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特集 社会保障制度の未来から読む病院経営 病院の視点から
社会保障制度改革とこれからの病院に求められる経営方針
著者: 小松本悟12
所属機関: 1足利赤十字病院 2藤田医科大学
ページ範囲:P.52 - P.54
文献購入ページに移動 わが国の社会保障制度は,給付(受益)と負担の対応関係が本来明確な社会保険方式を採りながら,新型コロナウイルス感染拡大(コロナ禍)の中,団塊の世代が後期高齢者となり,介護給付費と医療費の増加に伴い,公費負担への依存度が著しく増加してきた.本来,税財源により賄われるべき公費の財源について特別公債を通じて負担が先送りされてきた.その結果,給付と負担との対応関係が失われ,負担増を伴わないまま給付が先行する形で経過してきたのが実情である.このような財政悪化が,日本の社会保障制度の存続に大きく伸し掛かり,病院経営の原資となる医療保険制度改革が最大の焦点となった.
医療保険の財政を健全化させるため,医療保険制度改革の議論の中で,社会保障関係費について実質的な増加分を高齢化による増加分に相当する伸張内に収める努力がなされ始めた(図1).社会保障費の増加に対する年金受給開始年齢の引き上げ・支払額の減少などが挙げられている.また,2022年10月からは後期高齢者である75歳以上の窓口負担割合を所得水準を基準に決めることになった.さらに,所得が少なくとも資産を多く持っている高齢者も少なくないことより資産を勘案した応能負担も適用していくことが議論されている.しかし,所得,資産の双方を考慮して,支払い能力のある後期高齢者に医療費の窓口負担を求めていけば社会保険を受ける平等性が崩れ,大半を占めるであろう追加負担の難しい患者の必要な医療を受ける機会が失われることにもなる.結果として,病院受診患者の減少を来たすこととなる.さらに,地域包括ケアシステムの中心に位置している在宅での患者へのシームレスな診療連携が失われ,地域医療構想の仕組みが崩れかねない.
医療保険の財政を健全化させるため,医療保険制度改革の議論の中で,社会保障関係費について実質的な増加分を高齢化による増加分に相当する伸張内に収める努力がなされ始めた(図1).社会保障費の増加に対する年金受給開始年齢の引き上げ・支払額の減少などが挙げられている.また,2022年10月からは後期高齢者である75歳以上の窓口負担割合を所得水準を基準に決めることになった.さらに,所得が少なくとも資産を多く持っている高齢者も少なくないことより資産を勘案した応能負担も適用していくことが議論されている.しかし,所得,資産の双方を考慮して,支払い能力のある後期高齢者に医療費の窓口負担を求めていけば社会保険を受ける平等性が崩れ,大半を占めるであろう追加負担の難しい患者の必要な医療を受ける機会が失われることにもなる.結果として,病院受診患者の減少を来たすこととなる.さらに,地域包括ケアシステムの中心に位置している在宅での患者へのシームレスな診療連携が失われ,地域医療構想の仕組みが崩れかねない.
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