icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院80巻7号

2021年07月発行

雑誌目次

特集 地域包括ケア時代における病院の在宅への関わり方 総論

ポストコロナ時代に病院が向き合う在宅支援

著者: 今村英仁

ページ範囲:P.574 - P.579

■はじめに
 「人生100年時代」といわれ少子高齢化が進む日本では,いわゆる団塊世代が75歳を迎える2025年に向けた地域医療構想策定が行われている.各医療機関は地域での自院の役割を考えてこの構想策定に臨んでいたが,その最中に新型コロナ禍が襲った.この災禍により国民の受療行動が大きく変化したという統計結果が出ている.この変化が一過性か,今後にも大きな影響を与えるかの結論は出ていないが,大きく変わるとの意見が多い.特に,外来受診抑制については他国に比べ受診率が高い日本注1では長期化すると予想する医業経営者も多い.一方で,今後も高齢化が進むことを考えると,治療を必要とする高齢者は増える.これらの高齢者の治療をどうすべきか,また,受診抑制が起きている病院はどのような対応を行うべきか.本稿では公益財団法人慈愛会(以下,当法人)の新型コロナ禍での1年の経過を踏まえて検討する.

かかりつけ医機能としての在宅医療と病院での展開

著者: 迫井正深

ページ範囲:P.580 - P.585

 医師の働き方改革等に対応するための医療法等改正法1)が2021年5月21日に成立,その施行をはじめとした医療提供体制改革の展開がいよいよ本格化する.改革キーワードとして掲げてきた“三位一体”,すなわち相互に連関する「働き方改革」「地域医療構想」「医師偏在対策」を丁寧に紐解きながら,医療提供体制を持続可能なものとして将来世代に引き継ぐための取り組みである.
 構築を目指す体制は,介護や生活支援とともに地域での一体的な医療提供を目指す「地域包括ケアシステム」との整合も求められる.在宅医療が地域包括ケアシステムの文脈から捉えた方が分かりやすいのはこのためであり,関係職種による地域包括ケアシステム構築の取り組みは,近年大きく展開しつつある.このような視点から,病院による在宅医療は“医療提供体制改革”と“進化するケア”の両面から見つめていく必要がある.

これからの病院が避けて通れない在宅支援への関わり方

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.586 - P.590

■はじめに
 各種世論調査の結果では,多くの国民が人生の最終段階をできれば住み慣れた家で過ごしたいと考えている.しかし,「家族に面倒をかけたくない」「症状急変時の不安」などの理由により,病院や施設への入院,入所を選択する者が多いのが現実である.このような状況を踏まえて,国は在宅医療の推進を目指して種々の施策を行っている.地域医療構想の議論においても,現在療養病床で入院治療を受けている高齢患者のうち医療区分Ⅰの者の70%を在宅で診ることが予定されている.しかしながら,これらの患者は複数の慢性疾患を持っているのが一般的であり,例えば,福岡県医師会調査によれば,医療区分Ⅰの入院患者のうち63%は「家族の受け入れがあれば退院可能」と病院側は判断している1)が,核家族化が進んだ高齢世帯では必ずしも容易ではないだろう.
 筆者はかつて全国の済生会組織を対象に,医療ニーズの高い高齢者の在宅事例のケースを収集し,在宅療養が継続できる条件を調査したことがある2).その結果,「かかりつけ医がいること」「もしもの時の後方病院があること」そして「その調整を24時間対応で可能な訪問看護があること」の3つが重要な要因であることを示した.このような安心感がなければ在宅ケアは継続しないし,また柔軟に在宅と入院・入所を利用できるネットワークと,それを支える情報基盤が必要であると筆者は考えている.
 猪飼はその著書3)で「治療医学の場としての『病院の世紀』の終焉」について論考している.そこでは病院が単に治療だけではなく,患者のQOLに配慮した視点を持たざるを得なくなり,(地域)包括ケアの枠組みの中で再構築されていく必要性を,歴史的必然として説明している.地域包括ケアの中心は患者である.Patient centered medicineが志向されているのである.その中心として想定されているのは在宅ケアである.しかし,複数の慢性疾患を持ち,介護ニーズも高い高齢患者を,どのように在宅でケアしていくかについては,データに基づいた客観的な議論が不可欠である.
 そこで,本稿では西日本のある自治体の医療および介護レセプトを用いて,訪問診療の現状について,利用している医療介護サービスおよび主たる傷病の経時的変化に着目して検討した結果などを基に,病院による在宅支援の在り方について論考する.

