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特集 すぐそこまで来た,医師の働き方改革—課題と実現可能性 医師の働き方改革のポイント
医師の働き方改革とお金の問題
著者: 後藤励1
所属機関: 1慶應義塾大学経営管理研究科
ページ範囲:P.127 - P.129
文献購入ページに移動■内部労働市場と外部労働市場
医師の労働市場は,大学病院を中心とした医局組織の中で個々の医師が評価され,診療・研究・教育の業務の配分や関連病院への配置転換や昇進をしながら医師一人一人のキャリアを蓄積させていく内部労働市場と,個々の医師が独立して自分のキャリアを考え,収入,やりがいや個人的な状況を考えて医療機関を自由に選択し,医療機関側も医師の能力を見て採用や賃金を決めていく外部労働市場の両者が混在している.
内部労働市場は,新卒一括採用後の転職が少ない日本の大企業で重視されていたが,一般の労働市場では近年外部労働市場の役割が高まっている.一方,医師の内部労働市場は,必ずしも終身雇用を前提にされておらず,設立主体が異なる医療機関の間の転職を続けるため雇用期間が累積されないなど,日本の大企業の内部労働市場と比較すると長期雇用による医師側のメリットはそもそも少ない.そのため,卒後すぐに各診療科の実態を十分把握していないうちに医局の選択を決定することは,不完全情報下の意思決定となってしまう.また,勤務医として内部労働市場の中で働くことは,当然ながら外部労働市場で働くよりも労働時間に対する裁量が少ないため,医師としての技能を高めることができた段階では,研究・教育など大学病院に特化した業務を志向するのでなければ外部労働市場に参加することも合理的な判断と言える.従って,個々の医師のキャリア形成にとっては,内部労働市場に入るとしても,医学部卒業後に臨床研修という猶予期間ができたことと,外部労働市場が活発化することは望ましい場合も多い.
医師の労働市場は,大学病院を中心とした医局組織の中で個々の医師が評価され,診療・研究・教育の業務の配分や関連病院への配置転換や昇進をしながら医師一人一人のキャリアを蓄積させていく内部労働市場と,個々の医師が独立して自分のキャリアを考え,収入,やりがいや個人的な状況を考えて医療機関を自由に選択し,医療機関側も医師の能力を見て採用や賃金を決めていく外部労働市場の両者が混在している.
内部労働市場は,新卒一括採用後の転職が少ない日本の大企業で重視されていたが,一般の労働市場では近年外部労働市場の役割が高まっている.一方,医師の内部労働市場は,必ずしも終身雇用を前提にされておらず,設立主体が異なる医療機関の間の転職を続けるため雇用期間が累積されないなど,日本の大企業の内部労働市場と比較すると長期雇用による医師側のメリットはそもそも少ない.そのため,卒後すぐに各診療科の実態を十分把握していないうちに医局の選択を決定することは,不完全情報下の意思決定となってしまう.また,勤務医として内部労働市場の中で働くことは,当然ながら外部労働市場で働くよりも労働時間に対する裁量が少ないため,医師としての技能を高めることができた段階では,研究・教育など大学病院に特化した業務を志向するのでなければ外部労働市場に参加することも合理的な判断と言える.従って,個々の医師のキャリア形成にとっては,内部労働市場に入るとしても,医学部卒業後に臨床研修という猶予期間ができたことと,外部労働市場が活発化することは望ましい場合も多い.
参考文献
1)中田喜文:医療専門職の労働条件, 職場環境, そして働き方と医療サービス:日米比較の視点を交えて.社会保障研究3:505-520,2019
掲載誌情報