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雑誌目次

雑誌文献

病院80巻3号

2021年03月発行

雑誌目次

特集 Withコロナ時代の病院経営 医療をとりまく環境の変化

新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた今後の医療提供体制

著者: 福島靖正

ページ範囲:P.196 - P.199

■はじめに
 本稿を始める前に,まず,今回の新型コロナウイルス感染症にご対応いだいている皆様に心より感謝申し上げる.
 さて,厚生労働省では,第2次ベビーブームの時に生まれた人たちが概ね65歳以上になる節目の年である2040年における医療提供体制を見据えた改革として,現在,医療施設の最適配置と連携を進めるための地域医療構想の実現,医師・医療従事者の働き方改革および医師偏在対策の3つの施策を一体的に進めている.
 一方,今回の新型コロナウイルス感染症への対応の経験を通して,このような大規模の患者が発生する感染症に対応するためのさまざまな課題があることが明らかになった.
 「経済財政運営と改革の基本方針2020」(令和2年7月17日閣議決定)においても,医療提供体制の構築に関し,「感染症への対応の視点も含めて,質が高く効率的で持続可能な医療提供体制の整備を進めるため,可能な限り早期に工程の具体化を図る」とされているように,今後,同様の新興感染症等が発生した場合に適切に対応できる医療提供体制の整備を図っていかなければならない.また,同時に,質の高い効率的な医療提供体制の構築に向けた取り組みを着実に進めていく必要がある.

—Withコロナ時代の医業収入安定化—かかりつけ医制度定着に向けた入院外医療費の定額払い化に関する試論

著者: 土居丈朗

ページ範囲:P.200 - P.205

■激減した2020年度上半期の入院外医療費
 新型コロナウイルス感染症(以下,新型コロナ)の影響で,2020年度上半期の入院外医療費は大幅に減少した.厚生労働省「最近の医療費の動向-MEDIAS-」によると,概算医療費の入院外医療費(医科計)は,対前年同月比(休日数等の影響補正後)で4月は-16.6%,5月は-16.9%,6月は-7.1%,7月は-2.3%,8月は-1.8%と,3月以降連続して減少している.特に,4月と5月の落ち込みは大きかった.これは,4月に緊急事態宣言が発令されて以降,受診控えが起きたことも大きく影響しているとみられる.
 この受診控えの多くは患者の自己判断によるものとみられる.その中には,診療が必要なのに受診しないという意味で過少受診が起きていた可能性が示唆される.他方,日本の1人当たり年間平均外来受診回数が国際的に見て多いと従来から指摘されており,過剰受診があったものが受診控えで顕在化した部分もあるだろう.その他にも,新型コロナの感染疑いがある者が,事前連絡なしに医療機関を受診して混乱が生じた事例も多々あった.これらは,外来医療において,多くの国民がかかりつけ医を持っておらず,かかりつけ医制度がわが国で十分に定着していない実態を新型コロナが露わにしたものといえる.

Withコロナ時代の病院経営を左右する要因

新型コロナウイルス感染症と診療報酬の特例

著者: 島崎謙治

ページ範囲:P.206 - P.211

■はじめに:問題の所在と本稿の目的
 新型コロナウイルス感染症(以下,コロナ)の蔓延に伴い医療機関の経営が悪化している.このため,医療関係者の間では,補助金等の財政支援のほか診療報酬の特例的対応に対する期待が高まっている.こうしたなかで,政府は2020年12月半ば,①小児の外来診療について感染予防策を講じている場合,2020年12月15日から加算を認める特例(以下,小児外来診療特例)を設けるとともに,②2021年4月から,感染予防策を講じている医療機関について初・再診料や入院料等の加算を認める特例(以下,一般診療特例)を設けることを決めた.表はその決定過程および内容をまとめたものである.
 コロナに関する診療報酬の特例的対応はこれが初めてではない.2020年4月8日,コロナ感染の疑いのある患者の外来診療に関する院内トリアージ実施科の算定措置,コロナ感染の入院患者の救急医療管理加算の算定措置が講じられたのを皮切りに,数度にわたり特例的対応が図られてきた.しかし,今般の小児外来診療特例および一般診療特例(以下,今般の特例)は,これまでの診療報酬の特例とは異なる点が2つある.1つは,従来の特例はコロナの感染(感染疑いを含む)との関係が直接的であったのに対し,今般の特例は感染予防策が講じられていれば算定できることである.端的に言えば,実質的には医療機関の減収補塡だという批判がある.もう1つは,今般の特例は,中央社会保険医療協議会(以下,中医協)に諮る前にその内容が閣僚折衝により決定されたことである.つまり,中医協の審議権がないがしろにされたという批判がある.
 もっとも,こうした批判に対しては,医療現場では実際に感染予防の出費がかさんでいるという反論があろう.また,そもそも医療機関の経営が危機に瀕しているなかで,診療報酬により減収補塡してなぜいけないのか,政治主導で救済策を講じるのは当然ではないか,といった反論もあると思われる.
 両者の見解の対立は,単に立場や価値観の違いに帰される問題ではなく,診療報酬の法的性格や中医協の存在意義に関わる本質的な問題である.このため,本稿では,今般の特例について法的な観点から評価・検討を行いたい.なお,コロナに関する診療報酬の特例としては,施設基準など算定要件の特例(例:コロナ患者の受入れにより施設基準を満たせなくなった場合の特例)もあるが,本稿は点数設定に関わる特例に限定して論じる.