病院タイプ別の在宅支援のあり方

都市部における急性期病院の在宅支援のあり方

著者: 荒井好範

ページ範囲:P.591 - P.594

■はじめに
 急性期病院の在宅への関わり方は大きく「かかりつけ医の支援」「急性期病院が自ら行っている在宅医療」の2つに分けられる.急性期病院の大きな役割である「かかりつけ医の支援」は至ってシンプルで,地域包括ケアシステムを構築する上での急性期病院としての医療の役割分担,すなわち救急医療,入院,専門的・集中医療を行うことである.しかし,現実には近隣の医療機関との連携・協力がうまく行かないことが問題となっている.一方,「急性期病院が自ら行っている在宅医療」として急性期病院だからこそできる在宅医療も少なからず存在する.
 社会医療法人仁医会(以下,当法人)は急性期医療から在宅医療まで提供して地域医療を展開しているが,2021年2月に当法人の中核である牧田総合病院(以下,当院)は大田区内の大森から蒲田に移転した.都市部だからこその課題もあり,本稿では当法人がどのように在宅支援を行っているかを述べたいと思う.

ケアミックス病院の在宅支援のあり方—全病床を地域包括ケア病床とした次世代型地域のホームホスピタル

著者: 右田敦之

ページ範囲:P.595 - P.598

■はじめに
 右田病院(以下,当院)は前身の右田醫院創業から,一昨年(2019年)で100周年を迎えた.戦前からの救急医療は,指定二次救急医療機関として引き継がれ,許可病床数82床(現在)と小規模ながらも東京都八王子市地域の救急医療の一翼を担っている.
 超高齢社会における高齢者医療への取り組みは,救急から在宅まで首尾一貫した運営が患者本位と捉えており,高齢者の増加に伴い2018年には全床を地域包括ケア病床に病棟を再編している.さらに病床稼働の高止まりや,それによる救急車搬送受け入れの機会ロスをなくすべく,現在病床数を118床へ増床工事中で,本年(2021年)7月にリニューアルオープンさせる予定である.

ケアミックス病院の在宅支援のあり方—連携による地域全体への貢献を目指す

著者: 河野稔文

ページ範囲:P.599 - P.602

■はじめに
 厚生労働省が進めている地域医療構想策定と地域包括ケアシステムの構築に向けて,われわれ医療機関は自身の担うべき機能をさらに効率よく果たすために,地域での連携と機能分化に向けてさまざまな取り組みを行っている.その途上である2020年に新型コロナウイルスのパンデミックにより全世界は大混乱に陥り,医療・介護業界も,いまだに先の見えない状態が続いている.厳しい社会情勢の中,地域包括ケアシステムの一翼を担うケアミックス病院グループとして,アフターコロナ社会への適応を目指している.

保健・医療・福祉複合体の病院グループにおける在宅支援の取り組み

著者: 塩田正喜

ページ範囲:P.603 - P.605

 現在,ここ数年来のトピックである「地域包括ケアシステムの構築と地域医療構想」という文脈に,「新型コロナ禍」という大きな変化が加わった.本稿では,このような状況において,医療・介護・福祉にまたがる資源を持つ病院グループが提供する在宅支援の現状と今後の展望をどう捉えるべきか,病院グループの診療所の院長職である筆者の視点から考察したい.

