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雑誌目次

雑誌文献

病院80巻5号

2021年05月発行

雑誌目次

特集 働き方改革のための生産性向上 総論

「働き方改革」から考える病院の労働生産性

著者: 佐野哲

ページ範囲:P.386 - P.389

■日本の労働規制の特徴
 「働き方改革」という政策の本質を捉えるには,まず,これまでの日本の労働規制の特徴について理解することが肝要である.
 その特徴とは,テーマに即して砕いて言うなら「残業時間に甘く,残業代に厳しい」規制となろう.残業代で凌ぐ勤労者の生活実態に即した規制とも言える.労働基準法(労基法)第36条(時間外及び休日の労働)の下で「甘く」,同37条(時間外,休日及び深夜の割増賃金)の下で「厳しい」わが国の規制は,過半数組合などとの労使協定,いわゆる「36協定」さえあれば無制限の時間外労働が許される一方,関連訴訟のほとんどが割増分勘定による未払い残業代請求となり,労働災害(労災)の過労死認定基準をはるかに超える残業時間さえ訴えることができなかった.こうした特徴は先進国の標準から大きく外れており,その証左として日本は,国際労働機関(ILO)の労働時間関係条約を全く批准できずにいた.

サービス産業の生産性向上—「医は特殊」と「医は普遍」

著者: 村上輝康

ページ範囲:P.390 - P.392

■「医は特殊」と「医は普遍」
 21世紀になって誕生したサービスサイエンス,サービス工学,サービソロジー(サービス学)といった一連のサービスに対する科学的・工学的アプローチへの取り組みは,サービスを普遍的な経済行為と捉え,その生産性の抜本的向上(サービスイノベーション)につながるさまざまな知見を産業界に提供しようとしている.
 図1は,そのような生産性向上の持続的なサイクルを生み出す仕組みを表した,「ニコニコ図」の愛称で呼ばれるサービス価値共創のフレームワークである.

医療・福祉サービス改革による生産性の向上

著者: 伊原和人

ページ範囲:P.393 - P.396

■はじめに
 今回,編集室よりいただいたテーマは,「医療・福祉サービス改革による生産性の向上」である.「生産性」という言葉は経済学の用語であり,元来,生命・健康・尊厳といった価値に重きを置く医療や福祉の分野で使用されると,優先すべきこれらの価値が金銭評価され,安易な比較考量がなされてしまうような違和感を持たれる向きがあるかもしれない(現場で直接,ケアに従事されている方ほど,こうした受け止めをされている可能性もある).
 本稿では,あくまで「生産性」という用語を,公的な医療・福祉サービスが,本来の価値の実現を目的として,持続的に質の良いサービスをより効率的に提供していくための道具概念と解し,関連した政策の動向について,述べることとしたい注1
 なお,本稿のうち意見にわたる部分は,筆者の個人的な見解であり,筆者が所属する組織の見解ではないことを申し添える.

2040年に向けての医療機関における生産性の向上への取り組み—組織として生き残るために必要なこと

著者: 鈴木大輔 ,   有島尚亮

ページ範囲:P.397 - P.401

■はじめに
 「経営とは何か」.その問いへの答えは,10人いれば10通りあるかもしれない.しかし,「経営の目的は何か」という問いに対しては,「利益を上げること」と答える経営者が多いのではないだろうか.これは「事業を継続させること」が経営の最大の目標であり,そのためには利益が大前提となるからであろう.
 医療業界においては,従来にも増して「経営」という言葉が重みを増してきている.
 しかし,病院経営は厳しい状況が続いており,日本病院会や全日本病院協会などが実施している2018年6月における病院経営定期調査(有効回答数1,111病院)1)によると,経常赤字の病院が53.8%と半分以上は赤字経営に陥っている.また,昨今では新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,患者数の減少だけではなく,医療体制の危機も叫ばれている.
 本稿では,今村総合病院(以下,当院)が2014年より進めてきた取り組みを振り返り,その成果と生産性注1の向上への貢献や今後の課題を帰納法的アプローチにて分析する.医療機関は,今後生き残るために(事業を継続させるために),どのような対策をとるべきかについて検討することで,組織の在り方や今後の課題について考察したい.

