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雑誌目次

雑誌文献

病院8巻6号

1953年06月発行

雑誌目次

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就任のことば

著者: 島內武文

ページ範囲:P.2 - P.2

 今回はしなくも東北大学病院管理学講座担任を命ぜられました事は,私にとりましてまことに名譽の事であると共に,その責任の重大さを痛感するものであります。
 東北大学医学部に本講座が設けられるに至つたいきさつについては既に1年前の本誌に篠田附屬病院長によつて2回に亘つて述べられていて,本講座に於て病院管理学を教育研究すると共に,一般に病院の改善を通じて医療の向上,医学の発展に努力する事にあるのであります。この事は全く東北大学がその進歩的な伝統の下に本講座の重要性を理解せられて篠田院長の意図を支持せられた事によるものであつて,又これがここまで盛りあがるには終戦後のPHWの指導と,厚生省病院管理研修所関係の先導が力あつたものと考えます。この様な講座は米国にても数十年前より病院管理者の養成を目的として類似のものがあり,今日ではその数も15の大学に及び,その他イギリス,カナダ,オーストラリア等にも行われているが,多くは大学院過程となつているので医学部の大学課程に採り入れられたものは全く新しい事であろう。

臨床專門科について

著者: 守屋博

ページ範囲:P.3 - P.5

 医者と云えば,内科ですか,眼科ですか,と云う位専門のない医者はなくなつている。大昔は病気は何でも医者の所へかつぎこんで来たので一人で凡ての病気を癒したにちがいない。しかし医学が段々進歩して,覚える事が次第に増して来て治療の方法も段々複雑になつて熟練を要する様になつて来ると,分業の原則によつて,段々狭く深く勉強する様になつて来た。
 一人の医師の熟練する能力には自ずから限度があるので,広く勉強する人は浅くなり,深く究める人は狭くなる。深さが深くなればなる程狭くなる。しかし逆は真ではなく,間口の狭い人必ずしも深くないのだが,世間は馬鹿だから狭ければ深いと思つているが,狭くて浅い人も多数いるものである。いずれにしても狭く深い方向が近頃の流行である。

小兒科外來

著者: 今村榮一

ページ範囲:P.6 - P.10

 病院における外来の問題は,わが国において独自の立場で考察されねばならないであろう。Open制の病院にあつては外来は必要ないか,あつても一附屬物として取り扱われる程度であつて,文献をみてもわが国とは事情を異にしているようである。もともと外来で行うことは病院という大きい設備を使わないでもできることが多く,又病院と開業医との間に生じる問題も外来の存在がその一団をなしていることが少くないが,わが国の現在の病院の形態にあつては外来を切り離すことはむずかしい。そこで外来のあり方については病院のあり方と同じく,新たに考え直されるべき点が少くないと思う。ここでは小児科の外来を取り上げてみようと思うが,外来の本質を論じるというよりは,現在あるがままの小児科外来について一応反省を試み,事情を明らかにしたいと思う。

病院簿記について

著者: 山村輝雄

ページ範囲:P.11 - P.19

 御承知の通り商業には商業簿記,銀行には銀行簿記があり,その他工業簿記,農業簿記,等各々その業態に適するように考案された簿記があります。
 そこで病院(診療所等を含む,以下同)の経理に適した病院簿記ともいうべきものがあつても良いのではないかと思いまして考案致しましたのが之れから申上げます新しい形の簿記であります。

病院の螢光灯照明

著者: 櫻井省吾

ページ範囲:P.21 - P.24

 新らしい照明用光源として,螢光ランプが1938年に出現して,既に15年になる。我国に於ても昭和14年頃試作されここ1,2年来螢光ランプ照明は急激な発展をした。"世紀の光源"と謂われるこの輝かしい高効率な光が,各処のビルの窓々から見られ,また商店,百貨店内に活気ある照明を与えている。病院の如き近代施設には,是非ともこの進歩的な新らしい照明を普及せしめ度い。
 わが国の病院照明を米国合衆国のそれと比較すると,はなはだ貧弱な現状にある。わが国の主な病院照明の調査によると,その照度(照明されている面の明るさ,この単位をルクスと(1ux)称える。これはm2当りのルーメン(1m/m2)である。)は米国合衆国のそれの約数分の1程度に過ぎない所が多い。殊に手術室照明の如きは,甚だ低照度で,手術作業に困難ではないかとさえ思われる程である。

温泉病院に関する2〜3の問題(上)

著者: 伊藤久次

ページ範囲:P.25 - P.30

1.温泉病院(療養所)存在の意義
 温泉病院とは温泉地の病院の謂いではなくて,まだ「温泉科」ともいうべき診療科名は現行医療法では認められていないが,温泉国日本では,必ずや将来設定されるであろう「温泉科」を病院名に冠したものであつて,しかも温泉地にあつて,温泉療法を治療の主体とした病院を呼称したい。
 狭い4つの島に温泉場数933,源泉数6305と称せられ,この国は温泉の数において,又泉質の種類において惠まれている点では世界に冠たるものがある。日本国民の温泉を愛好し利用することも多く,温泉の歴史は既に神話伝説にもある程古く,国民総人口の3分の1に該当する利用者延数が統計上見受けられる。反之温泉の近代医学的利用法は我国では却つて発達遅々たる状況であつて,温泉に乏しい欧洲諸国に比し著しい遜色があり,場所によつては今日尚民間療法の域中にある場合すら認められる。しかも亨樂的気分の溢れた温泉地は全国到る所に,その例を見る様になり,1部の人士は温泉利用を極力亨樂面のみに好んで指向した結果,温泉即歓樂也という風になり,遂には人工東京温泉等というものまで出現する世の中とはなつた。