Withコロナ時代の地域医療計画と地域医療構想

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.212 - P.218

■はじめに
 新型コロナウイルス感染症(以下,新型コロナ)が全世界で拡大している.2020年12月20日現在で全世界の感染者数は75,110,651人,死者数は1,680,395人となっている1).ワクチンの開発およびその認可が急ピッチで行われ,米国,英国ではその接種が始まっている.ワクチンの導入により楽観的な見方もある一方で,一般人口での実際の効果は現時点で不明であり,むしろ英国での変異株発生による感染拡大の可能性が人々の不安を高めている.日本国内でも2020年11月に入ってから患者数が急増しており,同年12月20日現在で国内での新型コロナの感染者は195,880名,死亡者は2,873名,入院治療などを要する者は26,852名,退院または療養解除となった者は165,333名となっている2).本稿執筆時点で,わが国は感染者数,陽性者数ともに欧米より少ない.しかし,死亡率の高い高齢者で感染拡大が進めば,医療現場の崩壊やそれによる死亡者数の急増が起こる危険性は否定できない.特に,同年12月以降は高齢者施設,障害者施設でのクラスターの発生が続発しており,予断を許さない状況になっている.これまでの研究で高齢であることは新型コロナによる死亡の重要なリスクファクターであることが明らかとなっており,また糖尿病や悪性腫瘍,呼吸器疾患の罹患,肥満,低栄養,ADL障害も死亡に有意に関連する要因として指摘されている3)
 こうした中,新型コロナをはじめとした感染症対策が地域医療計画に含まれることとなった.具体的には,2020年12月15日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」では医療計画の6事業目に「新興感染症対策」を盛り込み,「感染拡大時に対応するための準備などの平時からの取組」と「感染拡大時の取組」とを分けて記載することが了承された(図1)4)
 この見直しにおける方針は適切である.しかしながら,新興感染症を含めた健康危機管理は2009年の新型インフルエンザの流行および2011年の東日本大震災の経験を踏まえて,2013年からの第6次医療計画で記載されることになっていた.実際,作成された計画の多くで「警察・消防・救命救急センター・検査機関・行政機関による健康危機管理対策会議を設置し,連絡体制の確保及び健康危機を想定したシミュレーションの実施を行う」といった内容が盛り込まれている.しかしながら,筆者が調べた限りにおいて,ほとんどの計画で連携の方法に関する具体的な記載がなかった.例えば,新型インフルエンザ流行時の基幹病院をどこに位置付けるのか,発熱外来をどの施設に設置し,その連携体制をどうするか,ロジスティックの確保をどうするのかなどの記載がある地域医療計画は見つけられなかった.もし,こうした検討が第6次医療計画で十分に行われていたとすれば,今回の新型コロナウイルス流行に当たっても,より適切な対応ができていたのではないかと悔やまれる.いずれにしても,今回の経験をもとに,われわれは健康危機管理に強い医療提供体制を構築することを求められており,そのためにも地域医療計画と地域医療構想の役割が重要になると考える.
 本稿では以上の問題意識に基づき,今後の地域医療計画および地域医療構想で検討されるべき事項について筆者の私見を述べたい.

