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雑誌目次

雑誌文献

病院8巻4号

1953年04月発行

雑誌目次

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医療諸施設の結合について—英国の発展史とChicagoのMedical Center

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.2 - P.5

1.結合の必要
 医療諸施設を結合してすべての人に必要にして十分な綜合的医療を与え得る体制を確立することの必要については,現代の我々の感覚からすれば自明のことに思われる。
 しかしこの結合の問題が具体的に検討され現実面に移されてきたのは決して遠い以前のことではない。社会の又は社会についての考え方の変化が医療制度の又はそれに関する考え方の変化を生ずるのであつて,国民の医療についての責任は長く各個の医師にまかせられてきた。それ故に医師は各自資本主義的な自由競争をすると同時にある程度の仁術を施すことを社会から要求された。しかし医療の責任を医師のhumanityにゆだねると云うことは社会或は国家のinhumanityを示す様なものである。特に医学の進歩による医療施設の近代化と諸設備諸機械の発達は個人医師による病院設立の可能性を減少してきたし,一方医学の専門的分化は多数専門医間の密接な協同作業を要求することになつた。かかる状態において諸医療の責任を各個の医師にまかせることは不可能となつた。人々は疾病に応じてあらゆる種類の専門医を要するのに,地域的な医療施設の不足や相互連絡の不充分の為に必要な医療を受けられないと言うことは国家にとつて許し難い問題である。

ある汚物燒却爐

著者: 庄村英四郞

ページ範囲:P.6 - P.8

 病院や療養所の汚物焼却炉と言うものはむずかしいもので,仲々思うように燃えてくれない事は既に多数の方が充分経験ずみの事と考えるが,理由は至つて簡単で,汚物と言つてもいささか広く塵とか紙くず丈ならいざ知らず果物の皮あり残飯あり,脱脂綿からガーゼ,更に困つた事には喀痰胎盤はおろか切り離された肉体の一片まで飛びこんで来る事もあつて,吾々の言う汚物とは決してなまやさしいものではないからである。然も重油をふきつけて焼くとか燃料として石炭でもふんだんに使うのであつたら話は亦別だが,ボイラー用燃料すら石炭を薪に乗り替えて,四苦八苦やり操らねばならない食乏病院では到底望むべくもないそこで極力補助燃料を使わず,非常に湿度の高い之等汚物共を処分する名案はないものかと,方々の焼却状況を見学もし問合せもしてみたが,成る程之ならばと思うようなものもなければ,推薦出来るから是非之にしなさいと言つてくれる所もなかつた。
 汚物焼却炉の在り方としては今更申上げるまでもなく,次のようなものでありたい事は御承知の通りである。

「チャート」の整理—中央病歴室の設置

著者: 安富徹

ページ範囲:P.9 - P.12

1
 患者が退院した後の診療記録(チャート)をどう整理するか……と云う問題は仲々大事なことであるのに案外放置されているのではないでしようか。なるほど中央病歴室と云うものが観念的には頭の中にあつても,どういうように具体化するかという段になると仲々手が進まないと思います。
 大てい,各科或は病舎別に,月別とか年度別にとじこんで「見出し」でもつけてあれば上出来の方で,ひどいのはてんでばらばら,医局の棚の上にほこりにまみれていたり,誰かの机の引出しの中に眠つているのがあるかと思うと材料倉庫などに投げこまれ,そのうち体温表と本文とが泣き分れたり……が実情ではないでしようか。きちんと整本してあれば,ぬきとりも出来ますまいが,ただ綴りこんだだけですと,統計や再入院或は症例報告でもしようとしてその綴りこみをさがすときまつたようにその目指すチャートはぬきとられている……と云う「うき目」に会つた御経験は少くあるまいと思います。

病院の衛生的給食設備について

著者: 野木猛

ページ範囲:P.13 - P.19

 病院の手術室,治療室,病室等の常時一般に目につく処は完全な衞生的設備をなし,又細部の参考資料も見受けられ病院管理者も特に注意をするが,余り目につかぬ給食設備に関しては日本に於て相当な大病院といわれている処でも往々にして一部の欠陥のあるのを見受けられ,又其の設備を改善しつつあるも作業上の関連性から衞生的観念を無視した設備をなしつつある処もある。元来病院の給食設備は最も衞生的であるべきなれ共戦争に依る食料事情の惡化と,設備資材の欠乏に伴つて甚だしき非衞生的設備に習慣づけられ管理者も作業員も其の衞生的概念を欠く様になつて居る。この様な習慣を打破する事を目的に其の作業経路と,衞生的設備の関聯性について概要を述べてゆこうと思う。