生産性を上げるための健康経営の考え方と病院事例

健康経営優良法人制度の意義

著者: 渡辺俊介

ページ範囲:P.402 - P.406

■「日本健康会議」発足の背景
 2015年7月,「日本健康会議」1)が発足した.この組織はひと言で言えば「地域で,そして職場で健康づくりを進める.その主役は『民間』で,国はそれを全面的にバックアップする」というもの.『民間』とは保険者(各健康保険制度),経済界,そして医療界の三者が中心だ.
 しかし,予防や健康づくりの重要性は,国・地方自治体はもとより,国民の間でも十分に認識されている.政府は既に「健康日本21」のプランも作成している.あらためて地域で,そして,職場での健康づくりを進める組織をこの時期になぜ発足させなければならなかったのだろうか.

病院が健康経営を行う意義

著者: 髙田昌実

ページ範囲:P.407 - P.409

■はじめに
 わが国は少子超高齢社会を迎え,人類が初めて経験する人生100年時代に到達した.時代の変化に伴い人々の勤労期間は長期化し,働く人々の健康状態が事業の活動性や生産性に与える影響は大きくなり,健康のマネジメントに関する考え方にも変化が求められる.また,医療・介護業界も2040年に向けて大きな時代の変革を迎えようとしている.そのような多世代の共生が重要視される社会において,われわれ玉昌会グループ(以下,当グループ)は,社会の一員として地方創生に寄与したいと考えている.そして,地域包括ケアシステムによって実現する地域共生社会と共に,健康を維持する社会の構築は,地域においてわれわれに求められる大きな役割であると捉えている.
 本稿では,当グループの基本理念である「いつまでも健やかに…わたしたちの願いです」を基に行った健康経営への取り組みについて紹介する.

医師業務の生産性向上

特定行為に係る看護師の研修制度を活かす

著者: 星北斗

ページ範囲:P.410 - P.412

 医療現場における生産性の向上は,産業としての特性や医師という職種の特殊性を背景として極めて難しい課題と捉えられ,最近まで「生産性」という用語さえ許される雰囲気ではなかった.一方,例えば建設業では,個々の労働者の作業時間ではなく工期の短縮によって生産性を上げることを目指し,建設現場では「段取り八分」という言葉で象徴されるように,手待ち時間や作業の手戻りを最小化させるための準備が最も大切とされている.生産性の向上は,管理者の果たす役割が大きいことを示している.

医師事務作業補助者の労働生産性拡大に向けた現状と課題

著者: 瀬戸僚馬

ページ範囲:P.413 - P.418

■はじめに
 2008年に医師事務作業補助体制加算が設けられ,14年目を迎えた.数多の研究によって「医師事務作業補助者の導入が医師の負担軽減に効果的である」という一点は,ほぼ異論のないところとして確立した.実際,厚生労働省が行う医療施設静態調査によれば,医師事務作業補助者数は2011年調査で約2万人であったところ,2017年調査では約3万4千人に達した.2021年末には2020年調査の結果が公表される見込みだが,さらに増えていることはほぼ確実である.
 さて,医師事務作業補助者をはじめとする「医療従事者の負担軽減」の視座は,診療報酬改定のたびに少しずつ変化している.例えば,国が公表した2012年診療報酬改定の説明資料では「負担の大きな医療従事者の負担軽減」と負担軽減自体が目的であったのに対し,2016年には「『地域包括ケアシステム』の推進と『病床の機能分化・連携』を含む医療機能の分化・強化・連携」の下位項目として「多職種の活用」が位置付けられている.2018年もほぼ同様だが,地域包括ケアシステムと機能分化を筆頭としつつも,横並びで「医療従事者の負担軽減,働き方改革」が掲げられた.そして,2020年には両者の順位が入れ替わり,働き方改革が筆頭に掲げられている.この14年間の診療報酬改定の中では,「機能分化」と「負担軽減」が双頭として位置付けられ,後者の主柱として医師事務作業補助体制加算が常に存在感を示してきたことをまずは確認しておきたい.
 他方で,医師事務作業補助者の成果指標は今なお黎明期にあり,病院全体としての労働生産性にどう寄与しているかは,まだ明らかでない面も多い.本稿ではこれらの現状をできる限り定量的に概観し,そこで浮き彫りになった労働生産性拡大に向けた課題を整理したい.

医師の業務を支援するAI問診

著者: 片山覚

ページ範囲:P.419 - P.422

 医師の働き方改革に加えて,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行により見直しを迫られる医療提供体制の視点から,本稿では「AI問診ユビー」の使用経験を踏まえて問診のデジタルトランスフォーメーション(DX)について考察する.
 日々の診療において,問診は最も重要な診療ツールである1).聞き取るべき項目や内容は多岐にわたり,緊急性や混雑状況などにより,聞き取る内容と量を変化させている.臨床医にとって,効率よく適切な問診を聴取することは極めて重要なスキルである一方で,医師の過重労働の軽減,喫緊の課題である働き方改革においても重要な要素である2).また,COVID-19パンデミックは,外来診療の感染対策が十分ではなかった診療現場の負担を増大させ,外来のゾーニングやリモート診療などのICT活用を含む新たな解決策が必要な状況となった.

