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雑誌目次

雑誌文献

病院80巻4号

2021年04月発行

雑誌目次

特集 医薬品・医療材料をどうコントロールするか 医薬品・医療材料の現況

医薬品・医療材料の費用対効果評価の現状と政策

著者: 福田敬

ページ範囲:P.292 - P.294

■費用対効果評価の必要性
 日本の国民医療費は2017年度には約43兆円となっており,増加傾向にある.医療費増加の要因の一つとして挙げられるのは人口の高齢化であるが,これと並んで大きな要因と考えられているのが医療関連技術の進歩である.
 近年,さまざまな新しい医薬品,医療機器などが開発され,臨床の現場で用いられるようになってきている.新しい技術によって従来治療できなかった患者の治療が可能になるなどの大きなメリットがあり,これは誰もが望むことである.しかし,一方でこれらの医薬品などの中には高額なものもあり,医療費財源への影響が大きい場合も想定される.日本の公的医療保険制度は,国民からの税金と健康保険料を主な財源としており,このような公的な財源をいかに効率的に利用していくかは重要な課題である.

医薬品の費用対効果と価値をめぐる議論とは—高額薬剤とオカネ/いのち

著者: 五十嵐中

ページ範囲:P.296 - P.299

■はじめに:日本の皆保険,世界の皆保険?
 半世紀以上の長きにわたって日本では,「国民皆保険制度」という言葉が「全ての国民が公的医療制度に加入できる(実質的には,加入する義務がある)」状態という本来の定義を超えて,「その公的医療制度でほぼ全ての医薬品が賄われる」状態として理解されてきた.
 本来のUniversal Health Coverage(UHC)は,世界的には「全ての人が必要な保健サービスを金銭的な困難なく享受できること」と定義される.UHCの達成度合いは3つの軸,すなわち「保健システムがカバーする人口」「保健システムがカバーするサービス」「患者の自己負担金額」で評価され,必然に「より多くの人に,より多くの保健サービスが,より低廉な自己負担で提供されている」ほど,理想的な状態とされる.それゆえ,「全ての医薬品をカバーすること」は決して必須条件ではなく,いわゆる「皆保険」を導入している国であっても,承認されている医薬品を一律に公的医療制度でカバーするのはむしろ例外的である.
 承認されている医薬品のうち,「全部」ではなく「一部」をカバーする,もしくは自己負担割合・給付価格などに傾斜をつけるとなれば,何らかの基準を用いてカバーの可否や,自己負担割合・給付価格を決める必要が出てくる.だからこそ諸外国で,この基準の一部として効率性や費用対効果のデータを用いる動きが進んでいる.
 全ての薬がカバーされる状況に半世紀以上「慣れ親しんできた」日本にとって,何らかの形で給付にメリハリをつけること,さらには,公的医療制度での給付の可否や,給付価格の調整に「効率性」の軸を加えることは,「医療にオカネの話を持ち込むべきでない」「海外と違って費用対効果の考え方はなじまない」のような,ある意味情動的な意見の下に阻まれることが多かった.
 議論の風潮を変えたのは,2015年以降の高額薬剤の上市である(表1).第1波のオプジーボ®(免疫チェックポイント阻害薬)やソバルディ®・ハーボニー®(C型肝炎治療薬)は,高額な薬剤を多くの人が使うことによる財政影響の大きさが問題視された.財政影響が大きくなれば,保険システムの持続性が脅かされるというのは,ある意味妥当な意見である.もっともこの段階では,希少疾病など財政影響の小さな医薬品であれば,オカネの議論は不要との考え方もまた成り立っていた.
 第2波のキムリア®(2019年),第3波のゾルゲンスマ®(2020年)は,いずれも希少疾病の治療薬で,財政影響は数十億円と小さい.しかし,単価が前者は3300万円・後者は1億6700万円と超高額になり,世間やメディアの耳目を集めるには十分だった.実際業界紙のみならず多くの主要メディアが,単価を見出しに据えて報じた.財政影響の大小にかかわらず,超希少疾病の薬でも,単価が高ければ「値段に見合った価値なのか?」という説明責任として,オカネの話を求められる時代になった.あわせて,第1波では半ばタブー視されてきた給付の可否まで踏み込んだ議論も,表立ってなされるようになった.
 現段階では未承認であるが,米国食品医薬品局(FDA)で評価が進む認知症の抗体薬アデュカヌマブが承認・上市されれば,第1波と同様の財政影響の議論が出てくるのは必至である.誰に投与するのが最適なのかを議論する際に,オカネの要素は当然課題となろう.

