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文献詳細

雑誌文献

病院80巻4号

2021年04月発行

文献概要

特集 医薬品・医療材料をどうコントロールするか 医薬品・医療材料の現況

医薬品流通の現状と課題—供給不安と高リスク化にどう対応するか

著者: 三村優美子1

所属機関: 1青山学院大学

ページ範囲:P.300 - P.303

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■医薬品流通の現場に生じた緊急事態
医薬品卸の経営状況
 医薬品流通をめぐる長年の課題は,医薬品メーカー,医薬品卸,医療機関・薬局との間の取引慣行の改善と適正な取引交渉の実現である.これは,現在の薬価制度の下で,医薬品卸と医療機関・薬局との間の価格交渉の結果である市場実勢価の調査を基に薬価改定が行われる(2019年までは2年ごとの改定)ことで,薬価調査の有効性を確保するために求められているものである.公定薬価を上限,メーカーの仕切価(第一次仕切価)を下限とする限定された範囲内で行われる医薬品卸と医療機関・薬局の取引に価格メカニズムを作用させるという方法は,公的制度と市場原理とのハイブリッドということができる.これは,医療財源にまだゆとりがあり,医薬品卸の粗マージン率も高めであった1990年代前半までは,公的薬価制度に柔軟性を与える工夫と見ることができた.ただし,国民医療費の増加(2017年度の43兆710億円)に対応して,薬剤費には常に削減の圧力がかかっている.薬価は,1989年の消費税導入に伴う改定時を除き,常に5〜10%程度の削減が行われてきたが,1996年,1997年,1998年の3年連続の薬価引き下げ,そして価格交渉の調整弁と目されていたR幅注1が調整幅2%(2000年以降)となることで,価格交渉の自由度を失った医薬品卸の経営は悪化してきた.
 医薬品卸の売上総利益率は,1993年の12.56%,1998年10.64%を経て2000年代は一気に低下し,2010年代は6%台で推移している(2020年6.87%).それに合わせて販売費及び一般管理費(以下,販管費)の削減も進められてきた.販管費率は1993年の10.56%から2020年の5.63%へと大幅に低下している[日本医薬品卸売業連合会(卸連)調べ,表1].そして,この薬価の引き下げに伴う市場環境悪化に対応して卸再編成が行われており,卸連の会員企業数は,1992年の351社から2019年の70社まで大幅に減少している.1990年代以降の卸再編成は,規模拡大,広域化,総合化(メーカー系列を超えた品揃えの拡大)を通した経営基盤強化を目的とするものであり,医薬品卸の再編成も同じ流れを汲むものであった.医薬品卸は,再編成と集約化を通して合理化を進め薬価引下げに耐えてきたのである.

参考文献

1)厚生労働省:医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議(取りまとめ).2020年9月.
2)厚生労働省:医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン.2018年1月.
3)廣木康晴:医薬品市場の変化とスペシャリティ医薬品の定義の必要性.国際医薬品情報1138:26-31,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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