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小さな産科婦人科病院經營の憶出話(1)
著者: 木下正一1
所属機関: 1木下産婦人科診療所
ページ範囲:P.17 - P.18
文献購入ページに移動 私は,亡父(正中)から木下産婦人科病院を繼承し,戰災によつてこれを失うまで10數年の間,その經營に當つた。この病院をうけつぐと同時に病院というものに對する深い興味關心をも父からうけついだように思う。病院はもう燒け失せて無くなつたけれども,受けついだ興味と關心とは,私の胸の中に今もなお深く刻まれていて,それ故にこそ,私は今日この雑誌の編集委員の1人に連つているような次第である。ところが,平素編集會議でも殆ど發言しないし,又執筆も絶えてしないものだから,今回は何でもよい,少し筆をとれと嚴命を下された。そこでこれから少しづつ,つまらない憶出ばなしを書き綴つてみることゝした亡父は,始め青山胤通教授のすゝめによつて濱町産婦人科病院と云う病院を營んでいたのであつた大學の教職を退いて,同病院の院長として,專らその經營に當り始めてからは,診療を思いのまゝに行えるような,理想的な病院をつくり上げたいと,全勢力をこれに傾けていたように思われる。幸にして,亡父は色々の點で惠まれていたので,ベツト數40に足りないぐらいの小病院ではあつたけれども,今から考えてみても殆ど理想に近い,立派な病院經營を着々と實現していたように思われる。完全看護・完全給食・看護婦の3交替勤務制なども既に大正年間から實行していたし,醫師當直の制度なども,完全なる診療を行うという趣旨の下に,きわめてやかましい規定を定め,且つそれを嚴重に實行していた。
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