在宅療養支援病院は新型コロナ禍の下でどのように在宅支援を行ったか

著者: 織田良正

ページ範囲:P.606 - P.609

■はじめに
 社会医療法人 祐愛会織田病院(以下,当院)は,佐賀県鹿島市(人口約3万人)にあり,佐賀県南部医療圏(以下,当医療圏)に属している.病床数は111床,看護体制7:1で,地域の急性期から在宅医療までを担っている.当医療圏は全国平均より高齢化の進展が早く,すでに85歳以上の救急搬送患者,新規入院患者が急増し,当院の入院患者における85歳以上の割合は,2019年度は27.9%,2020年度は29.4%となっている.
 85歳以上の患者は要介護,認知症の割合が高くなる上,独居や老々世帯も増加している.入院後に安心して自宅での生活に戻るためには,退院後もケアの継続が重要である.われわれは退院後も患者が住み慣れた地域で安心して療養生活を送ることができるように,「治す医療」から「治し支える医療」を合言葉に,入院中だけでなく退院後の生活も意識して,2010年4月から在宅療養支援病院(以下,在支病)として,訪問診療を行うとともに,病院に併設している訪問看護ステーションと連携し,24時間対応可能な体制を確保し,緊急時には往診や,入院対応が可能な体制を整えている.なお,2015年には機能強化型在支病となった.また,訪問看護ステーションも市内に他事業所がないため,機能強化型の届出を行い,当院だけではなく,他医療機関からの依頼も受け,地域の訪問看護のほとんどを担っている.
 当院の在支病としてのこれまでの取り組みは,新型コロナ禍の下での在宅医療にも生かされているのを実感している.その中で大きく分けて,「新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)対策」と「在宅支援でのICTの活用」がポイントとなったので,以下に説明する.

大学病院と協働する在宅支援のあり方

総合診療科を有する大学病院の取り組み

著者: 牧石徹也

ページ範囲:P.610 - P.613

■はじめに
 本邦において,総合診療科を有する大学病院の数はどの程度かご存じだろうか.筆者が全国に82ある大学附属病院(分院を除く)のホームページを調べたところ,70病院(85%)の「診療科のご案内」ページに総合診療科が掲載されていた(2021年4月11日閲覧).国立大学や公立大学,私立大学といった経営母体の違いによっても比率に差はなく,つまり,今や多くの大学の附属病院に総合診療科は存在する.もちろん,それぞれの大学病院において総合診療科が果たしている役割は千差万別であろう.大学病院の“顔”として華々しい役割を担っている総合診療科をメディアなどで目にする一方,中にはマンパワーの問題や大学病院の経営方針から初診外来のみ診察を行い2回目以降は各専門診療科に紹介するというケースもあると耳にする.かつて,1990年代後半から2000年代にかけて多くの大学病院で総合診療関連の部門が開設された時期があった.成功例は必ずしも多くないとされ,同部門が廃止となった大学病院も散見される1).「大学病院と総合診療は相容れない」といった議論を経て,今,あらためて多くの大学病院において総合診療科が設置されている.果たして,再び一過性のブームに終わるのであろうか.
 現在,総合診療医育成への社会的要請が一層強まっている.大学病院の総合診療科に期待されている大きな役割の一つが総合診療医の育成(教育)であることは間違いない.本稿では,本特集のテーマである「地域包括ケア時代における病院の在宅診療・療養への関わり方」について,主にその担い手となる総合診療医育成の視点から,地方大学である島根大学医学部総合医療学講座(以下,当講座)の取り組みを中心に紹介したい.

大学とともに歩む医療人育成の道—地域医療の現場から

著者: 石橋豊

ページ範囲:P.614 - P.618

■はじめに
 筆者は,島根大学医学部で総合医育成に携わった後,2年前の2019年から島根県の中山間地川本町にある社会医療法人仁寿会で在宅診療を行いながらメディカルスタッフの生涯学習のお手伝いをしている.在宅診療医としては,経験は浅いが大学に長くいたからこそ見えてくる大学の思いと地域医療現場の思いとのギャップもあるようである.本稿では,人材育成に視点を当てて地域での教育のあり方について論じたい.
 在宅診療に直接携わるようになって最も強くに感じることは,「地域医療の現場は,医療の実践の場であると同時に医療人育成の場であるべき」ということである.平成28年度改訂版『医学教育モデル・コア・カリキュラム』1)には,地域医療教育の充実には,地域の現場においても指導医,他職種の教育体制,患者の理解などに大学病院と同様の水準が必要であると記載されている.大学では,このカリキュラムに沿って低学年からの積極的な地域医療実習を進めているが,受け入れる側として積極的に準備を行っている地域の医療機関がある.筆者が勤務する社会医療法人仁寿会の仔細は,本誌2020年8月号に産業医科大学松田晋哉先生が寄稿されている2)ので割愛するが,仁寿会のスタッフの人数の変遷を見ると(図1),全ての業種において右肩上がりに増えている.比率としては,医師の割合は小さいが,その数は年々増加し平成15(2003)年以降で3倍に増えている.なぜこのような変化をもたらしているか,大学のあゆみに常に歩調を合わせながら仁寿会自らも変革を続けている姿が見えてくる.

