文献詳細
特集 Withコロナ時代の病院経営
医療をとりまく環境の変化
—Withコロナ時代の医業収入安定化—かかりつけ医制度定着に向けた入院外医療費の定額払い化に関する試論
著者: 土居丈朗1
所属機関: 1慶應義塾大学経済学部
ページ範囲:P.200 - P.205
文献概要
新型コロナウイルス感染症(以下,新型コロナ)の影響で,2020年度上半期の入院外医療費は大幅に減少した.厚生労働省「最近の医療費の動向-MEDIAS-」によると,概算医療費の入院外医療費(医科計)は,対前年同月比(休日数等の影響補正後)で4月は-16.6%,5月は-16.9%,6月は-7.1%,7月は-2.3%,8月は-1.8%と,3月以降連続して減少している.特に,4月と5月の落ち込みは大きかった.これは,4月に緊急事態宣言が発令されて以降,受診控えが起きたことも大きく影響しているとみられる.
この受診控えの多くは患者の自己判断によるものとみられる.その中には,診療が必要なのに受診しないという意味で過少受診が起きていた可能性が示唆される.他方,日本の1人当たり年間平均外来受診回数が国際的に見て多いと従来から指摘されており,過剰受診があったものが受診控えで顕在化した部分もあるだろう.その他にも,新型コロナの感染疑いがある者が,事前連絡なしに医療機関を受診して混乱が生じた事例も多々あった.これらは,外来医療において,多くの国民がかかりつけ医を持っておらず,かかりつけ医制度がわが国で十分に定着していない実態を新型コロナが露わにしたものといえる.
参考文献
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