入院患者と慰安

著者: 遠藤保喜

ページ範囲:P.31 - P.34

1.病院の目的と患者の立場
 病院の目的は言う迄もなく,傷病者が科学的で且適正な医療を受けることができることに在るのであつて,何れの病院も日夜その目的に向つて全力を尽しているのであるが,治療の対象となる患者は,性格,教養,社会的地位,職業,生活状態等種々その内容程度を異にして居り,之を単に(患者)なる名称によつて表示され抽象化され,た。同一性質の人間として抱括的に取扱うことは大いに困難と不合理が伴うことは明かなことであろう。
 従つて病院の目的に合致するよう,迅速且効果的な治療を施そうとするには,自ら病院の目的に,患者の心裡を同化せしめなければならない。然も患者は何れもその治療を病院側へ一任しているのであつて,患者自らも治癒の日も速かならんことを希つていることは勿論である。

綜合病院の設計と構造(8)

著者: 小川健比子

ページ範囲:P.36 - P.41

第9章 診察及処置室
(Adjunct Diagnostic and Treatment Facilities)
研究室(Laboratory)
 50床以下の小病院に於ては,あらゆる研究をするための,研究室は一つで充分である。大病院になると,病理学(Pathology)血清学(serology)細菌学(bacteriology)生化学(chemistry)(hematology)採尿(urinalysis)血液銀行(blood)等特殊な研究をするために,一般には個別的な室を割当てる。
 大病院に於ては,病理学者の室と,秘書室をとり,又ここに来る患者のために,検査物を採るために小部屋と,小待合室を設備する。

アメリカ臨床病理學者協会医學検査技術者登録所の紹介

著者: 白戶三郞

ページ範囲:P.43 - P.49

定義
 医学検査技術に従事する職業について正しい論議をするためには,病理学及病理学者の定義をはつきりしておく必要がある。その理由は医学検査技術の仕事と病理学の仕事は必ず相互に関連しているからである。
 写書には,「病理学は疾病,その本質,原因及び進行とその疾病によつてひきおこされる構造及び機能上の変化を取扱う科学である」といつている。

病院関係人事消息

ページ範囲:P.50 - P.50

◇岩永 仁雄氏(阪大外科教授)大正13年3月以来阪大外科学教授たりし氏は,本年3月停年制の申合せにより勇退された。先般関西労災病院長に就任。氏は大正5年九大医学部を卒業,同学助教授から大正13年9月阪大外科教授となり現在に至つた人である。
◇柳金太 郞氏(東京医歯大内科教授 東京医科歯科大学医学部附属病院長藤井久四郎氏が院長の併任を解除されたので,藤井氏の後任病院長に併任さる。氏は大正10年東大医学部卒,島薗内科教室より関東保健館長から台北大教授となり,終戦後厚生省療養研究所長を経て医歯大内科教授となつた人である。

Dr. Moriya's Recordtape

著者: 守屋博

ページ範囲:P.51 - P.52

(23)名人藝について
 戦後我国に輸入された米国調と云うものに何となく,我々はなじめない点がある。その根源という物については色々に云われているが,私は大量生産,格一品と云う所にあるのではあるまいかと考える。独逸風に考えると,über alles,一つの世界最高の物を造る為には他のすべての物をぎせいにしてもよいと云う事である。焼物一つつくるにもあらゆる土,あらゆる釉薬をぎん味して最高の窯で最高の職人をつかつてやろうと云う事である。その為には各親方は自分専用の道具を自分自身で訓練した弟子共につかわせねばならぬ,出来合の百貨店で売つている様なものでは間に合わぬ。出来たものは数が少く,しかも高価である。大衆の利益とははるかに縁のないものであり,次の進歩から云うとどれも袋小路になつている。
 医療についても同様の事が云える。個々の名医はそれぞれ自分専用の器械をつかい,自分専用の弟子と,自分専用の看護婦がいないと気がすまぬ。勿論この様にすべてのものを自分に合わせてつくれば,よりよい医療も手術も出来るであろうが,その為には,大変な無駄と,不能率を覚悟せねばならぬ。

日本病院協会だより

ページ範囲:P.53 - P.53

◇ 東京病院協会總会
1.期日5月27日(水)会場 吾妻橋ビヤホール2階 経了後後4時より病院幹部職員懇談会開催,会費1名500円
2.諸報告(1)庶務報告(2)会計報告

編集後記

著者: 守屋

ページ範囲:P.56 - P.56

○鳴物入りの総選挙も終つたが,ふたをあけて見ると若干の左派の進出を見たのみで,大勢はやはり自由党にある事になつた。しかし選挙民も段段と,批判的になつて来ているのは争えない事実であつて,殊に6年前無批判に組識からおされた参議員選挙も結局は人にある事がわかつて来た様だ。ここらで看護婦代表も次の新人が現われる事が必要であろう。
○薬系からは衆望を負つて,高野一夫氏が出て来たが氏は有名な医薬分業論の鬪士であるのでいずれその方の活動が始るであろうが,元来が医薬分業の方が合理的である事はあるが単に医師の調剤権禁止と云う独善的な案でなく,日本の実情に即した大衆のついて行ける様な分業論であつてほしい。

病院長プロフイル・3

光るイソニアジツトの功績知力,体力,努力の揃つた讀書人東京療養所長砂原茂一氏

著者: 長井盛至

ページ範囲:P.20 - P.20

 国立療養所は,全国に渡つて百数十ヵ所あるが,その所長の中で,最も光つた存在は,蓋し砂原茂一氏であろう。
 彼は専ら結核の治療とその研究にとつくみ出してまだ10年にもならないと言うのに,今日押しも押されぬその道の第一人者として,自他共にゆるしているのは,それは彼の頭のよさと努力と,それを許した体力との三拍子揃つていたためであろう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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