Withコロナ時代の医師需給・偏在対策

著者: 裵英洙

ページ範囲:P.219 - P.223

■迫りくる地殻変動
 COVID-19(新型コロナウイルス)によって医療界は大きく変化している.
 まず,人の働き方や生活スタイルの変化による医療マーケットの構造変化だ.リモートワークの推進やCOVID-19不安による都市離れも起きており,人口動態が動き出している.つまり,今後の医療界マーケットの変動要因としてCOVID-19による生活様式の変化が無視できなくなる可能性が出てきたのである.総務省の住民基本台帳人口移動報告によると,2020年10月に東京都から他道府県に「転出した人」は前年同月比10.6%増の3万908人,他道府県から東京都に「転入した人」は7.8%減の2万8,193人で,2,715人の「転出超過」となっている.これまで,東京への一極集中が人口動態のお決まりのパターンであったが,コロナ禍による住まいや働き方を含めた人生観や生活スタイルの変化が出始めている.人口の動き,ひいては患者マーケットにも影響を及ぼす大きなうねりになる可能性が出てきたのだ.他方,人口減少,それに続く患者減少に悩んでいた地方には慈雨となり,将来の患者増につながるマーケット拡大の萌芽となり,今後の医療提供体制の変数の一つとして気になるところだろう.

Withコロナ時代の働き方改革

著者: 馬場武彦

ページ範囲:P.224 - P.227

■はじめに
 2017年8月より厚生労働省において,「医師の働き方改革に関する検討会」が立ち上げられ,筆者も構成員に選任された.「医師の働き方改革に関する検討会」の報告書(以下,報告書)は2019年3月に取りまとめられ,5年間の準備期間の後に2024年4月より施行される予定である.医師の働き方を大きく変えるものであり,医療提供体制に与える影響は多大であろうと予想される.一方,報告書内容には地域医療提供体制を守る観点からの配慮も多く見られ,医療機関は内容を吟味した上で,適切な対応が求められている.

Withコロナ時代に加速するオンライン診療

著者: 宮田俊男

ページ範囲:P.228 - P.231

■はじめに
 なぜ今,オンライン診療か.ビデオ通話を用いたオンライン診療は以前から行われていたが,保険診療の対象となる疾患が限定されており,また,特定の疾患を除いて初診時は原則として対面診療を行うことなどの制約があったため,実施している医療機関は少ない状況であった.しかしながら,新型コロナウイルス感染症(以下,新型コロナ)の拡大を受け,希望する患者が医療機関に行かずに診察を受けることができるオンライン診療の対象が拡大してきた.新型コロナによって,オンライン診療は大きく進展したと言えよう.Withコロナ時代においてオンライン診療のニーズは続いており,一方で全体の外来受診数は回復しつつも完全には戻ってこないと考えられ,オンライン診療の報酬があまり高くないとはいえ,オンライン診療が医療機関経営にとっても重要な柱になっていくのではないかと考えられる.一方,初診についてはさまざまな課題があり,以下考察していく.

Withコロナ時代に地域医療を支える病院のあり方

Withコロナ時代の公立病院のあり方

著者: 小熊豊

ページ範囲:P.233 - P.237

■はじめに
 全国自治体病院協議会(以下,当協議会)は867の正会員と239の準会員(診療所)からなり,全国の病院の約11%,病床数の約14%を占めている.会員の約85%は人口30万人未満の市町村に存在し,約65%は10万人未満に,約30%が3万人未満の市町村に所在している.
 自治体病院に期待される主な役割は,①山間へき地・離島など民間医療機関の立地が困難な過疎地等における一般医療の提供,②救急・小児・周産期・災害・精神などの不採算・特殊部門に関わる医療の提供,③地域の民間医療機関では限界のある高度・先進医療の提供,④研修の実施等を含む広域的な医師派遣の拠点機能,とされている.今回の新型コロナウイルス感染症(以下,コロナ)は,上記②,③に相当し,公立病院の使命の一つに該当すると思われる.自治体病院は,特定感染症指定医療機関4病院中2病院(50%),第1種感染症指定医療機関55病院中32病院(58%),第2種感染症指定医療機関537病院中266病院(50%)を占め,感染症対策にも中心的役割を発揮することが期待されている.
 当協議会では,コロナパンデミック第1波に際して会員病院がどのように対応し,今後もどう立ち向かうかをアンケート調査し,その結果を報告した1〜4).また,厚生労働省(以下,厚労省)からは新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)データの解析結果が公表され,医療計画に6事業目として「新興感染症等の感染拡大時における医療」の項目が追記されることになって,現在多くの検討が開始されようとしている(表1).本稿では,これらを踏まえてwithコロナ時代,さらには未知の新興感染症に向けての公立病院のあり方を展望したい.もちろんコロナに対しては,ワクチンが実用に供されるようになると,全ての医療機関の役割が現状と大きく変わると考えられるが,本稿ではその点には触れないことをお断りしておく.

