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雑誌目次

雑誌文献

病院8巻3号

1953年03月発行

雑誌目次

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医療機關と予防衛生

著者: 曾田長宗

ページ範囲:P.2 - P.4

 昭和26年の年統計として死因の第1位から第2位に転落した結核は,昭和27年7月以降更らに第3位に落ちたが,その後も順調な下降を続けている。昭和27年の年統計がまとまるのは今月末のことであろうが恐らく7万程度,人口10万に対する死亡率としてほぼ80位になるものと予想される。年統計としての死因順位は前半年において結核が癌その他の惡性新生物より上位にあつたため,第2位を辛うじて保つか第3位に下るか,何とも断言出来かねるが,何れにしても兩者の間に大差はないであろう。唯最近における結核死亡の顕著な減少から推測すれば,本昭和28年には結核死亡が5万台となり,癌その他の惡性新生物に位を譲ることは間違いなく,兎もすれば全心臓にも乗り越えられそうである。新結核患者の屆出数は,死亡の場合と違い,昭和27年6月まで前年同月を常に超過していたのであるが,これも同年7月からは減少に転じ,年統計としても昭和26年1ヵ年の屆出総数590,684に対し,昭和27年は584,871で,僅かではあるが前年よりも下廻る数字となつた。
 この勢では昭和28年には,新患者の屆出数でも著しい減少が期待出来そうである。

病院管理と血液銀行

著者: 福武勝博

ページ範囲:P.5 - P.9

輪血と病院管理
 綜合病院が医療について独立した完全な姿でなければならないのは当然な話であるが,ふりかえつて輸血について現在の日本の病院の機構をうかがうと,病院は何らの完成された輸血施設もなく,多くの場合に輸血協会を通じて供血者を迎えなくてはならない。しかも,輸血協会との連絡は病院の施設を通じてゞはなく,病棟や手術室の看護婦個人を通じて連絡されていることが多い。この場合,問題となつて来るのは①輸血協会なるものは単なる自由営業であつて,法的に何等の取締りが行われていないことゝ②病院に輸血協会との連絡をなし,かつ供血者の選定などに関する責任ある機構が完備されていないと云うことである。
 多くの輸血協会と称するものの運営が非良心的であるのは衆知のことであつて,病院より指定された血液型を供給できない時に万能供血者としてのO型供血者を他型といつわつて供給したり,供血者が持参する検査証明書に,血色素量が70%(ザーリー)以上と書いてあるのに実際に病院で測定してみると殆どが30%台であるなどの事実が認められている。このように職業的供血者が著しい貧血の状態におかれていることは供血者の健康保持にたいして寒心にたえない。しかも,輸血協会の運営が自由営業のまゝ放置されていて,輸血のような医療の重要な一面に直接につながる事業にたいして何等の法的監督が行われずにいることは医療行政における欠点であるとおもえる。

健保における胸内結核入院診療の統計的觀察と,その請求方法への一考察

著者: 大村秀三郞

ページ範囲:P.11 - P.16

1.主旨
 健保を基準とする現行社会保険医療に関しては,制度的には医療組織,運営方法,保険財政の編成等に多くの問題が残されていると思われるが,問題の範囲を診療取扱方法に限定して云うならば,(1)診療報酬請求又は支払方法の改善,(2)診療取扱に伴う事務の簡素化の二つが当面の研究課題であろう。
 これらの課題も結局は,必要とする妥当な医療費の総額を算定し得て,これに対応し得る保険財政も調達することが出来れば,自ら解決も困難ではなくなる。

アメリカの病院を視る

著者: 小西宏

ページ範囲:P.17 - P.21

 こちらへ参つてつくづくアメリカという国の大きいことを思い知らされました。病院に関したことだけでも制度や方法が州によつて違うので日本的な感覚では全体を正確に把握することがなかなか困難です。各州が夫々の個性をもち,好き勝手なことをしているので,日本の県の様な積りでいるととんだ誤解をしてしまいます。それで,始めに,私が訪れた州名を挙げ,それらの州では斯うだということにしておいた方が間違いがないと思います。
North Carolinaはかなり広く州内を歩きましたから一番よく事情に通じ得ましたが,その他はWashington D. C., Maryland Baltimore IllinoisのChicago, MinnesotaのRochester MassachusettsのBoston之だけが私の訪れた地名です。従つて中南部及び西部は全く知らない訳です。訪れた病院の数はCounty Hospital及びそれに類する小病院(100床迄)が約20,teaching hospitalとも称すべき医学校とCon-nectionをもつた大病院が約15,結核療養所及び精神病院が各1ヵ所ということになります。

欧洲の病院視察談(下)

