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特集 心理的安全性がつくる新しい病院組織—イノベーションとリスクマネジメントの両輪を回す 心理的安全性が経営者に注目される理由
なぜ病院経営に心理的安全性が必要なのか—経営コンサルタントの視点から
著者: 裵英洙12
所属機関: 1ハイズ株式会社 2慶應義塾大学
ページ範囲:P.858 - P.861
文献購入ページに移動昨今,医療政策の三位一体改革やコロナ禍を含めたさまざまな外部環境の変化が激しく,病院経営環境は厳しさを増している.医療現場では,高齢化の進展とともに複合疾患を有する高齢患者・難症例患者の増加に伴い,職員の心身負担は増大傾向にある.さらに,医療の質の向上と患者要求の高まりが相まって,医師をはじめ医療職が習得すべき先進の医学知識や医療技術は日に日に増えてきている.このような環境下,人材不足の中で自己犠牲・自己献身の姿勢で心身ともに疲弊状態で臨床現場に立ち続ける医療職は少なくない.また,一般病院の多くが赤字経営,民間の一般病院の医業利益率は数%程度と,著しく厳しい経営環境に置かれており,人的資源への十分な投資が難しい病院が多いのが現状でもある.
一方,医療機関経営は労働集約ビジネスであり,人的資本が基本財産であるため,医療職をはじめ全職員にいかに気持ちよく,そして効率的に働いてもらうかを基本に考える必要性がますます高まってきている.つまり,病院経営の視点では,職員が安心して働き続けられる職場づくり,多様なキャリア開発の推進,効果的なモチベーションマネジメントの実践,心身の疲弊しない労務環境の整備などを進めつつ,患者が納得する良質な医療を確実に提供していくことが病院経営の基本戦略となってきている.
経営学の分野では,「ES(Employee Satisfaction)なければ,CS(Customer Satisfaction)なし」とあるが,これは間違いなく病院にも当てはまる.より良い医療機関を創るためには,より良い職員に集まってもらい,安心・安全を担保した上で働き続けてもらうのが鉄則である.そのために職員が安心して働ける組織づくりは病院経営の中枢の課題とも言える.
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