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雑誌目次

雑誌文献

病院82巻12号

2023年12月発行

雑誌目次

特集 人を活かす病院経営—地域で病院の存在意義を発揮するために 総論

ウェルビーイング経営(幸福経営)とは何か!?

著者: 前野隆司

ページ範囲:P.1036 - P.1039

■はじめに
 ウェルビーイング経営ないしは幸福経営という言葉を頻繁に耳にするようになった.ウェルビーイングとは,健康,幸せ,体と心の良い状態という意味であるから,ウェルビーイング経営とは,従業員の健康と幸福を考慮した経営ということであると考えられる.では,どのようにすればウェルビーイング経営・幸福経営を実現できるのであろうか.本稿ではそのことについて考えてみたい.

病院組織運営へのキャラクター・ストレングスの活用—ポジティブ心理学から

著者: 島井哲志 ,   久保信代

ページ範囲:P.1040 - P.1046

 ここでは,はじめにポジティブ心理学の概略を紹介し,次に,その後の発展とさまざまな領域への浸透を紹介する.そして,そのトピックの中でも,組織の人的資源管理に最も大きく関連すると思われる,キャラクター・ストレングス(character strengths)の研究について解説し,最後に,その枠組みが,今後の病院組織運営において重要となる,医療福祉におけるストレングスに基づく実践につながるものであることを提案する.

人を活かす組織文化を育てる

働き続けたいと思える心理的安全性のある組織づくり—看護・介護部門

著者: 富永真己

ページ範囲:P.1047 - P.1050

■はじめに:医療・福祉の職場において心理的安全性を育む難しさ
 職場では問題は起こるものである.しかし,医療・福祉の職場では,仕事上のミスなどの問題が,職場風土により解決を妨げられた結果,患者や利用者の安全,治療やケアの質にまで影響を及ぼすことがある.米国の退役軍人病院の従業員を対象とした調査結果では,仕事上のミス(error)の報告を妨げる最たる理由は,仕返しへの恐れであった1)
 このような職場では,仕事上のミスなどの問題を,嘲笑や罰を恐れずにメンバーに話すことができると感じる雰囲気である「心理的安全性」を育むことが望まれよう2).前述の調査結果では,心理的安全性のない病院は心理的安全性のある病院に比べ,従業員は仕事上のミスを報告したがらないことが明らかにされている1).それゆえ,職場の管理者は心理的安全性を職場や組織の風土として育み,メンバーが仕事上の失敗から学び,その力を発揮できるよう努める必要がある.
 しかし,はたして医療・福祉の職場の多くの中間管理職がそれを実践できるだろうか.主任やリーダーといった中間管理職は,必ずしも望んで管理職になった者ばかりではない.管理職に昇進したものの,管理職教育を受講する機会もなく日々悩む中で,管理業務をしながら現場の実務を担う者も少なくない.また,地位の高い管理職ほど心理的安全性が高いと報告されるが1),中間管理職が上司と部下の板挟みの心理的安全性の乏しい環境で働いていることもある.このような状況では,中間管理職に心理的安全性を育む努力を求めても,現実的には難しいであろう.
 そこで筆者は中間管理職に導かれるまでもなく,医療・福祉のケア従事者が心理的安全性について学ぶ職場内研修を開発し,無作為化比較試験により効果を検証した.本稿ではその紹介とともに,効果検証の結果を踏まえ,看護・介護のケア従事者が働き続けたいと思える心理的安全性のある組織づくりについて考えてみたい.

コーチングを活用した病院組織づくり

著者: 佐藤文彦

ページ範囲:P.1051 - P.1055

■はじめに
 来春から始まる「医師の働き方改革」の準備がいよいよ佳境に入ってきた.この働き方改革を進めていこうとすると,「自分たちの病院の存在意義を,これからも地域の中でしっかりと発揮し続けていくためにはどのようなビジョンを掲げていけばよいか」ということについても,並行して考えることが必要なことが分かってくる.ところが,こうした明確なビジョンを掲げるためには,実際にはどんなプロセスで考えていけばよいのかというのは病院経営者にとっては難しい課題でもある.そして結局,どこから手をつけていけばよいのかがよく分からずに,アクションを起こせないまま,ひたひたと来春が近づいて来てしまっているといった病院経営者も少なからずおられるかもしれない.そういった時に,まず取り組んでみるべきアプローチ方法の1つがコーチングである.