著者: 塩澤摠一

ページ範囲:P.23 - P.31

フインランド
 次にフインランドのことを申上げます。フインランド,ここは御承知の通り小さな国でありますが,ソヴエトと大いに戦かつて,ソヴエトを相当手こずらした国であります。然し結局敗けて大切な鉱山を取られたり,或は良い港を取られたり,賠償金も10億ドルとか取られたという話を聞いておりましたので相当疲弊しているんじやないかと行く前は想像して居つたのであります。然しここも存外違つておつたのであります。勿論飛行機で降りて,空港からフインランドの首都のヘルシンキにゆく途中あたりは日本の東北の田舍のような気がして非常に淋しいところですが,ヘルシンキの町の中は相当賑やかであります。私共はこゝでも二三の病院を見せてもらいましたが,そのうち主だつたものをちよつと申しますと,ヘルシンキ大学の婦人科を見せていただきました。ここのバラーという講師の方が案内してくれましたが,建物の高さは8階位で,白煉瓦の造りであつて,ここの病院では病棟の建物が互に直角になつて居る様な所は少なく妙な角度で造つてあり,又一直線でなく曲線になつて居る建物が多い。これはどういうわけかと訊いてみますと,北極圈に近い国の採光,通風に応じて造つたのだということでありました。
 また産科の病室にすぐ附随して小児科の建物がある。これは戦後造つたものでベツドが2-300位あると云う。

挨拶に代えて

著者: 齋藤俊保

ページ範囲:P.33 - P.34

 全国唯一の病院管理の綜合雑誌"病院"から,挨拶かたがた何か一つ書いて呉れとの御註文であつたが,私にとつては誠に光栄であるので,早速筆をとる事にした次第である。
 私は此度岩手県から厚生省の国立療養所課へ転じたばかりで,未だ中央の様子は皆目分らないので,或いは見当はづれであつたり,或いはめくら蛇におじずであるかも知れないので,汗顔の至ではあるけれども,過去3,4年岩手の医療体系の整備と,その運営の経験を通じての私の感想を述べて見たいと思う。

"教育機関としての病院"討論會(上)

著者: 坂口康藏 ,   橋本寬敏 ,   原素行 ,   河野靜雄 ,   守屋博

ページ範囲:P.35 - P.45

第1部 看護の教育
講師 橋本寬敏氏
司会守屋博氏
 橋本 近代病院は患者の診療ばかりでなく公衆衞生の実施,医学の研究,医師及び医療関係者の教育を兼ね,都合四つの機能をもつと定義されて居る。今日の診療は医師が単独に働くよりも,補助者の協力を得て集団活動をすることがなくなつたので,補助者即ち医療療関係者の養成教育が極めて重要である。
 会事業員,医学検査技術士又手薬療法員などの職員を訓練しなければならないが,これが病院で行われる。

綜合病院の設計と構造(5)

著者: 小川健比子

ページ範囲:P.47 - P.49

第5章 看護施設(続)
処置室
 処置室は,患者の居る各階に必要である。その室内は音響学的に取扱われ,又器械殺菌器,補給品棚,掲示板,器械戸棚,ナースコール,時計,特殊照明設備,liquid soap dispenserとCo-mbination instrument及び膝及び肘操作式胴長水栓付洗滌流しを設備する。検査用机と廃業物容器のための場所も準備される。

病院関係人事消息

ページ範囲:P.50 - P.50

◇美甘 義夫氏 (東大内科教授) 2月11日開かれた東大医学部教授会に於て附属病院長に互選さる。氏は岡山県人,大正12年東大医学部を卒業,熊本医大教授より東大伝研病院長となり,次で東大教授(佐々教授後任)となり現在に至つた人である。
◇三沢 敬義氏 (東大教授附属病院長)3月末日を以つて任期満了となる。東大附属病院長を辞任さる。しかし附属分院長は当分そのまま就任される由。

医療社会事業の実際知識(中)

著者: 木村典子

ページ範囲:P.51 - P.54

第3編 医療社会事業の実際
事例A
 このケースは孤独でありO市役所及社会福祉施設と連絡をとり,本人の希望により,病院退院後は更生施設へ入所し,現在自分のおかれている境遇に感謝しつつ更生しようとする強い意志を持つて,食餌療法をしている。
姓名 大田政雄 31才無職住所 不定病名 胃潰瘍再発

編集後記

著者: 守屋

ページ範囲:P.56 - P.56

×難工作を予想されていた国立病院の移管も最近になつて二三ヶ所の話が意外に進捗して,中でも秋田国立は正式に県立移管と同時に本建築にかかる事になつた。
×阿部前局長の任期中はもつぱらこの困難な工作時代であつたのだが,黙々として局長席に座つておられたのを思い出すとやはり衞生行政の犠牲である事を考えないわけに行かない。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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