医薬品流通の現状と課題—供給不安と高リスク化にどう対応するか

著者: 三村優美子

ページ範囲:P.300 - P.303

■医薬品流通の現場に生じた緊急事態
医薬品卸の経営状況
 医薬品流通をめぐる長年の課題は,医薬品メーカー,医薬品卸,医療機関・薬局との間の取引慣行の改善と適正な取引交渉の実現である.これは,現在の薬価制度の下で,医薬品卸と医療機関・薬局との間の価格交渉の結果である市場実勢価の調査を基に薬価改定が行われる(2019年までは2年ごとの改定)ことで,薬価調査の有効性を確保するために求められているものである.公定薬価を上限,メーカーの仕切価(第一次仕切価)を下限とする限定された範囲内で行われる医薬品卸と医療機関・薬局の取引に価格メカニズムを作用させるという方法は,公的制度と市場原理とのハイブリッドということができる.これは,医療財源にまだゆとりがあり,医薬品卸の粗マージン率も高めであった1990年代前半までは,公的薬価制度に柔軟性を与える工夫と見ることができた.ただし,国民医療費の増加(2017年度の43兆710億円)に対応して,薬剤費には常に削減の圧力がかかっている.薬価は,1989年の消費税導入に伴う改定時を除き,常に5〜10%程度の削減が行われてきたが,1996年,1997年,1998年の3年連続の薬価引き下げ,そして価格交渉の調整弁と目されていたR幅注1が調整幅2%(2000年以降)となることで,価格交渉の自由度を失った医薬品卸の経営は悪化してきた.
 医薬品卸の売上総利益率は,1993年の12.56%,1998年10.64%を経て2000年代は一気に低下し,2010年代は6%台で推移している(2020年6.87%).それに合わせて販売費及び一般管理費(以下,販管費)の削減も進められてきた.販管費率は1993年の10.56%から2020年の5.63%へと大幅に低下している[日本医薬品卸売業連合会(卸連)調べ,表1].そして,この薬価の引き下げに伴う市場環境悪化に対応して卸再編成が行われており,卸連の会員企業数は,1992年の351社から2019年の70社まで大幅に減少している.1990年代以降の卸再編成は,規模拡大,広域化,総合化(メーカー系列を超えた品揃えの拡大)を通した経営基盤強化を目的とするものであり,医薬品卸の再編成も同じ流れを汲むものであった.医薬品卸は,再編成と集約化を通して合理化を進め薬価引下げに耐えてきたのである.

一般病院の費用構造における材料費の動向

著者: 深澤宏一

ページ範囲:P.304 - P.307

■はじめに
 医薬品費・医療材料費(以下,材料費)は医療機能によって多寡はあるものの,病院の費用において大きな割合を占める費目である.労働人口の減少などにより今後も人件費の増加が予想されることから,運営に必要な収益を確保するため,材料費を適正化する取り組みはますます重要となる.
 一方,医療の質の担保や安定的に医薬品・医療材料を確保する観点からは,行き過ぎた費用削減は望ましくないと考えられ,適正な金額・比率にコントロールする視点が求められるだろう.
 本稿では,福祉医療機構が有する病院の決算データなどから病院の費用構造における材料費の変遷やコロナ禍での医薬品・医療材料の確保について分析するとともに,今後の見通しについても触れていきたい.

病院における医薬品・医療材料のコントロール

グループ病院におけるフォーミュラリーの導入—日本赤十字社におけるフォーミュラリー導入の狙いと今後の展望

著者: 小口正義 ,   宮原保之

ページ範囲:P.308 - P.312

■はじめに
 日本赤十字社は,2020(令和2)年1月,全国92病院に院内フォーミュラリーを導入することを推奨し,導入手順書を作成・配付した.本稿では,フォーミュラリーについて概説し,導入のメリット,および日本赤十字社における導入の経緯と今後の展望について解説する.