Safety-Ⅱ実践のための病院組織のマネジメント

著者: 小松原明哲

ページ範囲:P.1056 - P.1060

■はじめに
 近年,ヒューマンファクターズ(人間工学)の国際的権威であるHollnagelが提案したSafety-Ⅰ,Safety-Ⅱという二つの安全へのアプローチが注目されてきている.
 Safety-Ⅰ,Safety-Ⅱは表1のように説明されている1).スタンスについていえば,Safety-Ⅰはトラブルや不都合なことが起こらないことを目指すが,Safety-Ⅱでは,より望ましい結果(アウトカム)が得られることを目指す.患者説明であれば,重要事項の伝達をし忘れないことがSafety-Ⅰの目標であるが,より良い納得を得るということがSafety-Ⅱの目標ということになる.
 アプローチの仕方も異なり,前者は標準化を進めることで安全を求め,後者は,状況が変化する中で人の柔軟な(レジリエント:resilientな)行動により,安全注1を求める.
 試験を考えてみれば分かりやすい.Safety-Ⅰであれば,出題者側が出題範囲を限定し,出題する問題は標準化し,正解を徹底的に教え込んでおけば,全員合格が達成できる.不合格者をゼロにすることが目標である.自動車運転免許試験はこのパターンかもしれない.
 一方,入学試験はそうはいかない.応用問題が出題される.そして試験のまさにその場にならなければ問題内容は分からない.限られた合格枠に入るべく,自分の能力を総動員して解決を図るしかない.能力が十分にあれば,難度の高い応用問題も楽勝で解けるが,そうでなければ不合格である.つまり,安全は能力ということである.これがSafety-Ⅱのアプローチであり,その実現を図る対応のことをレジリエンスといっている.
 医療ではどうだろうか.Safety-Ⅰ,Safety-Ⅱの双方が必要になるのではないだろうか.
 医療機器の使用方法,会計手続きなどは,Safety-Ⅰである.正解があり,それ以外のことはヒューマンエラー(ミス)である.一方で,患者対応はどうだろう.患者の標準化はできないし,状態も時々刻々変化する.患者の状況,状態に適した対応をスタッフが講じなくては,よりよい患者満足は得られない.つまり,この場合,Safety-Ⅱが基本となる.
 本稿では,Safety-Ⅰ,Safety-Ⅱの特徴についてさらに説明する.特にSafety-Ⅱについては,管理者はどのような点に注意する必要があるのか,そのマネジメントのポイントを説明する.

対策・支援

病院におけるハラスメント対策

著者: 加古洋輔 ,   長谷川葵

ページ範囲:P.1062 - P.1066

■はじめに
 職場環境への配慮は,スタッフを雇用する医療機関にとって法的義務とされている(労働契約法5条)が,その点を措くとしても,人を活かす病院経営を行うに当たって,医師・看護師等のスタッフが働きやすい良好な職場環境を維持することが必要であることは言うまでもない.
 最近はハラスメントに対する社会的な問題意識は極めて高く,人材が資本である医療機関において,ハラスメントへの理解なくして経営は成り立たないと言っても過言ではない.
 本稿では,現時点での法規制を前提に,ハラスメントとは何か,医療機関にどのような体制整備が求められるかを解説する.

病院における人事対策

著者: 馬渡美智

ページ範囲:P.1067 - P.1072

■はじめに
 労働集約型産業である医療機関において,「人」と「組織」に関する悩みは尽きない.特にここ数年は医療機関を取り巻く環境の変化が激しく,人手不足,価値観の多様化や最低賃金の上昇など,2024年に向けた医師の働き方改革への対応など,従来の延長線では対応しきれない課題が次々と生まれ,抜本的な組織の見直しに迫られている.
 このように外部環境が大きく変わる状況においては,事業戦略の見直しはもとより,それに合わせて組織やマネジメント体制の見直しを行わなければ,職員の離職やモチベーションの低下が起こり,サービスの質の低下,ひいては業績の悪化につながることも懸念される.
 一方で,こうした厳しい環境の変化にも柔軟に対応し,収益や生産性の向上を実現している医療機関も存在する.そうした医療機関に共通するのは,法人理念や目指すべき方向性が組織の末端にまで浸透しており,職員の役割やすべきことが明確になっていて,実行と検証を徹底して行っているということだ.病院の場合,機能が同じであれば,戦略に大きな違いはない.つまり,経営力を高める鍵は,組織としての「実行力」の高さであり,人事制度はそこに寄与するものでなければならない.そこで本稿では,実行力を高め,戦略を実現するための人事制度の要諦について説明する.人事制度の全体像については,図1を参照されたい.

