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雑誌目次

雑誌文献

病院8巻2号

1953年02月発行

雑誌目次

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欧州の病院視察談(上)

著者: 塩澤摠一

ページ範囲:P.2 - P.15

私は昨年の秋,ストツクフオルムに開かれた世界医師会大会に出席しましたのを機会に,世界を一周しまして,十数ヵ国を歩いてきました,今晩はその際視察致しましたもののうち,特に病院に関することをお話し申上げたいと思います。但しアメリカの病院のことに関しましては,戦後多数の方々が渡米されまして詳しく御視察になり,又いろいろと細かい御報告がありますので,今日は特にヨーロツパの病院のことについて申上げたいと思います。アメリカの病院の設備は,金持の国でありますから大規模で且非常に整のつて居るものが多く,我々戦敗国,金のない国のものには之れを真似ることがむすかしく,ただ羨やましがつて見ておるにすぎないような点が多いと思われましたので,私は特に欧州でも戦争に敗けた国々,即ちイタリーとかドイツとかフインランドという国の病院に特別に興味をもつて見てまいつたのであります。

國際病院連合の第8回会議

著者: M.Y.

ページ範囲:P.16 - P.16

 国際病院連合(the International Hospital Federa-tion)というのは,国際病院協会(the International Hospital Association)の後身である。国際病院協会は1931年にViennaで創立されてから,各専門委員会を設けて活溌に動いていたのであるが,第2次世界大戦のため解散を余儀なくされた,それが1947年になつて,その後身として国際病院連合会が設立されたのである。現在会員は大略次のとおりである。
(1) Belgium, Egypt, England, Greece, India, Israel, Jamaica, Netherlands, Scotland,Spain.

近代病院を性格付ける諸傾向について

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.17 - P.20

病院の資本主義的傾向
 私は先に近代病院の基本的性格を「医学を存立せしめる場」であるという命題によつて把握した。このことは病院が患者にとつて絶対に必要であるばかりでなく医師にとつても,医学そのものにとつても絶対必要の施設であることを意味する。従つて今日の医療問題は病院を中心として考察すべきであつて,病院研究の重要性が強く認識されてきた所以もここにある。所で申すまでもなくこの「場」という言葉は此所では社会的意味で使用されているのである。従つて病院の社会的施設としての性格を更に限定する必要が生ずる。私はこれに対して近代病院は「資本主義的施設である」と言う第二の命題を設定することに依つて解答しようと思う。このことについてはかの有名なJoseph A. Schumpeter教授がその名著Capitalism Socialism and Democracyの中で指摘している様に二重の意味で主張することが出来る。即ち先ず第1に近代医学の発達は近世に於ける合理主義的思弁によるものであるが,この合理主義的思弁というものは,貨幣単位を合理的費用=利潤計算の用具に転化せしめた資本主義の経済的合理性の申し子たる費用=利潤計算の反作用として明確化され数量化された型の論理・態度・方法に依つて生じたものである。従つて近代医学は資本主義的なものとして規定される。しかしこのことは現代の科学文明を特色づけるものであつて,決して医学に限つたことではない。

小兒病室と空氣調整

著者: 今村榮一

ページ範囲:P.21 - P.22

空気調整(air conditioning)は近代的建築には切り離すことのできないものであり,わが国においてホテルやビルなどで採用しているところも少くない。しかしながら病院においては一般にはほとんど手がつけられていない状況である。
空気調整は人体の生理状態に適応するように空気状態を適当に保ち,室内を快適な状態にすることを目標にしているのであつて,病人において一層必要とされることは言うまでもない。しかしながらわが国においては単なる暖房設備もデパートや映画館などでは当然あるかの如く常識的に取扱われているにもかかわらず,病院においては未だ積極的に取り上げる状況に至つていない。もちろんその原因の一つは,例によつて予算の不足というところにもあるだろうが,健康者の生活環境は快適にされるに反し,病人の環境が旧態のままであるということには,誰でも矛盾を感じるであろう。しかし病院における空気調整も近時ようやく注目されるようになり,新しく建築されている病院において,手術室その他一部に空気調整の実施をみるようになつて来ている。

寢台の研究(Ⅱ)