臨床家の反省—われわれの病院の場合

著者: 永井友二郞

ページ範囲:P.21 - P.23

 この一文は,もともと私が,われわれの病院の中で自己反省の資として,書いたものであつたので,これを誌上に発表する事は甚だ恐懼に思うのですが,この中には,病院の運営や,臨床家の立場に関する大きな課題が含まれていると考えられますので,貴重な紙面を借りて発表する次第です。

アメリカの小病院

著者: 小西宏

ページ範囲:P.25 - P.27

 アメリカの小病院と云つても,私共の見たのはノースキヤロライナ州に限定されるので余り大きなことは云えない訳ですが,いろいろ話にきいたり,実際に病院をみたり,又私共をわざわざここへ派遣したという事実から推して,この州は米国に於ても病院経営についてかなり高い水準にあるのではないかと思われます。固より,私がアメリカに来てまだやつと2週間にしかならず,大病院を一つも見ていないので,皮相的な観察に過ぎないかも知れませんが,印象の生々しいうちに感じたことを書きとめておこうと思います。
 私共が見せられた病院は,殆んどDuke End-owmentが後援(1ドル/1 day/1 active bedを病院に寄附)しているnon profitのsmall general hospital (100床以下)でCounty Hos-pital City Hospital Community Hospitalなどです。乞度この州でも亦比較的優れたものではないかと思われます。と云うのはDude Endow-mentが後援の認定をする際かなり詳細な(B版15頁に亘る)資料を提出させ病院経営の実態をよく調査する模様で,事実殆んどの病院が例の日本でもやつている病院監査の結果90%以上をとつて「A」と格附した額を玄関に掲げてありました。

"教育機關としての病院"討論會(下)

著者: 坂口康藏 ,   橋本寬敏 ,   原素行 ,   河野靜雄 ,   守屋博

ページ範囲:P.29 - P.37

第Ⅱ部 インターン及び醫師の教育(続)
講師原素行
司会守屋博
 原 インターンが入つてまいりますと私共は大体1週間位準備教育というのをやつております。ある人がそれにプレインターンコースという名をけてくれましたがインターンの様子をみておりますと,どうも顯微鏡の扱いがよくない,割に近々ですが,私共の事務長から私のところにこういう話がありました。「大学では顯微鏡の使い方を教えないんですか。あまり壊すから……」といいます。もと私共の方ではヒストロギーの実習で顕微鏡の使い方は大体憶えたんですが,近頃は或はインターンというのができたんで,大学の方では病院の方に委しちやうんじやないかという疑いを私共も持たんでもないんであります。でありますから顕微鏡の使い方とか,ハルン・コートの検査の仕方,そういうことを皆で分担して大体1週間で教えております。その中で私の方で特有なことは,もう3・4年前からですけれども看護婦教育という講義を1日やることにしております。これは男の医者が出て看護婦はどういうふうだという話をしてもうまくないと思いまして,それは看護婦に講義をさせるのでございます。これが非常にヒツトでありまして,大学を卒業して自分は医者であると威張つて入つてきたところが「今日の講義は看護婦がします」という。すると「大学の卒業生をつかまえて看護婦が講義するとはけしからん」と不満になる。その不満があとになると非常にいいようであります。

綜合病院の設計と構造(6)

著者: 小川健比子

ページ範囲:P.39 - P.45

第5章 手術施設(Surgical Facilities)
 手術部(the operating suite)は病院の他の部分から完全に分離して,そこを通る道路がない様に配置することが,大切である。故に,一つの隔離てた階に位置を占めるか,或は各病棟部へはエレベーターによつて容易に接近できる様にした,分離したwingの中に配置すべきである。
 綜合病院に入院する患者の内,殆んど半数は手術を要する。毎年約3,600人の患者,即ち毎日平均10人が入院するとすると,平均100bedの病院には,毎日3乃至5の手術をする設備を必要とする。

