病院の資金調達手法—融資(ファイナンス)・リース・ファクタリング
著者:
岡安保雄
ページ範囲:P.950 - P.953
■資金使途から選択されるべき調達手法
「資金を調達する」際は,手元資金が不足している,新しく設備投資をしたい,など資金の使い道,「資金使途」が必ず存在する.金融機関は,まず,この資金使途について吟味する.具体的には,コンプライアンスや事業継続性などと照らし合わせて,問題はないのかを検証する.例えば,他の法人へ貸付するための資金や不動産投資・株式投資などの資金なら,審査に値しない使途と言える.2020年度は新型コロナ感染症のため,急激な患者の減少あるいは抑制,予期せぬ大規模な院内感染症対策などで資金繰りが逼迫することを懸念し,福祉医療機構の「コロナ対策緊急融資」を目一杯利用した病院が相当数あったと承知しているが,こうした「念のため」や「万が一」という資金使途はレアケースである.資金使途の妥当性が認められると,最も適正な調達手法が検討される.これが掲題の融資・リース・ファクタリングなどの調達手法ということになる.資金使途から調達手法が決まると,金利,返済期間,担保,保証人などの融資の諸条件について返済計画と照らし合わせて審査が行われ,融資が実行される,これが一連の流れである.
当たり前のことであるが,「資金を調達する」ことは,その資金で病院事業をサスティナブルなものにし,向上,発展させるために行われるものでなければならない.融資する金融機関も分かっていることではあるが,業界全体で融資残高が伸び悩んでいる中で,病院にとって使い勝手の良い提案をすることで,自行の融資残高の拡大を図ろうとする金融機関も実在する.結果として,その資金使途から本来選ばれるべき,最も適正な調達手法が選択されていないケースも散見される.もっと言えば,金融機関としての社会性・公共性から,本来なら融資すべきでないような案件まで実行され,窮地に追い込まれる病院経営者も目にする.本稿では融資(ファイナンス)の基礎ならびに選択されるべき調達手法について説明し,アフターコロナを展望した金融の在り方について解説する.