Withコロナ時代の民間病院経営

著者: 河北博文

ページ範囲:P.238 - P.241

■地球環境とCOVID-19
 2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から始まったと言える.わが国をはじめとし,全世界の国家や地域は文化,科学,経済,政治のあらゆる分野でCOVID-19後の新しい社会に向けて,未経験の変革が問われることになった.数々の大震災,風水害が起き,2008年にはリーマンショックがあったが,今回のCOVID-19が経済に及ぼす影響は,1929年の世界大恐慌や,1945年に終結した第2次世界大戦による経済への影響より大きく長いのではないかと言われている.最近のこれらの多くは,産業や生活からの二酸化炭素の排出の増大が引き起こす温暖化現象の結果であると考えられる.わが国の気候は20世紀半ばに比べ温暖化が進み,時期にもずれが見られ,変動の幅がはるかに大きくなっていると実感できる.変動の幅が大きいということは,雨は降れば土砂降り,風は吹けば台風並みの風ということである.日本列島はもはや温帯ではなく亜熱帯と言ってもいいだろう.われわれが経験しているCOVID-19を含めた未知の感染症も自然の変動と無関係であるとは言い切れないのではないか.今日のCOVID-19の感染は,当初,国内においても海外においても,このような脅威になるとは予想されていなかった.人の移動が速く,遠く,激増した現代社会においては歴史的災禍であり,各国にとって国難という事態を乗り越えることは容易ではないことと思うが,わが国の医療関係者が結束し英知を結集すれば必ず克服できるものと信じている.武見太郎は日中友好病院寄贈の時,「将来未知の感染症に対応できる病院にするように」と述べていた.
 そして,COVID-19は3つの感染の側面を持っている.1つ目は病気という感染症.2つ目は心理的感染症である.不安と恐れが自分から人に伝わる.さらに社会的感染症が3つ目である.嫌悪,偏見,差別が社会に広く,早く,伝わってしまう.特に,SNSなどを通じて今日の社会はこの傾向が非常に強いと思われる.病気が不安を呼び,不安が差別を生み,差別がさらなる病気の拡散につながること.これを防ぐには,上のことを一人一人が十分認識することが不可欠である.

Withコロナ時代の地域包括ケアとは

著者: 鈴木邦彦

ページ範囲:P.242 - P.247

■地域包括ケアの深化と中小病院の役割
 地域包括ケアシステムは,地域でのさまざまな実践を通じて進化と深化を遂げ,障がい児・者や子どもも含む全世代・全対象型に発展した.日本地域包括ケア学会の田中滋理事長によると,2019年版の概念は,「日常生活圏域を単位として,活動と参加について何らかの支援を必要としている人々,例えば児童や幼児・虚弱ないし要介護の高齢者や認知症の人,障がい者,その家族,その他の理由で疎外されている人などが,望むなら住み慣れた圏域のすみかにおいて,必要ならさまざまな支援(一時的な入院や入所を含む)を得つつ,できる限り自立し,安心して最期の時まで暮らし続けられる多世代共生の仕組み」である.
 社会保障・税一体改革の道筋を示した社会保障制度改革国民会議報告書の公表を受けて,その2日後の2013年8月8日の日本医師会(以下,日医)・四病院団体協議会(以下,四病協)合同提言1)と同年11月18日の四病協追加提言では「地域医療・介護支援病院」が提案された.単科専門病院以外の許可病床数200床未満の中小病院に求められる地域包括ケアを支える病院として,日医も地域密着型の中小病院を提唱していた.これらは,2018年度の診療報酬改定で,地域包括ケア病棟入院料・同入院医療管理料1および3として評価された.

対談

コロナで病院経営はどう変わる?

著者: 相澤孝夫 ,   太田圭洋

ページ範囲:P.181 - P.186

新型コロナウイルスのパンデミックは病院の運営面・経営面に大きな影響を及ぼし,さまざまな変化をもたらすと考えられる.
変革の時代に,病院はどう対応すべきか.
日本病院会の相澤孝夫会長に展望を伺う.

