,さらに人手不足を助長する結果となってしまう.今だからこそ,少なくとも長時間労働を防ぎ,十分な勤務間インターバルが取れるような知恵を出し合うべきである.
 このような状況の中で,時間外労働削減の取り組みを始めることは難しいかもしれない.しかし,やがて収束したときに,職員にとって「ここで働き続けたいと思える場所」であるためには,常に改善の意識を持ち続けることが必要である.雇用の維持と働き方改革に真摯に取り組み,さまざまな施策を実行することによって,勤務環境を改善し,職員から選ばれる病院を目指すことが,時間外労働削減につながり,さらには生産性の向上につながるのではないだろうか.

遥かなる霞が関・7

続・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を公衆衛生学・社会学的に分析する

著者: 佐藤敏信

ページ範囲:P.548 - P.553

 前回の続きである.
 さて,COVID-19の検査や臨床の部分で,われわれに気づかせてくれることは何だろうか.

多文化社会NIPPONの医療 外国人患者受け入れの課題解決Q&A・34

新型コロナウイルス感染症流行期に見た外国人医療の課題

著者: 堀成美

ページ範囲:P.554 - P.555

 2020年前半は,医療や社会が新型コロナウイルス感染症の影響を受けました.5月後半には政府の緊急事態宣言が一度解除となりましたが,経済活動が再開し,人の行き来が活発になれば,また外国人を含めた新規の感染者も増えていく可能性があります.外国人患者受け入れ体制整備の担当者は,短期〜長期に感染症にも備えていく必要があります.5月末までの経験を共有し,今後につなげましょう.

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目次

ページ範囲:P.498 - P.499

Back Number

ページ範囲:P.559 - P.559

次号予告

ページ範囲:P.562 - P.562

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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