病院のコスト削減のために共同購入はどうあるべきか—病院による病院のための共同購入(GPO)

著者: 原澤茂

ページ範囲:P.313 - P.318

■はじめに
 日本の病院経営は,この10年間の傾向を見ても6〜7割が赤字経営である.収入のほとんど全ては診療報酬であり,2年に1回の改定によって年々下げられている.一方,費用は人件費と材料費である固定費が約8割であり,その他は委託費,水光熱費,減価償却費などである.
 人件費は,2024年度施行に向けて進められている“働き方改革”によって一層増加傾向にあり,経営を圧迫することは論をまたない.病院経営の改善には,人件費を除く,材料費などの経費をいかに削減するかである.
 2009年に「病院による病院のための共同購入」を掲げて立ち上げた日本ホスピタルアライアンス(NHA)は満10年を経過し,設立母体を異にする急性期病院の約300病院が加盟(図1),病院の材料費の削減成果額は約80億円超に達している.病院とサプライヤー(メーカー)がwin-winになることを前提としているこの組織が,今後とも一層充実していくことを期待したい.
 本稿では,筆者が代表理事を務めるNHAの取り組みを紹介し,共同購入のあり方を考察する.

病院における薬剤師の活用

著者: 狭間研至

ページ範囲:P.320 - P.323

■はじめに
 医療法人嘉健会思温病院(以下,当院)は,大阪市内でも高齢化が進む西成区に位置し,10:1看護基準の急性期病床,地域包括ケア病床,医療療養型病床が各60床,合計180床からなる二次救急指定の中小病院で,内科,消化器内科,循環器科,消化器内科,血液内科,整形外科などを標榜している.筆者が院長として赴任して5年余りが経過し,自らが実家の薬局経営を継承したこともあって,主に在宅医療の現場で医師として薬剤師のあり方について考えてきたことを,当院でも実践し始めている.本稿では,医師,薬局経営者の観点から見た病院における薬剤師の活用について,筆者の運営する病院の取り組みも含めて紹介する.

病院における在庫管理の課題—運用の標準化と省力化を実現するために

著者: 木村真敏

ページ範囲:P.324 - P.327

■SPDの歴史と効果
 SPD(Supply, Processing and Distribution)という言葉は,在庫管理やその周辺業務を指す言葉として,今や医療業界の中で一般用語として定着している.SPDが普及する前は,体系的な定数管理注1がされておらず,主に看護師により,部署ごとの現場の経験などに基づいた物品管理が行われていた.欠品を恐れて過剰・滞留在庫が発生し,マスタ管理は追い付かず,結果として医療スタッフの業務負荷となり,死蔵在庫や廃棄損が生じていた.また,医療材料のディスポーザブル化に伴い,品目数と費用は増大していった.
 このような背景の中で,エム・シー・ヘルスケア株式会社(以下,当社)は約25年前に,病院が定数品を使用するタイミングで所有権が移転する消化払い方式であるJITS(Just In Time & Stockless)というシステムを開発した.コンピューターによる物品管理や実績データにより在庫管理の適正化が進み,業務効率化を通じて看護師はコア業務に注力できることとなった.当時のSPDの普及は,現在の働き方改革に通ずるものであったといえよう.

病院経営からみた医療材料の選択と適正使用—ディスポーザブルからリユーザブル,そしてリポーザブルへ

著者: 小山勇

ページ範囲:P.329 - P.333

■はじめに
 医療技術の進歩はまさに医療機器や医薬品の進歩に依っていると言っても過言ではない.しかし,医薬品と同様に,医療材料費も高騰する傾向となり,病院経営上あるいは国の医療費全体にも大きな影響を与えかねない状況になりつつある.本稿では,医療機器の中でも近年になって爆発的に増えてきたディスポーザブル医療材料に焦点を当てて,現在の診療報酬制度に基づく病院経営および環境などの社会的見地から問題点を掘り下げたい.