「患者満足度・職員やりがい度調査活用支援」を用いた病院経営—公益財団法人日本医療機能評価機構の行う「病院組織への支援」

著者: 藤波景子 ,   長谷川友紀

ページ範囲:P.1073 - P.1076

■はじめに
 公益財団法人日本医療機能評価機構(以下,評価機構)では,2015年に「医療機能評価を通じて,患者が安心して医療を享受でき,職員が働きやすく,地域に信頼される病院づくりに貢献する」という「次世代医療機能評価のアジェンダ」を策定し,「社会情勢に即した病院機能評価の改善」「医療の質と安全に関わる人材の教育研修」「病院組織への支援」を三本の柱と定めた.これらが並行して進められることにより,認定を核とした新たな価値を創造することを目指すものである.2018年より開始された「患者満足度・職員やりがい度調査活用支援」(以下,本プログラム)は病院組織への支援の1つであり,評価機構等で医療の質と安全にかかわる教育研修を受けたのちに所属病院での活動を支援することを想定している1)
 本プログラムでは,医療の質の重要な構成要素である患者満足度(以下,CS),および病院の内部顧客である職員のやりがい度(満足度:以下,ES)を測定し,その結果を医療の質向上につなげる取り組みを支援している.より質の高い医療を提供するには,医療を提供する側の職員がやりがいを持って働ける環境が必要である.職員のやりがい度が高まればモチベーションも上がり,生産性が高まり医療の質の向上につながる.よい医療が提供されれば患者の満足度も高まり,現場スタッフへの感謝や継続受診,新たな患者の獲得につながり,さらに職員のやりがい度を高めるだけでなく,増えた収入や利益をサービスの質を高めるために還元することが可能となる.評価機構では,CSとES双方から,調査・分析・改善を進めることが病院組織の質改善活動において重要であると考え,一つのプログラムで両方の調査が可能としている.
 本プログラムでは,調査の手法を標準化し,併せて病院同士の比較が可能となるようレファレンスとなるベンチマークを提供している.多くの病院がプログラムに参加することで,レファレンスデータベースの価値を高めることができる.評価機構はプラットフォームを提供することで病院と共同で医療サービス改善に必要なインフラの構築を行っている.参加病院数は年々増加し,2023年7月時点で参加病院数は365病院である(図1)2)
 また,評価機構は病院機能評価の中で「患者・家族の意見を活用し,医療サービスの質向上に向けた活動に取り組んでいる」「職員にとって魅力ある職場となるよう努めている」ことを求めており,これらの評価項目に対応する取り組みとしても活用されている.

事例

人を活かす民間中小病院の組織運営の実際

著者: 織田良正

ページ範囲:P.1077 - P.1079

■はじめに
 社会医療法人祐愛会の開設理念は「悩める者への光明を」であり,この開設理念に沿って中長期ビジョンを「Aging in Place(住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続ける)の実現」としている.その実現のために「急性期医療から在宅まで,保健(予防)・医療・福祉・介護の各分野が,一体的に提供できる総合ヘルスケアシステムの構築」を進めているが,「民間病院であっても社会の公器である」という法人の方針を理解し,共に働く多くの仲間,それぞれの良さがどうすれば最大限に発揮されるのかを各部署,そして組織全体で常に考えている.
 これまでも「ヒトが集まる魅力ある職場づくり」に努めてきたが,本稿では,当院で行っている人を活かすための組織運営の実際を紹介したい.