著者: 上田篤次郞

ページ範囲:P.23 - P.25

Ⅰ.まえがき
さきに私は寝台の環境衞生学的見地からの基礎的実験を行い,本誌(5)に発表しましたが,其の後実際に病院に於て使用中のベツトの状況等を調査しましたので,茲に発表致します。
総括的に云うとこの寝台の問題は当初想像して居た以上に重大問題で,病院管理の立場から改めて現状を検討して戴くことが絶対必要であると痛感致しました。

手術回復室

著者: 島內武文

ページ範囲:P.27 - P.30

 Post-anesthesia, post-surgery Recovery Ro-omといわれているものを手術回復室と仮に訳してみた。もつとよい名称もあるかと思われる。
 定義 手術回復室は手術乃至痲醉後に手なれて行きとどいた手当をして危険を減じ,診療看護能率をあげるために,手術後の患者を一時収容する手術室系統の一部である。

綜合病院の設計と構造(4)

著者: 小川健比子

ページ範囲:P.31 - P.36

第5章 看護設備
 患者の予定分配率を決めるには,夫々個々の例に就いて,特別に研究してみる必要がある。
 標準的な予定分配率は,そのコミニユテーの中に,特殊病院,例えば婦人科或い小児科の病院が存在することによつて,非常に影響されるし,又計画される病院或はその地域の中の他の病院の医員で,専門医として認められるものが居ることによつても,非常に影響を受ける。

医療社会事業の実際知識(上)

著者: 木村典子

ページ範囲:P.37 - P.41

 本編は医療社会事業の実際的知識をあたえる目的で書かれた。其の為に事例研究は特に種々な臨床例を類型的に掲げてある。例えば病院社会事業部においてCase Workを行う場合,其の取扱うClientの不調整関係が何によつて基因されるか,その障害によつて経済的ケースとか家庭的ケースとか精神的ケースとか,又は職業調整ケースという種々に類型を分けることが出来る。本書の事例研究も出来るだけ多くの異つた類型を掲げるために努力した。こうしたCase事例を参照されて医療社会事業の基礎原理を考えられると多少共理解が容易ではないかと思う。其の他種々な点において不備なところは他日機会を得て改めたいと思つている。大方の温かき御敬導を乞う。

プラーグのチャールス大學

ページ範囲:P.42 - P.42

 PragueのCharles Lmiversilyは1348年時の名君Charles4世の創立したもので,すでに600年の歴史を有し,最高学府たる光栄と伝統を保持し来たのである。第2次大戦に際し,ナチスの圧力に屈することなくために21名の教授がその席を追われたことがあつたし終戦後東と西の,米ソの烈しい抗争の間に在りより多いソ連の強圧にも屈することなく多難な国状の下,よく古いCzechoslovakiaの文化を護りつづけている。

病院革命の必然性

著者: 守屋博

ページ範囲:P.43 - P.44

 およそ世の中にある物は何でもきわめて除々ではあつても,進歩しつづけるものである。その進歩は時々瞠目的に急速に行れて,全く別物があらわれた様に見られる事がある。これを我々は革命と云う。革命と云えば常々暴力革命,或は赤色革命を連想するのできわめて好しくないと考えられるのだが,現に我々の政治体型に於ても何回もの革命が行れている。若し明治維新がなくて未だに封建政治や分藩政治が行れていたらどうであろうか。世界社会と云う流れに乗るのには好むと,好まざるには問わずこの様な革命が必要であつたのだ。しかしある人は,何もこんな革命的速度で行れなくてもきわめて除々に良識的に変化しつつ自己適合さす事が出来るではないかと云うが,古来主権者は主権者の位置を代る事を好ぬもので,しかも一度主権者になると現在の制度にきわめて保守的になるものである。したがつて,同一主権者のもとではいかにその人が進歩的であつても進歩の速度は限定されていて,若し社会の他の分野の進歩においつけぬ時は,他の主権者が表れる。即ち革命が行れる以外に方法はない。
 さて,この様な革命はどう云う時期どうした動機で行れるかと云えば次の原因が考えられる。