特別記事

Power BIを用いた病床機能報告データの可視化—地域医療構想の議論活性化を目的として(後編)

著者: 今村英香

ページ範囲:P.250 - P.257

[前編(本誌前号p154)より続く]

連載 アーキテクチャー×マネジメント・75

東八幡平病院

著者: 及川忠人 ,   室殿一哉 ,   青山徹 ,   岩井友佑 ,   桑原聡

ページ範囲:P.188 - P.193

■はじめに
 東八幡平病院は,南に南部富士として名高い岩手山を間近に,北西に八幡平の日本百名山二峰が広がり,かつて東洋一の硫黄産出量を誇る松尾鉱山で栄えた岩手県八幡平市に位置している.
 施設を運営する一般財団法人みちのく愛隣協会は,東八幡平病院(1978年創立)と介護老人保健施設「希望」(1998年創立)を同敷地内に有し,キリスト教に基づく「愛隣の精神」と「信頼と愛情」を基本理念に掲げて,地域医療をはじめとした地域包括ケアの先駆となる「地域リハビリテーションセンター」としての活動を長年にわたり実践している.
 東日本大震災以降,老朽化や機能強化に対応すべく新病院建築計画を検討してきたが,2015年に設計に着手し,2018年に増改築工事が完成した(図1,2).

事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・26

社会医療法人仙養会 北摂総合病院—教育・研修機能を持つ急性期コミュニティホスピタル

著者: 深澤宏一

ページ範囲:P.259 - P.263

 社会医療法人仙養会が運営する北摂総合病院(以下,同院)は,京都市と大阪市との中間に位置し,二大都市のベッドタウンとして発展してきた大阪府高槻市にある217床の急性期病院である.
 同院は「VERY BEST」を病院の理念として掲げており,これは個々の職員が持っている能力を最大限に発揮することで,まさに最良(VERY BEST)の病院となって最高の医療を実現し,地域の方に安心と満足を提供しようというものである.本稿では,周辺の医療機関や介護施設等とヘルスケア・ネットワーク体制を充実させ,利用者サイドに立ったベストな医療・介護・福祉の連携サービスを実現している同院の取り組みを紹介したい.

病院で発生する「悩み」の解きほぐし方・11

虐待が疑われる場合に,どうしたらよいのでしょうか?

著者: 越後純子

ページ範囲:P.266 - P.268

Case
❶救急外来に,2歳の幼児が「階段から転落し上腕を骨折した」と,母親に連れられてきました.診察したところ,体格が同年代の平均より20%くらい下回っていました.今回の受傷部分以外に,内出血したような痣が数カ所見られ,その性状から,受傷時期は今回ではなく,一定時間経過したものが複数含まれているように見えます.
❷救急外来に,75歳の介護施設入所者が「ベッドから立ち上がろうとしたところ,頭部を打撲し,一時的に意識不明に陥った」と施設職員に連れられてきました.頭部CTを行ったところ,軽度ですが,外傷性のくも膜下出血が認められました.また,今回の受傷部分以外に,体幹部にも内出血したような痣や褥瘡が新旧複数箇所見られ,その性状から,繰り返し発生しているように見えます.来院時,患者の意識は回復していたので,受傷機転を聞いてみましたが,介護職員に突き飛ばされたと言ってみたり,自分でよろけたと言ってみたり,一貫性がありません.
❸救急外来に,30代の女性が「転倒し,顔面を強打した」と受診しました.顔面の腫脹が強かったことから,検査を行ったところ,頬骨および鼻骨が骨折していました.不審に思った看護師が患者に尋ねたところ,「同棲している男性から頬部を殴られたが,医師には黙っていてほしい」と言われました.

感染症新時代—病院はどう生き抜くか・6

港区みなと保健所・松本加代所長インタビュー(2)

著者: 堀成美 ,   松本加代

ページ範囲:P.269 - P.271

前回は,新型コロナウイルス感染症への医療提供体制の中で,保健所が特殊な位置で役割を担っていることを紹介した.今回は,医療機関・高齢者施設のクラスター発生予防・迅速対応をテーマに,保健所と医療機関のやりとりの課題・解決策を検討する.

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目次

ページ範囲:P.194 - P.195

Book Review —医療者のための—成功するメンタリングガイド

著者: 内海桃絵

ページ範囲:P.265 - P.265

Back Number

ページ範囲:P.273 - P.273

次号予告

ページ範囲:P.276 - P.276

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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