上尾中央医科グループにおける事務職育成のための4つの戦略的アプローチ

著者: 清水祐二

ページ範囲:P.1080 - P.1087

■はじめに
 近年,生産年齢人口の減少やポストコロナ社会の影響により,企業の経営環境は複雑化し,経営の難易度が高まる一方となっている.しかし,この中で,経営管理業務において特に重要な役割を果たす事務部門では,今後の課題解決に向けた人財マネジメントが急務となっている.上尾中央医科グループ(以下,当グループ)では,これらの課題解決のための育成,定着,やりがいなどの向上の視点で,当グループのインハウス開発によるデジタル・トランスフォーメーション(以下,DX)を活用した4つのアプローチについて紹介する.

公立病院改革から生まれた「人を活かす」組織開発

著者: 島田和幸

ページ範囲:P.1088 - P.1091

■経営健全化
 当院は,10年前は累積欠損を抱え,公立病院改革の対象として,2013年に経営形態を市立病院から地方独立行政法人に変更した.独法化前後で,本院のさまざまな課題とその改善策について,先進病院や経営コンサルタントから多くを学び,それらを職員が一丸となって実践した.結果として,独法化初年度から黒字(医業[=営業]収支)を達成し,それは現在まで10年間連続している1).独法化4年目には病院の新築移転も果たした.病床数は300床(一般7対1:246床,地域包括ケア:39床,HCUおよびSCU:15床),医師数77人,職員数708人の中規模病院である.

対談

良いケアと教育の両輪で人が集まる組織へ

著者: 北島明佳 ,   松原由美

ページ範囲:P.1021 - P.1027

離職率6割の危機を乗り越え,教育体制を整えて人が集まる職場を実現.
考え方を180度転換して身体拘束ゼロを達成.
良いケアと教育の両輪で,職員の雇用と定着を図る元気会横浜病院理事長・院長の北島明佳氏に聞く.

研究

特定看護師および診療看護師によるタスクシフトの現状と医師の勤務時間に及ぼす効果

著者: 時任美穂 ,   内野滋彦 ,   菅野一枝 ,   讃井將満

ページ範囲:P.1092 - P.1097

■要旨
【目的】外科系病棟における特定看護師および診療看護師へのタスクシフトについて,業務内容および医師の勤務時間の変化を明らかにする.
【方法】呼吸器外科,消化器外科,心臓血管外科病棟において,医師のみが診療を行うフェーズ1,診療看護師が特定行為のみを行うフェーズ2,診療看護師が診療チームに所属し,特定行為とそれ以外の診療の補助も行うフェーズ3に分けて,タスクシフトされた業務内容および医師の勤務時間を調査し比較した.
【結果】タスクシフトされた特定行為の割合は,フェーズ2および3でそれぞれ12%,43%(p<0.001)であった.フェーズ3におけるタスクシフトされた業務内容は,特定行為に比して特定行為以外が多かった.医師の勤務時間は,フェーズ2と3で減少し,特にフェーズ3で顕著に減少した.
【結論】特定行為の施行は医師の働き方改革の一助になるが,診療看護師が診療チームに所属するとその効果はさらに高まる可能性がある.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・107

医療法人尚徳会ヨナハ丘の上病院

著者: 小林健一

ページ範囲:P.1028 - P.1033

■地域医療の担い手として
 2021年に竣工したヨナハ丘の上病院が位置する桑名市は,鋳物に代表される地場産業で知られており,有名な遊園地「ナガシマスパーランド」など観光都市としての顔も持つが,歴史をたどると江戸時代からの宿場町・城下町・港町として栄えてきた.三重県ではあるが名古屋市から特急電車で30分弱の距離であり,ベッドタウンとして宅地開発が進んでいる人口約13万人の都市である.
 ヨナハ丘の上病院の歴史は,沖縄県宮古島出身の与那覇尚氏が1975年にヨナハ産婦人科病院(22床,桑名市和泉)を開設したことに始まる.ピーク時には年間800人,桑名市内の新生児の6割をヨナハ産婦人科病院で取り上げてきた実績があり,桑名市民にとってお産といえばヨナハというイメージが強かったという.

