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文献詳細

雑誌文献

病院80巻5号

2021年05月発行

文献概要

特集 働き方改革のための生産性向上 医師業務の生産性向上

医師事務作業補助者の労働生産性拡大に向けた現状と課題

著者: 瀬戸僚馬1

所属機関: 1東京医療保健大学 医療保健学部医療情報学科

ページ範囲:P.413 - P.418

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■はじめに
 2008年に医師事務作業補助体制加算が設けられ,14年目を迎えた.数多の研究によって「医師事務作業補助者の導入が医師の負担軽減に効果的である」という一点は,ほぼ異論のないところとして確立した.実際,厚生労働省が行う医療施設静態調査によれば,医師事務作業補助者数は2011年調査で約2万人であったところ,2017年調査では約3万4千人に達した.2021年末には2020年調査の結果が公表される見込みだが,さらに増えていることはほぼ確実である.
 さて,医師事務作業補助者をはじめとする「医療従事者の負担軽減」の視座は,診療報酬改定のたびに少しずつ変化している.例えば,国が公表した2012年診療報酬改定の説明資料では「負担の大きな医療従事者の負担軽減」と負担軽減自体が目的であったのに対し,2016年には「『地域包括ケアシステム』の推進と『病床の機能分化・連携』を含む医療機能の分化・強化・連携」の下位項目として「多職種の活用」が位置付けられている.2018年もほぼ同様だが,地域包括ケアシステムと機能分化を筆頭としつつも,横並びで「医療従事者の負担軽減,働き方改革」が掲げられた.そして,2020年には両者の順位が入れ替わり,働き方改革が筆頭に掲げられている.この14年間の診療報酬改定の中では,「機能分化」と「負担軽減」が双頭として位置付けられ,後者の主柱として医師事務作業補助体制加算が常に存在感を示してきたことをまずは確認しておきたい.
 他方で,医師事務作業補助者の成果指標は今なお黎明期にあり,病院全体としての労働生産性にどう寄与しているかは,まだ明らかでない面も多い.本稿ではこれらの現状をできる限り定量的に概観し,そこで浮き彫りになった労働生産性拡大に向けた課題を整理したい.

参考文献

1)瀬戸僚馬:医師事務作業補助者の業務拡大と医療安全推進を両立する院内体制構築の支援に関する検討, 厚生労働省行政推進調査事業費補助金(政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業))「新しいチーム医療などにおける医療・介護従事者の適切な役割分担についての研究」分担研究報告書, 2020
2)西田博,里見進,遠藤久夫,他:外科医療におけるコメディカル診療参加の意義に関する考察—日本外科学会外科医週間タイムスタディによる外科医業務解析結果から.日外会誌111(4):251-257,2010
3)瀬戸僚馬,津村宏:医師が電子カルテ操作に費やす業務時間に関する調査.医療情報学32(2):59-63,2012
4)瀬戸僚馬,伊藤博紀:医師事務作業補助者に対する標準的テクニカルスキル評価の試み.医療秘書教全協誌19:19-25,2019
5)福田誠司:大学病院の医師事務作業補助者が及ぼす効果の定量的評価の試み.Med Secretary 13(2):1-5,2016
6)岡本牧人,佐野肇,天川久子,他:大学病院における医療秘書の有用性に関する研究 電子カルテ化における対応(原著論文) 北里医学43:51-59,2013
7)井上弘行,上村修二,小出梨紗,他:救命救急センターにおける医師事務作業補助者の活用と効果.日臨救急医会誌22:761-767,2019
8)中村隆志,古川佳英子,杉本徹:医師支援室の開設効果 医師事務作業補助から医療の質向上に向けての取り組み(原著論文) 医療マネジメント会誌12:14-18,2011
9)阿部知子,山縣正庸,安川朋久,他:医師事務作業補助者導入による医師の業務改善効果の検討.医療マネジメント会誌12:75-78,2011
10)山中信也:患者との約束—予約時間内診察率導入の経緯と挑戦.保険診療1557:87-89,2019
11)森本章人:外来・病棟業務を円滑に行うために 医師事務作業補助者導入による業務効率化.医療マネジメント会誌21:30-33,2020
12)小林潤平,酒井忠博,黒田直美,他:医師事務業務のタスクシフトによる診療待ち時間の短縮.日病院会誌67:417-427,2020
13)川本俊治,三輪朋子,清水直美,他:医師事務作業補助者による退院サマリー作成支援の効果について.医療68:66-71,2014
14)秀野功典,内藤ひさ,黒部弘美,他:医師事務作業補助者と文書作成支援ソフトによる医師の文書負担軽減への取り組み(解説).日農村医会誌60:602-614,2012
15)山口花林,内藤高史:診断書作成日数短縮への取り組み 医師事務作業補助者導入による効果と今後の課題(会議録).医療マネジメント会誌14(Suppl):278,2013
16)及川知子,丸山尚嗣:医師事務作業補助者の病棟回診記録入力補助におけるラダーチェック評価の活用.医療マネジメント会誌 18:176-179, 2017
17)日本医師事務作業補助研究会:「医師事務作業補助者の実態調査」 結果の公表について. http://ishijimu.umin.jp/kenkyuukaikara/2018tyousa/kouhyou.pdf
18)永山晋:1312社のデータ分析に基づく提言—日本企業の生産性は本当に低いのか.ハーバード・ビジネス・レビュー346:72-86, 2017
19)厚生労働省:新たな医療の在り方を踏まえた 医師・看護師等の働き方ビジョン検討会 報告書.2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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