AIによる画像診断支援の今日と明日

著者: 韓昌熙 ,   島原佑基

ページ範囲:P.423 - P.425

■はじめに
 新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの状況下,医師の働き方改革による新たな医療の在り方の実現は急を要する.そこで2020年は,医療AIの臨床導入が世界各国で急速に進んだ「医療AI元年」となった.読影においては,正確性と速度の両面で医師と画像診断支援AIの二人三脚による生産性向上に強い期待が寄せられている.画像診断支援AIはMRI・CT・X線を含むあらゆる医用画像の読影支援を大目的とし,「①見落とし防止」「②読影時間の削減」「③新たな診断基準の創出」がメリットとして挙げられる.
 「①見落とし防止」は,AIによる医師の代替ではなく,普遍的・客観的診断が困難で読影者間に診断の差が生じがちな医療現場における「信頼できる自動セカンドオピニオン」としての誤診削減が主眼である.医療AI製品の最たる強みはここにあるだろう.さらに医療AIは,身体・心理の両面で読影における医師の負担を減らすことで,診断精度を高めつつも「②読影時間の削減」を達成できる.また,現在は研究開発の黎明期にある「③新たな診断基準の創出」とは,囲碁AIのAlphaGoがトップ棋士よりも正確な打ち筋を切り拓いたように,従来は思いもつかなかった新たな診断基準をAIによって発見・創発することを指す.
 本稿では,生産性向上の観点から「②読影時間の削減」に焦点を絞り,世界各国の画像診断支援AIの研究動向を概観し,その後,エルピクセル株式会社(以下,当社)の製品「EIRL」を含めた医療AIの製品化が実現する「医療の効率化」を展望する.

看護業務の生産性向上

看護業務とチーム医療

著者: 習田由美子

ページ範囲:P.426 - P.428

■看護業務の生産性向上の必要性
 経済財政諮問会議では,2040年までの人口構造の変化を踏まえた医療・福祉サービス改革による生産性の向上に向けた取り組みの推進が掲げられており,具体的な取り組みとして,タスク・シフティングを担う人材の育成等が含まれている.なかでも医療従事者の働き方改革を進めるに当たり,2024年の医師の時間外労働時間規制の適用開始も見据え,実効的なタスク・シフティング,タスク・シェアリング(以下,タスク・シフト/シェア)への取り組みが必要とされている1)
 厚生労働省では「医師の働き方改革に関する検討会」を開催し,報告書2)において,医療専門職種それぞれが自らの能力を生かし,より能動的に対応できる仕組みを整え,医師から他職種へのタスク・シフト/シェアを一層推進することの重要性を示している.労働時間短縮を強力に進めていくための具体的方向性の一つとして,医療機関内のマネジメント改革(管理者・医師の意識改革),医療従事者の合意形成の下での業務の移管や共同化(タスク・シフト/シェア)が挙げられている.特に,医師からのタスク・シフト/シェアを期待されている看護師の業務については,特定行為はもちろんのこと,特定行為研修を受けていない看護師が包括的指示を受けて診療の補助行為を行うことを一層推進することがタスク・シフト/シェア推進に有効であるとの指摘があった2)

—看護業務効率化先進事例—働きやすさのバロメーターである「残業時間」「離職率」の低減に寄与したユニフォーム2色制とpolyvalent nurse育成

著者: 大平久美 ,   廣田昌彦

ページ範囲:P.429 - P.431

■はじめに
 病院職員が働く上での精神的バックボーン,それは病院理念である.熊本地域医療センター(以下,当院)には「かかってよかった.紹介してよかった.働いてよかった.そんな病院を目指します.」という病院理念がある.2013年に筆者の一人である当時の院長は,「人がいなければ病院は成り立たない.患者さんや紹介医だけではなく職員も大切な病院の顧客である.今当院に必要なのは,①患者さんに来ていただくこと,②かかりつけ医に患者さんを紹介していただくこと,そして③辞めないでもすむ働いてよかったと思える就労環境を作ることである」と考え,理念を刷新した1,2)
 当時の看護部は看護師確保に難渋しており,1看護単位の閉鎖を余儀なくされた.この状況に歯止めをかけるべくさまざまな改善策を講じたが1,2),「残業が多い」「先が見えない」「もっと実践力を磨きたい」といった理由で年40〜45名が離職した.施設基準を満たす必要に迫られ,離職者とほぼ同数の看護師を確保した.恒常的に新入職者の指導に追われる看護師たちは,疲弊感を募らせ,ワーク・ライフ・バランスを崩し,よりよい職場環境を求めて去って行った.「働いてよかった」という病院理念には程遠く,離職の悪循環に陥っていた.