医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・32

患者への説明義務

著者: 辻野沙織

ページ範囲:P.1099 - P.1103

■1 医師の説明義務★1
 医師は,診療契約★2に基づき説明義務を負うとされています(最判平成13年11月27日★3.以下,最判).説明義務を明確に定めた法律上の根拠はないものの,医療法1条の4第2項では,「医師,歯科医師,薬剤師,看護師その他の医療の担い手は,医療を提供するに当たり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を得るように努めなければならない」旨努力義務として規定されています.
 そもそも,手術など患者の身体への侵襲を伴う診療行為は,刑法上の傷害罪や民法上の不法行為責任が成立し得る行為です.これが医療行為として正当化されるためには,診療行為を受けるか否かを自ら決定する権利(自己決定権)に基づき,患者が,医師から十分な説明を受けた上で診療行為に同意することが必要です.このように,医師からの「十分な説明」に基づき患者の「同意」を得ることをインフォームド・コンセント(informed consent)といいます.

ケースレポート 地域医療構想と病院・56

高齢社会の医療介護連携を支える医療介護複合体の役割—済生会唐津医療福祉センター

著者: 松田晋哉

ページ範囲:P.1104 - P.1108

■はじめに
 これまで折に触れて述べてきたように,高齢社会においては医療介護生活の複合ニーズを持った患者が増加する1).対象者のニーズが複合化している以上,サービス提供者側も複合的なサービス提供体制を整備する必要がある.もちろん,その対応方法は同一法人で複合体を形成する場合もあれば,異なる事業体が地域医療連携推進法人やアライアンスを形成して対応する場合もある.どのようなシステムを選択するかは,それぞれの地域の状況による.ただし,これは全くの私見であるが,医療介護資源および人的資源に制約のある地方では地域医療連携推進法人の形成が,そして都市部では市場主義的なM&Aによって,上記のような連携体制の構築が進みつつあるように見える.
 今回紹介する済生会唐津病院は,佐賀県唐津市において急性期病院を中核とした医療介護複合体を形成し(済生会唐津医療福祉センター),高いパフォーマンスを上げている施設である.筆者は今から23年前に医療ニーズの高い患者の在宅ケアを可能にする条件を研究するために,全国の済生会組織の協力を得て,症例を収集し,その事例分析を行った経験がある2).この研究を行った当時から,済生会唐津病院は済生会三条病院,済生会今治病院,済生会山口総合病院などと並んで,医療ニーズの高い在宅患者のケアを支える複合体組織として顕著な成績を上げていた.そして,同病院は園田孝志院長のリーダーシップの下,さらに複合体としての機能を向上させている.本稿では,同病院の連携に関する取り組みについて焦点を当て報告紹介したい.

地域と医療の未来を創る中小病院のあり方・9【最終回】

コミュニティホスピタルのつくりかた—医療法人社団同善会同善病院

著者: 草野康弘

ページ範囲:P.1109 - P.1111

■同善会の歩みとコミュニティホスピタル
 2022年コミュニティホスピタルに転換した同善病院は,高度経済成長期に日雇いの労働者が多く集まった簡易宿泊所が並ぶ,通称ドヤ街と呼ばれる旧山谷地区がある東京都台東区三ノ輪に位置する.現在は45床の回復期リハビリテーション病棟を持つ在宅医療支援病院(近隣には同善会クリニックを併設)であるが,歴史を遡ると超高齢化社会を迎えた現代にコミュニティホスピタルに転換したことは,歴史の必然とも感じられる.
 同善会は1889(明治22)年に同善尋常小学校が設立されたことに始まる.その後,関東大震災の被災者救護施設を運営,第二次世界大戦時には戦災者収容救護を実施,高度経済成長期を迎える前の1948(昭和23)年には保育園事業を開始.1956年に同善病院(療養病床)が,2007年には保育園の跡地に同善会クリニックが誕生している.2009年には回復期リハビリテーション病棟を導入した.その後,さまざまな変遷を経て2022年4月には30代前半の若手総合診療医3人が着任し,訪問診療事業を開始.総合診療を中心としたコミュニティホスピタルに生まれ変わった.

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目次

ページ範囲:P.1034 - P.1035

Book Review がん化学療法レジメン管理マニュアル 第4版

著者: 池田龍二

ページ範囲:P.1098 - P.1098

Back Number

ページ範囲:P.1113 - P.1113

次号予告

ページ範囲:P.1116 - P.1116

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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