中山間地域の小規模病院における在宅診療の今後のあり方

著者: 鈴木賢二

ページ範囲:P.619 - P.622

■はじめに
 日本の医療・介護現場は変化が著しい.高齢化と医療に対する価値観の変化によって,高齢者をより少ないマンパワーで,より多くより丁寧に診る場へと変貌している.特に,地域に密着した病院は総体的には病気を治す場から人生の終盤をマネジメントする場へと変化してきている.また,町立奥出雲病院(以下,当院)が立地する島根県奥出雲町のようなへき地・中山間地域では,医師減少率が高齢者人口の減少率を遥かに上回るスピードで進行している.
 核家族化の進行と男女共同参画社会への変化は,結果として家庭の介護力の低下につながっている.女性の社会進出が目覚ましい一方で介護力低下という側面に対しては,国がより積極的な支援を行わなければ,これまで社会に貢献してきた高齢者,これからさらに社会に貢献する女性や次世代ともに困難な状況が続くであろう.
 2020年初頭以来,新型コロナウイルス感染症の蔓延(以下,コロナ禍)は医療に大きな影響を及ぼしている.しかし,コロナ禍であっても高齢者の医療需要が減るわけではなく,むしろ外出控え,受診控えから在宅医療の需要は高まっていると思われる.

病院に期待したい在宅支援のあり方

在宅医療側から病院に期待したい在宅支援のあり方

著者: 佐々木淳

ページ範囲:P.623 - P.628

■はじめに
 医療法人社団悠翔会(以下,当法人)は在宅医療に特化した診療を提供している.2021年5月現在,首都圏を中心に18の在宅療養支援診療所を展開,76人の医師・200人のコメディカルが,常時5,500人を超える在宅患者に24時間体制の在宅総合診療・療養支援を提供している.
 在宅医療は病院の後方支援がなければ成り立たない.現在,筆者らは60を超える病院と協定書を取り交わし,安心感をもって診療を行っている.在宅医療を理解し支援してくださっている病院の方々に,まずは心からの謝意をお伝えしたい.
 在宅医療における病診連携は,具体的に次の5つに集約される.
①入院患者の退院支援
②在宅からの入院の受け入れ
③必要時の検査や専門診療
④在宅患者への外来診療の伴走(主に専門性の高い疾患を持つ在宅患者など)
⑤通院患者への在宅医療の伴走(主に通院が困難になりつつあるがん患者など)
 この5つはすべて連続している.疾病や老化の進行により身体機能が低下すると,通院は困難になる.また,残された時間が短くなっていくと患者や家族の医療における優先順位も変化していく.患者を取り巻く身体的・精神的・社会的な変化に合わせて,その時々に最適なサポートをフレキシブルに提供できる体制を構築するのが,すなわち地域包括ケアシステムの目指すところであると理解している.
 当法人の創設は2006年,在宅療養支援診療所が定義されたその年である.当時に比べると在宅患者の急変時の迅速な入院の受け入れ,退院前共同指導の実施など,病診連携の枠組みは非常に円滑に機能するようになっていると日々実感している.
 しかし時に,この連携の枠組みの中で患者の思いが置き去りにされていることも目にする.今後,超高齢社会,いわゆる重老齢化がさらに進行していく中,住民が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために,病院と在宅医療の双方が努力し合わねばならない部分も残されていると強く感じる.
 本稿では,ご批判も覚悟の上で,真の病診連携とはどうあるべきか,病院と在宅医療機関が目指すべき理想を,3つの観点から共有したい.