薬剤師と管理栄養士の生産性向上

薬剤師の生産性を向上させる

著者: 川上純一 ,   青野浩直

ページ範囲:P.433 - P.436

■薬剤師に期待されるタスク・シフティング
 近年では,病院薬剤師・薬剤部門が担う業務は拡充しており,病院経営・管理や医療の質・安全性向上への役割が期待される.調剤・製剤・医薬品管理・医薬品情報管理などの薬剤部内業務,入院患者への薬剤管理指導・病棟薬剤業務,外来がん薬物療法などでの患者指導や入退院時支援などに加えて,感染対策・抗菌薬適正使用,医療安全,医薬品の安定確保など,病院における主軸の機能を担うようになりつつある.
 また,厚生労働省の「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」が2020年12月に取りまとめた「議論の整理の公表について」において,薬剤師が現行制度の下で実施可能な業務が表1の通りに示されている1)

管理栄養士の生産性を向上させる

著者: 宮島功

ページ範囲:P.437 - P.439

■はじめに:近森病院の概要
 近森病院(以下,当院)は高知県にある急性期医療を中心とした地域医療支援病院である.許可病床は512床(一般病床452床,精神病床60床)で,患者と接する全てのスタッフがそれぞれの専門性を発揮しチーム医療を行っている.各病棟には,医師,看護師の他に薬剤師,管理栄養士,リハビリテーションスタッフ,MSW,歯科衛生士など多職種がおり,多数精鋭のチーム医療にて質の高い医療の提供に努めている.

対談

医療の質も生産性も上がる明るい病院の改善活動

著者: 麻生泰 ,   神野正博

ページ範囲:P.371 - P.376

コロナ禍により社会全体に変革が求められているが,果たして病院は働き方改革を実現できるか.
人口減少社会に備えて生産性を向上させられるか.
多くの企業と病院で「カイゼン」に携わってきた麻生泰氏に伺う.

特別記事

“病院船”で何ができるか?—艦船による医療を考えるための予備知識

著者: 柳川錬平

ページ範囲:P.442 - P.446

■はじめに
 サンフランシスコ平和条約が発効してから令和の始まりに至るまで,日本本土は幸いにして戦災を免れている一方,地球全体の気候変動のためか大災害に直面することは増えており,そうした国難に苛まれるたびに“病院船”が話題に上ることも増えている.これまでの国会議員有志らによる“病院船”動議は政策の一部に反映されて海上自衛隊の輸送艦や海上保安庁の大型巡視船の配備あるいは新造自衛艦の医療設備充実に寄与したものの,米・露・中のように戦時国際法(現在はジュネーブ第2条約)に適合した病院船を常備することにまで国民の賛意は得られそうにない1).現在では,国際法規の主体となる国家間での武力紛争(=戦争)の蓋然性は低下しており,そもそもソマリアの海賊もアルカイダもイスラミック・ステートも正規の国家ではないため戦時国際法の締約国たり得ず,彼らに病院船を保護する法的義務は発生しない.そのような今,条約に定められるように船体を白く塗りつぶして巨大な赤十字を表示する意義は乏しいとも言える.
 ところで,“病院船”について議論する上では,その定義が一定しないことも混乱の一因となっているようである.ジュネーブ第2条約の規定を定義とする,病院船の保有は対戦国の存在(=戦争)を前提としたものであることから,戦争を放棄した日本がこれを用意するのは具合がよろしくない.逆に,何らかの医療設備を搭載した船舶を全て“病院船”と呼ぶならば,大きさも機能も運用主体(目的)も多種多様な船が俎上に並ぶことになり,議論は空中分解を免れない.内閣府による「災害時多目的船」という呼称には,議論を戦時病院船からは慎重に隔離した上で,これに一定の方向性を与えることを意図したような絶妙の語感が香り立つ.
 本稿では,“”に「いわゆる」の意を含ませて,時代ごとの戦時国際法で明確に定義されている病院船と定義が一定しない“病院船”とを区別しつつ,“病院船”の定義に深入りすることによる紙幅の空費を避け,医療提供の一手段として艦船(艦艇+船舶)の持つ可能性について徒然なるまま思いを巡らすこととする.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・77