新型コロナウイルス感染防止のためのPPE不足品対策

著者: 草場恒樹 ,   和田耕治

ページ範囲:P.334 - P.340

■はじめに
 2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)は,1年を経た現在でも,ワクチン接種はスタートしたが,世界中でその感染拡大が止まっていない.その影響で医療用手袋やガウン,マスクなどの個人防護具(Personal Protective Equipment:PPE)の需要は高まり続けており,2020年の3月,4月にはマスクやガウンなどのPPEが国内で不足どころか,枯渇するという事態が発生した.今現在でも手袋などの一部のPPEが不足し,価格が高騰するなど,予断を許さない状況が続いている.
 今回の危機的状況の原因は急激かつ大幅な需要の増大だが,簡単に回復できない理由は阻害要因が一つではなく,複雑に絡み合っているからだ.ただ,PPEの種類によって特有の課題も明らかになってきているので,丁寧にその対策を組み合わせていけば,今後,感染拡大がさらに長期化し,進んだ場合や,新たな感染症パンデミックが発生した場合でも対処できると考える.
 今回はこのPPEが不足した危機的状況の経緯を時系列に読み解きながら,その原因と対策を考察したい.

対談

病院に求められる医薬品・医療材料のマネジメント

著者: 武藤正樹 ,   川原丈貴

ページ範囲:P.277 - P.282

病院の経費において,医薬品・医療材料費は人件費に次いで大きな割合を占めている.
高額な医薬品や単回使用医療機器(SUD)の使用機会の増加により,その費用は上がる一方である.
そのような中で,病院の医薬品・医療材料のマネジメントはどうあるべきかを探る.

特別記事

救急救命士の活用—病院内での位置づけと今後の可能性

著者: 猪口正孝 ,   大桃丈知

ページ範囲:P.341 - P.346

■はじめに
 救急救命士に関しては,厚生労働省(以下,厚労省)の救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会1)ののち,医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会2)で議論され,救急救命士は救急外来まではその資格に応じた医療行為を行えることになりそうである.院内でその能力に応じて救急救命士の活動範囲が広がることは,病院の人手不足を鑑みると喜ばしい.医療が高度になり多様性と複雑性を持つに及んで,少し前まで医師と看護師,事務職のみによって運営されてきた医療に,臨床工学技士(ME)やセラピストなどの診療系の専門職と医療情報管理士や医師事務作業補助者などの医療事務系の専門職を創出されてきている.
 救急救命士は,そうした流れの中で救急現場に特化して創出された診療系の専門職である.そもそも医療機関外で活動することが目的であったため,メディカルコントロールの下,自分で観察し考え,ある程度の決断をするという,医師のみ持ちえた行動様式を条件付きではあるものの有している特性がある.病院外に限られた救急救命士の資格要件から,これまで私たちは病院救急車を利用した患者搬送を主に担ってもらうことを考えていたが,ある日,彼らのこうした特性に気づき,大いに院内で救急救命士に活躍していただいている.本稿は平成立石病院(以下,当院)の経験を基に,救急救命士の活用について実践的なヒントが得られるように願って書き進めたい.

病院医療ソーシャルワーカー研修会という学びの場を通して「地域包括ケアシステムとは何か」に挑む

著者: 小川聡子 ,   名田部明子 ,   中野彩 ,   鈴木知子 ,   倉林志保 ,   石野啓子 ,   岡村紀宏 ,   野口百香 ,   牧角寛郎 ,   丸山泉

ページ範囲:P.348 - P.351

 公益社団法人全日本病院協会(以下,全日病)は,2013年に「全日本病院協会プライマリ・ケア宣言2013」を発表した.少子高齢化が進む社会で,病院医療におけるプライマリ・ケアの重要性を認識し,新たな行動目標として「在宅医療,在宅介護対応,認知症対応へ積極的に取り組むこと」を宣言したのである.この宣言の下,プライマリ・ケア委員会を立ち上げ,「病院医療ソーシャルワーカー研修会」(2014年から),「認知症研修会」(2014年から),「総合医育成プログラム研修」(2018年から)を主催している.
 「病院医療ソーシャルワーカー研修会」(以下,本研修会)は,日本医療社会福祉協会と協働して年2回開催し,1回目は病院医療ソーシャルワーカー(以下,病院MSW)対象,2回目は同じ施設からMSWと多職種の同時参加を原則としている.全国から医療機関に勤める多職種が一堂に会し,MSWだけではなく,病院経営者,多職種も共に学び,前進してきた7年間であった.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・76