Dr. Moriya's Recordtape

著者: 守屋博

ページ範囲:P.46 - P.47

18 健保料金について
 患者も医師も保険者も不平のない合理的な料金を出すには根本的な制度の検当を行ねばならぬが,少しづつでも点数の不公平を是正する事が出来れば当面を糊塗する事が出来る。今ここで提案する事もその一部であつて御参同を得たいと思う。
 第一に,診察料乃至技術料がやす過ぎると云うか〇である事である。この点は一昨年医師会が指適した所が決論が出ないでものわかれになつた所である。元来医師の收入を固定して,これを診料件数で割ると云う様な機械的な原価計算で出るべきものではあるまい。原則的には一回の診察50円でも,100円でも,1000円でも,患者の自己負担にて行うと云うので,保険給付からはずすのが本当ではあるまいか。従つて保険金だけで診てもらう時はインターンか見習医に診てもらうべきで,保険が強いて,卒業後10年の専門医に診せる事を負担するならば,100円位いをつければよいであろう。

醫療社会事業の実際知識(3)

著者: 木村典子

ページ範囲:P.48 - P.54

第4編 醫療社会事業の実際
7月1日
 徳島県福祉事務所から6月19日発送した便りの返信があり,医療費の1割負担は免除された。病床訪問し治療費の問題が解決ついたので安心して治療をうけるよう勇気づけた。午後ケースの病床を尋ねた姉が来部し,治療費の解決したことを喜ぶ。この姉は善良そうな,弟おもいの人で弟の面倒をなにくれとなくみ,乏しい財布の中から見舞品等買与えているようである。ケースワーカーは,患者の性格,若い時の有さま等調査した。

結核指定医療機関に大学病院指定

ページ範囲:P.54 - P.54

 厚生省では告示第48号を以つて,結核予防法指定医療機関に国立大学病院として,初めて下記5ヵ所を新に指定した。
弘前大学医学部附属病院群馬大学医学部附属病院徳島大学医学部附属病院信州大学医学部附属病院鳥取大学医学部附属病院

編集後記

著者: 守屋

ページ範囲:P.56 - P.56

○本号の出る頃には,編集委員の一人島內武文氏は東北大学教授として病院管理学講座を開いているであろう。病院管理学も一歩一歩確実なステツプを続けてついにアカデミーの本山大学に,歩を印する事になつた。あらゆる事に研究的態度を取る同君の事だから必ずや新しい分野を開いて新しい見事な花を開かす事であろう。本誌も,その成果によつてかざられる日の近からん事を祈る。
○編集委員千種先生も,東二入院御自宅静養されていたが,再びお元気になつて活躍されています。

病院長プロフイル

病院管理・看護教育の父都立広尾病院長原素行氏

著者: 長岐佐武郞

ページ範囲:P.20 - P.20

 広尾病院長原素行博士は,入沢内科出身の貴公子である。秋田市の名医原平蔵氏の嫡子と生れ,長じて大正6年東京大学医学部を卒業するや,薬物学教室,大学院に研さんをつみ,その後入沢内科に籍を置き,大正11年医学博士の学位をうけた。一時,尊父のあとを郷里についだが,鳳心ついに彼を偏土の一名医たるに甘んぜしめず,昭和3年より6年まで同仁会青島医院長として日支親善に活躍した。同年東京市に舞いもどり,市立大久保病院副院長から城東病院長,ついで現在の広尾病院長と順調に進んで20数年間,到とう東京都に根をおろしてしまつた。
 原さんは,故神保孝太郞博士の女婿であり,弟君は九州大学医学部を出で小児科を専攻される原弘毅博士として有名であり,令妹は森鷗外博士の御曹子森於菟教授に嫁しておられる。かくて原院長が名医家の出身であるのみならず,親戚弟妹また悉く名医門につながる。蓋し風貌の貴公子然たる——もつとも頭は大分光つてきたが——またうべなるかなである。

アンケート

我が病院の特色(到着順)

著者: 鈴木五郞 ,   菅野保次 ,   田辺子男 ,   沼田正二

ページ範囲:P.28 - P.28

 本院は格別の特色のない事が特徴といい得ようか。綜合病院として偏すろことなき使命を果すべく全職員がよく協力精進していると思う。身処四民外,或可貴或可賤,上陪王候不為栄,下伍乞児不為辱。と云われるが国立病院の性格から患者は多層であるのも不偏の特色といい得よう。
 軍病院の残骸なるが故に建造物,設備の貧弱な点を診療内容,サービスで補わねばならぬのも特徴か。世に所謂特長とする斬新の設備等何もないのも特色の一つである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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