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近代病院を性格付ける諸傾向について
著者: 岩佐潔1
所属機関: 1厚生省医務局医務課
ページ範囲:P.17 - P.20
文献購入ページに移動私は先に近代病院の基本的性格を「医学を存立せしめる場」であるという命題によつて把握した。このことは病院が患者にとつて絶対に必要であるばかりでなく医師にとつても,医学そのものにとつても絶対必要の施設であることを意味する。従つて今日の医療問題は病院を中心として考察すべきであつて,病院研究の重要性が強く認識されてきた所以もここにある。所で申すまでもなくこの「場」という言葉は此所では社会的意味で使用されているのである。従つて病院の社会的施設としての性格を更に限定する必要が生ずる。私はこれに対して近代病院は「資本主義的施設である」と言う第二の命題を設定することに依つて解答しようと思う。このことについてはかの有名なJoseph A. Schumpeter教授がその名著Capitalism Socialism and Democracyの中で指摘している様に二重の意味で主張することが出来る。即ち先ず第1に近代医学の発達は近世に於ける合理主義的思弁によるものであるが,この合理主義的思弁というものは,貨幣単位を合理的費用=利潤計算の用具に転化せしめた資本主義の経済的合理性の申し子たる費用=利潤計算の反作用として明確化され数量化された型の論理・態度・方法に依つて生じたものである。従つて近代医学は資本主義的なものとして規定される。しかしこのことは現代の科学文明を特色づけるものであつて,決して医学に限つたことではない。
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