かがやきロッジ

著者: 安宅研太郎

ページ範囲:P.378 - P.383

■かがやきロッジとは
 かがやきロッジを運営する「医療法人かがやき」は,2009年,岐阜県羽島郡岐南町に設立され,在宅医療に特化したクリニック「総合在宅医療クリニック」と「訪問看護ステーションかがやき」を運営している.クリニックから車でおよそ30分の圏内に,設計を開始した2015年で約180人,2021年2月現在では約300人の患者を抱えている.「すべての人(病いを患う方も,看護・介護する方も)ひとりひとりが自分の居場所で自分の人生を輝かせる」ことを目標に,患者の希望や夢に寄り添い,人生のどのようなステージであってもその実現に向けて全力でサポートしている.最近はその「すべての人」に,病気になる前の人や地域の住人や子どもなどさまざまな人を含みつつあるようだ.その活動の本拠地が2017年に竣工した「かがやきロッジ」である(図1).

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・1【新連載】

—対応困難患者への対応(1)—必要な診療を拒む患者への対応

著者: 小林京子 ,   高坂佳郁子

ページ範囲:P.448 - P.451

連載を始めるにあたって
医療機関において発生するトラブルは,医師と患者との診療をめぐる問題が代表例ですが,それだけではありません.医療機関では医師や看護師をはじめとする医療専門職ばかりではなく,多様なスタッフが有機的組織として働いています.そのような組織特有の人事労務問題に加え,対応困難患者への対処法も難しい問題であり,最近ではSNSを利用した医療機関への中傷など従来にない問題も浮上しています.
本連載では,数多くの医療機関のご相談に与った当事務所の弁護士が実務的な経験を踏まえ,さまざまな問題についての法的な対処法を解説します.

事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・27

医療法人社団おると会 浜脇整形外科病院—強みを生かしたブランディングにより地域住民から選ばれる病院へ

著者: 深澤宏一

ページ範囲:P.452 - P.456

 医療法人社団おると会が運営する浜脇整形外科病院(以下,同院)は,広島県広島市の中心部にあり,広島市役所からも近い場所に位置する,整形外科に特化した160床の病院である.
 本稿では得意分野を創出し,けがの予防運動などを通じてブランディングを行うことで,信頼され選ばれ続ける病院を目指す同院の取り組みを紹介したい.

感染症新時代—病院はどう生き抜くか・8

東京都立多摩総合医療センター・足立拓也医師インタビュー

著者: 堀成美 ,   足立拓也

ページ範囲:P.458 - P.461

新型コロナウイルス感染症(以下,新型コロナ)のパンデミック期には,医療の「崩壊」「逼迫」という言葉が繰り返し伝えられた.これには確定症例や疑い症例を受け入れる病室数と実際の症例数のバランスの問題と,他の病棟の利用や診療の制限によって,本来アクセスできるはずの医療に他の患者がアクセスできないことで起きる問題が含まれていた.確かに,全体の病床数は十分あっても,特定の感染症の受け入れのために迅速かつ柔軟に調整できないことは,初期から課題として指摘されていた.
もともと感染症法で制度化されていたのは,まれな感染症を想定した指定医療機関(特定・第一種・第二種)である.新型インフルエンザ等対策行動計画では,臨時の接触者帰国者外来・入院医療機関は想定されていたものの,感染症法には規定がなかった.また,医療法と感染症法がこの仕組みにおいて連動していない.このため,パンデミック期に必要な病床を確保するための法整備と保健医療計画と地域医療構想における整合性も,急ぎ見直しが求められている.予算における配慮が必要なのは言うまでもない.
新型コロナの症例増加時に,臨時の病床拡大の手段として,大阪府や東京都では「専用病院」も開設された.大阪府の事例では,全国から応援看護師が集められた.東京都は,病院の移転新築後に使用されずにいた古い施設を改修し,2020年12月16日にコロナ専用病院としてスタートさせた.ちょうど最も患者が増加した2021年1月の前,各病院が年末年始体制に入る前のタイミングであり,この運用に救われた関係者も多かった.今回は,この専用病院の診療チームのリーダーとなった足立医師にお話をうかがった.

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目次

ページ範囲:P.384 - P.385

Book Review —医療者のための—成功するメンタリングガイド

著者: 和足孝之

ページ範囲:P.457 - P.457

Back Number

ページ範囲:P.463 - P.463

次号予告

ページ範囲:P.466 - P.466

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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