患者側の視点から見た病院の在宅支援のあり方—生活者の視点を持ちながら患者を診る想像力を

著者: 秋山正子

ページ範囲:P.629 - P.632

■はじめに
 2020年はナイチンゲール生誕200年の記念の年であった.
 ナイチンゲールが活躍した19世紀,衛生状態が悪い野戦病院で,彼女がまずは何をしたかであるが,一般的にはランプをともしながら,見回りをしている姿が印象的である.しかし,実はとても現実的に有用な対策を実行していたのだ.床の掃除をきちんとするように人を雇い,新しいリネンを取り寄せ,寝床の藁をきちんとくるみベッドにし,そして本国からわざわざ調理人を呼び寄せ病人の食事を作らせ,栄養状態の改善を図った.体の清潔を保つようにしながら,適切な薬やケアの提供を,教育訓練を受けた看護師に実践させたのである.当時,看護職は社会的に認められてもおらず,教育も体系づけられてはいなかった.
 劣悪な状況の中で,傷病兵たちの死亡率は改善され,治療効果も上がった.感染予防に関しても,手洗いの励行を看護師が行った病棟の発熱者の減少は目を見張るものがあり,医師たちも納得せざるを得なかったという.
 激務のせいで,クリミアの風土病に侵され,腎機能が落ちたこともあって,英国に帰ってからは自らが病床に伏しながら,看護教育や看護管理に手腕を発揮し,多くの人材を育てた.それらのことを成し遂げながら,彼女は遠い未来を見ていたのである.
 家庭の健康を守るのは婦人であると説き「この人たちに衛生上の知識や,家族の健康管理ができるように教育して,病気の予防と,早めの手当てができれば人々の健康状態は保たれるでしょう,そして,病人を病院に集めるのではなく,人々の所に医療が届けられるようにして,一番過ごしやすい家で療養が出来れば理想ですね」と.「そうすれば,将来は病院や,施設は必要なくなるのではないか? それは100年先の2000年の世界のことね」と.看護の原点は,在宅ケアであり,看護を必要としている人に訪問して届けることだとし,そして,何よりも予防が大事だと説いたことに,本当に驚愕する
 コロナ禍の中で,「病院に行くのは怖い」と受診控えが起こったり,在宅医療の現場でも「外からの訪問者を減らしたい」と,サービス控えが起こったりと,さまざまな影響が出ている.
 一方で,「面会制限がある入院・入所は避けたい」と,在宅医療・看護を受けて最後を家で過ごす方々も見られた.本稿では,1992年から訪問看護の現場で活動し,現在は相談支援の場に身を置く看護職として,このような現状での病院の在宅への関わり方を患者側の視点で考えたい.

対談

急性期病院が在宅まで視野に入れるべき理由

著者: 猪口正孝 ,   今村英仁

ページ範囲:P.559 - P.564

病院が患者を待っている時代は終焉を迎えた.
期待される在宅支援とはどのようなものか.
救急から在宅まで複数の病院で医療を提供し東京都病院協会会長でもある猪口正孝氏に,病院経営者はこれからどのようなスタンスで地域に医療を提供していくべきか伺う.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・78

くぼのやウィメンズホスピタル

著者: 髙尾昌和

ページ範囲:P.566 - P.571

■さらなる安心・安全な医療環境の提供を目指して
 くぼのやウィメンズホスピタルは,2020年に開業60年を迎えた産院である(図1,2).創業時より受け継がれている「お母さんや赤ちゃんに優しい産院でありたい」という理念に基づき,出産,不妊治療,産前産後のメンタルヘルスケアといった周産期におけるトータルケアを実践してきた.
 本計画は,増築棟の新築工事と既存棟改修工事を実施した.計画の大きな柱は2点ある.1点目は,病床を18床から40床に増床し,より安定した受け入れ態勢を整えること.2点目は,マンモグラフィの導入による乳がん検診の開始や,体に負担の少ない内視鏡手術に力を入れるなどの婦人科機能の充実化である.従来から取り組んでいる産前産後のサポートに加え,小児科の機能拡充を視野に入れつつ,これからは周産期のみならず,女性のあらゆるライフステージにおいて,さらなる質の高い医療とケアを提供する病院として展開する.それに伴い法人名を「医療法人社団 窪谷産婦人科」から「医療法人社団 満葉会 くぼのやウィメンズホスピタル」(以下,同院)に改名.「満葉会」の「満」は創業時より積み重ねられてきた良き歴史を大切にしたいという想いから創業者の名前より一文字とり,「葉」は社会の変化に対応した広がりを持った医療を展開していくという,これからのビジョンを表している(図3).

