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特集 社会保障制度の未来から読む病院経営 病院の視点から
これからの医療提供体制の変革とプライマリ・ケアへの期待
著者: 橋本昌仁1 河北博文1
所属機関: 1社会医療法人 河北医療財団
ページ範囲:P.48 - P.49
文献購入ページに移動わが国の社会保障制度は,国民自らが高齢者や病気の治療,療養による医療・福祉が必要な場合に支え合うとの考えの下,受益(給付)と負担の対応関係が本来明確な社会保険方式を採っている.しかしながら,高齢者医療・介護給付費の約50%を公費で賄うなど,公費負担に相当程度依存しているのが現状である.また,医療費の基本的な自己負担割合は30%であるが,社会保障費財源における自己負担割合は15%程度で推移しており,近年,公費の比重の大きい高齢者医療・介護給付費の増加に伴い,高額療養費制度の利用,公費負担への依存度が著しく高まっている.
わが国の社会保障給付費は2021年度で約120兆円であるが,2040年度は約190兆円という大きな数字になることが見込まれると,「今後の社会保障改革について—2040年を見据えて—(第28回社会保障審議会)」で取り上げられている.この給付費については,財政と税政のバランスが均衡する仕組みとすることが必要であり,そのためには,医療費総額ではなく対GDP比で考えることも重要である.社会保障費のうち医療費は,2018年度は対GDP比約7%であるが,2040年度には約8.5%と見込まれており,つまり,現状のバランスであれば,20年間で1ポイントくらい緩やかに膨らむという規模感がコントロールできれば,十分制御できるとも言え,この水準を実質的な高齢者増加に相当する伸びにいかに収めるかが重要である.これまで「社会保障と税の一体改革」では,消費税率を上げて負担面から取り組んできたが,当面は給付の仕組みとして,医療介護提供体制の改革が必要となっている.
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