連載 医療現場の「働き方改革」医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・7
時間外労働削減の取り組みなどの好事例
著者:
福島通子1
富澤昌平1
所属機関:
1塩原公認会計士事務所
ページ範囲:P.542 - P.547
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新型コロナウイルス感染症が医療機関に及ぼす影響は,その機能によって正反対の様相を見せ始めている.新型コロナウイルス感染症患者を受け入れている最前線では,法規制など意識の外に追いやられてしまうほどの働き方を余儀なくされている医療従事者がいる.長時間労働や連続勤務だけでなく,家族などへの感染防止のために帰宅もできずに院内泊や車中泊をしているとも聞く.その一方で,不要不急の受診を控える患者が増え,収入が激減し,職員を休業させなければならない医療機関も増えてきている.この偏在を何とかできないものだろうか.簡単にはいかないのは承知の上だが,地域全体で医療を支えるという考え方をさらに推進し,医療従事者の有効活用や負担を分け合う仕組みを考えないと,共倒れになるのではないかと危惧している.命を左右するという職種の特異性から、長時間労働もやむを得ないと目を瞑ってしまえば,さらに人手不足を助長する結果となってしまう.今だからこそ,少なくとも長時間労働を防ぎ,十分な勤務間インターバルが取れるような知恵を出し合うべきである.
このような状況の中で,時間外労働削減の取り組みを始めることは難しいかもしれない.しかし,やがて収束したときに,職員にとって「ここで働き続けたいと思える場所」であるためには,常に改善の意識を持ち続けることが必要である.雇用の維持と働き方改革に真摯に取り組み,さまざまな施策を実行することによって,勤務環境を改善し,職員から選ばれる病院を目指すことが,時間外労働削減につながり,さらには生産性の向上につながるのではないだろうか.