これからの病院経営の考え方・2

医業収支と経常収支が示すもの—当院の経営実績と全国赤十字病院との比較

著者: 小松本悟

ページ範囲:P.633 - P.636

■はじめに
 前回は,「連載の概略と病院の経営状況」と題して,足利赤十字病院(以下,当院)の紹介と,連載にあたっての3本の柱を示した.すなわち「1.コロナ禍の中の病院経営」「2.コロナ以前の各病院での病院経営を振り返って」「3.コロナ後を見据えた病院経営を考える」の3本柱で連載を組み立てていく.また,日本病院会が中心になって行った「新型コロナウイルス感染症拡大による経営状況の調査」の結果や全国赤十字病院群のデータから報告し,コロナ感染により多くの病院が経営危機に瀕し,「新しい常態」を模索していることを示した.今回は,コロナ後を見据えた病院経営として当院が実践していることを,データを基に述べていきたい.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・3

—インターネット上の誹謗中傷への医療機関の実務対応(1)—初動対応と投稿の削除

著者: 増田拓也

ページ範囲:P.637 - P.641

 総務省の令和元年通信利用動向調査によれば,個人のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用割合は全体で69.0%,20代で87.1%,60代でも51.7%であり,多くの人がインターネット上で情報発信する時代になりました.病院の口コミが口コミサイトや地図情報サービスに投稿されることも珍しくありませんから,医療機関にとっても,インターネット上の誹謗中傷への対応の重要性はますます高まっています.このような誹謗中傷への法的対応としては,概ね,投稿の削除と,発信者の責任追及(発信者の特定を含みます)の2つが考えられます★1
 本稿では,医療機関(法人)担当者の実務という観点から,これら2つの法的対応に共通して必要となる初動対応と,投稿の削除について解説します.次回は,発信者の責任追及について解説する予定です.

事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・28

社会医療法人生長会 ベルピアノ病院—急性期と在宅をつなぐ地域のコーディネーター

著者: 深澤宏一

ページ範囲:P.642 - P.646

 社会医療法人生長会(以下,同法人)が運営するベルピアノ病院(以下,同院)は,人口約82万人を擁する大阪府堺市にある回復期医療と慢性期医療を担う192床の病院であり,急性期と在宅をつなぐ地域のコーディネーターとして在宅復帰・在宅療養を支援している.
 高齢化により増えゆく医療ニーズに対応するため,地域医療構想によって各地で機能分化の推進が図られているなか,回復期医療を担う病院のモデルケースとなる同院の取り組みを紹介したい.

感染症新時代—病院はどう生き抜くか・10

感染症専門医・山口征啓医師インタビュー

著者: 堀成美 ,   山口征啓

ページ範囲:P.647 - P.650

新型コロナウイルス感染症(以下,新型コロナ)の報道では「医療崩壊」という言葉が,具体的に何を表すのか定義が不明確なまま,不安を煽る形で使い続けられている.実際にはウイルスそのものの影響よりは,管理やオペレーションがうまくいかない問題の方が大きいため,自分たちの病院の中で,また,地域の中で誰が何を担うのか,どのように運用するのか,そのための理解や納得,お互いの支援体制をどう作るのかが課題となる.本号では,医療機関の管理部門を経験した後に,フリーランスの感染症専門医として地域の感染症診療や対策を支えている山口医師に,福岡県での経験と取り組みについてうかがった.

--------------------

目次

ページ範囲:P.572 - P.573

Back Number

ページ範囲:P.651 - P.651

次号予告

ページ範囲:P.654 - P.654

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?