社会医療法人 札幌清田病院

著者: 吉岡雄一 ,   橋本尚幸

ページ範囲:P.284 - P.289

■地域に愛される病院を目指して
 2018年9月6日に北海道胆振地方中東部を震央として発生した地震は,北海道全域に日本初の「ブラックアウト」をもたらした.この影響で受水槽や直結加圧方式の多くの建物利用者は,水道水を利用できない状況に陥った.このような状況の中で札幌清田病院(以下,同院)は自家用発電機で地下水を汲み上げ,自院のみならず地域の住民へも水の供給を行えた.
 同院は人口増加と高齢化の進む札幌市清田区の中核病院として,急性期医療のみならず「緩和ケア」「在宅医療」に必要な医療環境を積極的に整備した.地域の医療機関や福祉施設,コミュニティとの緊密な連携を図ることで地域に愛され,病院が街づくりの核として信頼される医療環境を追求.地域住民の健康で安心な生活を支えることで「人も街も元気にする」病院を目指している.

ケースレポート 地域医療構想と病院・40

病院は人々の生活にどのように関わることができるのか

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.352 - P.356

■はじめに
 COVID-19感染拡大に伴い,筆者の勤務する大学のある福岡県が緊急事態宣言の対象県となってしまったために,病院訪問ができない状況が続いている.そこで今回も前回に引き続き,これまでの報告事例をもとに,今後の病院経営の方向性について私見を述べることとしたい.
 2020年12月13日,医学書院は「難局を乗り越える中小病院の経営戦略」というオンラインセミナーを開催した1).演者は神野正博氏(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長),太田圭洋氏(社会医療法人名古屋記念財団理事長),そして筆者の3名であった.このセミナーで神野氏は「With/Post/Nextコロナ時代の病院経営」というテーマで講演し,「病院の前後には生活がある」,「患者の生活に着目すれば病院が関与すべきことがたくさんある」ということを指摘された.石川県七尾市で常に先進的な取り組みを展開してきている神野氏のこの指摘の意味を,このセミナーの後も筆者は考え続けている.というのも,「病院の前後にある生活」を考えることは,高齢社会における病院の在り方を方向付ける基本的視点になると考えるからである.本稿ではこの神野氏の指摘を軸に,これまで訪問してきた病院の取り組みを整理し,今後のわが国の病院の在り方について論考する.

病院で発生する「悩み」の解きほぐし方・12【最終回】

治療成績の悪い手術は続けてよいのでしょうか?—クリニカルガバナンスとプロフェッショナリズム

著者: 越後純子

ページ範囲:P.358 - P.361

Case
私が麻酔科医として勤務する病院では,小児の心臓手術が多数行われています.7年前に移ってきた2人の医師がペアで行っている特殊な手術があるのですが,その死亡率が高いと感じていたので,その術式約7年分の症例を調べたところ,約50%の患者が死亡していることが分かりました.その医師たちが来る前は,別の医師が別の術式で手術を行っていて,成績はもっと良かったように記憶しています.心配だったので,管理者に直接伝えました.しかし,「彼らは有名な心臓外科医で,難しい症例なのだから問題ない」と取り合ってもらえませんでした.

感染症新時代—病院はどう生き抜くか・7

東京都立多摩総合医療センター・樫山鉄矢副院長インタビュー

著者: 堀成美 ,   樫山鉄矢

ページ範囲:P.362 - P.364

新型コロナウイルスが流行する前から,各医療機関は感染対策を行ってきた.新入職員や中途採用職員は入職前に予防接種歴や免疫の確認をし,年に2回は法定研修として全職員を対象とした感染対策の勉強の機会を設けている.病院によっては,年に一度,保健所や近隣医療機関と共に新型インフルエンザを想定した訓練を開催している.しかし,今回の新型コロナウイルス感染症(以下,新型コロナ)のようなスピードと規模で広がる感染症への対応,特に長期間の対応は,病院だけでなく保健所や自治体・国でも「想定外」であった.今回は,新型コロナが東京都内で流行し始めた初期から,2つの公立病院で副院長として体制整備に関わってこられた樫山医師に,管理職としての経験や今後に向けてのお話をうかがった.

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目次

ページ範囲:P.290 - P.291

Book Review 基礎から学ぶ 楽しい疫学 第4版

著者: 市原真

ページ範囲:P.365 - P.365

Back Number

ページ範囲:P.367 - P.367

次号予告

ページ範囲:P.370 - P.370

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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