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特集 新・ケアミックスが病院を変える—超高齢社会の患者ニーズの複合化への対応 ケアミックス化の必然性
医療経営学からみたケアミックス化の構造と利点
著者: 西田在賢12
所属機関: 1県立広島大学 2HBMS地域医療経営プロジェクト研究センター
ページ範囲:P.854 - P.857
文献購入ページに移動ケアミックスという用語は医療関係者の間で使われるようになって久しいが,意外なほど人によって捉え方が違うのではないだろうか.そのようなことからも,本誌が「新・ケアミックス」と題した特集を組んで昨今のケアミックスの考え方を包括的に説明しようとするのはたいへん興味深い.そこで,医療経営学(Health Policy, Business and Management)の視点から「新・」とわざわざ断わる理由を考えてみたい.
まず経営学の視点から見れば,言うまでもなくケアミックスは「病院における事業の多角化」のことである.ただし,その多角化は病院の付帯業務でもなければ,社会医療法人などに許されているような収益業務でもなく,病院の本来業務,つまり医業・介護の本体事業に限った多角化と言える.
さて,経営学では自分が営む事業がどういうものなのかをあらためて考える重要性を「事業ドメイン」の学びとして教える.例えば,かつて鉄道会社は自分たちを鉄道事業者と定義づけたため,自動車やバスなど競合する輸送事業者たちに負けてしまうということがあった.しかし,自分たちの利用者を念頭に事業展開を見直すことでターミナル百貨店,そして宅地やリゾート地の開発といった事業で会社を再興し,さらに近年はエキナカ商店などへと事業範囲を拡げていることは事業の多角化にほかならず,自身の事業ドメインを見直す努力を続けていることにほかならない.
実のところ,事業ドメインは時代とともに見直しを図ることが不可欠であり,要するにドメインを設定することは,社会の変化に対応するために「どのような顧客に対して,どのような技術をもって,どういった価値を提供するのか」を特定することであり,昨今のように技術やビジネスや生活スタイルが大きく変わっていくときには,事業者それぞれでドメインの見直しと再定義をすることが不可欠となる.
本特集が「新・ケアミックス」と題するのも,大きな時代変化に遭遇する昨今の病院事業者に向けて事業ドメインの見直しを促そうとしているものと考える.
そこで,筆者が専門とする医療経営学の視点から「新・ケアミックス」の捉え方と今後の姿について説明してみたい.
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