Dr. Moriya's Recordtape

著者: 守屋博

ページ範囲:P.45 - P.46

15.仕事は暇な時に
 電気の使用量の動きを見ると,一日中決して同量ではない。夜中は0に近く午前と午後にピークがある。このピークを賄ふ為に巨大な発電設備をして,夜は遊ばせねばならぬ。若しコンスタントに,電気が用いられるならば,適当量の設備で最大の能率を上げる事が出来る。夜間作業,休電日制はこれに対する解答である。病院の仕事も同じ事が云えるので,外来が午前10時から12時におしかける為に医師も看護婦もテンテコ舞をして,午後はあみ物をしたり,麻雀したり等しなければならぬ。この仕事の平均化は病院管理の第一歩であつて,これによつて最少の設備と最少の従業員で最大の效果をあげる事が出来る。
 第一の方法は患者を平均してこさす事である。例えば午後,夜間の診療をやるとか,日曜診療をやる事である。手術を午後にもつて行くのも一法である。次の方法は,ピークに備して従業員の予備軍をおく事である。病棟のピークは廻診時と配膳時であるが,此時に,従業員の山をもつて行く様にする。婦長の勤務時間は配分はこの線で行うべきだが,完全に行うのには時差出勤,中間休暇が必要になる。しかし一番やり易いのはパートタイムの職員を自由に使う事である。殊に医師の仕事についてはパートタイムを原則にする位にして始めて合理化が行われるものである。第三の方法はピークの時の負担をなるべく軽くする事である。

新計劃の原則を包含した研究病院

著者: 森島

ページ範囲:P.47 - P.49

 シカゴ市にたつ合衆国出征勇士管理病院のための新原則は面積や光やまた人員も充分能率的に又経済的に使用できることとなつている。
 第一に腫瘍研究のために使用さるべき此新病院はシカゴ市の中西部にあつて合衆国出征勇士管理病院として建設中である。定型的の新病院として認めらるべきものは此計画に於てかなり他と相違せることで,新施設の使用開始にあたつて能率的で且経済的であるとの証明を予期しているのである。技術方面より当面した問題はかなり複雑してをつた。此市の特別区域で特別なる装備をなし,数多くの構成を有する500床の病院を建設することは非常に困難であつた。此地域には同じような高さの建物が聳立しているので市から其許可をうるのになお複雑な事情にあつた。
 この病院の位置は市の一矩型の一区画の処で一辺633呎他辺126呎であり,ノースウエスタン大学の校庭上にあつた。病院建設は1950年5月に始められ,1953年6月には最初の患者が入院を許可されることとなつている。此建築には病院装備について興味ある数々のものがある。即ち自力発電計画や,地下には数々の特別治療室や50名に上る院内居住医師室や,90名に上る看護婦の居室等が備えられている。病院建設の計画として,建物の周囲から出来る丈け多くの光や,空気や,日光光線を取入るべき事と建物の周辺と最も好い関係を得らるることなどであつた。それゆえ対角線的の工夫が採用されたのである。

日本病院協會だより

ページ範囲:P.51 - P.51

社会保險診療費是正に関する各地方協会意見
A.完全看護の基準についての意見
1.基準改正不要。実施し得るように報酬を引上げること。日赤
2.基準は現行でよい。例外として重症患者には医師の許可を得て附添をつけ得るようにすること。富山県

病院関係人事消息

ページ範囲:P.53 - P.53

○杉浦淸四郞氏 愛知県碧海郡昭治村米津に杉浦産婦人科病院を新築中の所,この程落成したので患者を收容する事となつた。
○山尾 正人氏 (国立鳥取病院)国立鳥取病院副院長に昇任。

編集後記

著者: 島内

ページ範囲:P.56 - P.56

 長い御療養の甲斐もなく秩父宮殿下御薨去になり哀悼にたえぬ所であるが,率先平民的であられた殿下の御逸話をうかがうにつけ今更乍ら感慨深いものがある。殊に生前の御遺志によつて病理解剖を御許可になつた事は,一般の病理解剖を促進して我国医学の進歩の上に測り知れぬ好影響をもたらすものと思われ,殿下が身を以て病と鬪われてこの御決心をせられた御心をたいして我々病院関係者も一層の努力を致すべきものと考える。
 停電だ,石炭ストだと相変らず暗い冬で,病院は照明や暖房のみでなく電気冷蔵庫・洗濯機・エレベーター・揚水ポンプ・鉄の肺・電気メス・コールシステム等,あらゆる部面で不自由をこうむつた。殊に齒科診療はてんで仕事にならぬ始末であつた。近代病院の近代医療に於ては電気の供給の安定性というものはその設計上の前提条件である事からも,もつと真劍な考慮を要する様だ。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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